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REQUIEM館

プロローグ:再び物語は紡がれる

物語とは終わるとともに新たな物語が始まる。
さぁ、再び彼の者達の物語の幕をあけようではないか。


「皆の為なら俺の命一つ程度安いものだ」
「てめーら全員俺がぶちのめす!」
「誰か一人でも欠けることは私が許さない」
「私は貴方と共に行きましょう」
「遅れたら許さないからね。私の背中を守れるのはあんただけなんだからね」
「ねぇ返してよ、私の大切な人!!」


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第44話:白氷の電磁砲

フリューベルが倒れてもセツとナナリの戦いは止まらない。
擦れ合う金属音と共にお互いの汗が飛び散る。
「絶纏:絶廻纏滅(ぜっかいてんめつ)」
「白氷爆砕」
ナナリの振り出し太刀は弧を描きながら、セツの槍は一直線に向かって振り出された。
双方の刃先が触れお互いの位置が入れ替わりつつも次の一撃へと動く。
「前の戦いでも俺の得物を破壊してくれたが今回はないと思った方がいいぞ」
セツは余裕の表情でナナリの太刀を弾く。
セツは太刀を弾いた槍をそのまま振りおろす。重力による加速のおまけ付きで振り下ろされた槍は残像を残して一瞬でナナリの後頭部に向かっていた。
ナナリは太刀を真横に掲げて受け止める。
「っぐ」
重いなんてレベルではないナナリでこそ受け止めれているがとーるがこれを受け止めたら間違いなく腕をへし折られているだろう。
「一つヒントを出そう。何故ナナリの動きが読まれるか、それはお前が冷静すぎるからだ」
(冷静すぎる?)
セツの言うことにナナリは理解ができなかった。戦場において冷静さは大事だ。次の動き方一つで勝敗が決まるなどということはよくある話だ。誤った行動をおこして死んでいった者をナナリは多くみてきた。ナナリが今まで紙一重で生き残ってきた戦いも最後は冷静な判断があったからこそ掴み取れた。
だがセツはそれが動きを読まれる原因といってきた。一体何故?
「確かに守ることにおいてナナリの冷静な判断力は俺たちの中でもトップクラスだろう。だがそれは守りにおいてだ」
セツの槍を突き動かす速度が1段階あがった。ナナリは体を左右に振り突きを紙一重避ける。
足下を狙った払いは足下に氷柱を作り受け止めつつカウンターとして踏み込みながら太刀を振り抜く。
がセツは予想したかのように太刀が振り出される前に回避していた。
セツはふふっと鼻で笑っていた。
「はぁぁ、ダメダメだな」
セツは呆れた声で溜息をついた。ナナリのコメカミがピクッっと反応した。どうやらあまりの言い草にカチンときたようだ。
「仕方ないこっちからギアをあげいくか」
セツは槍を振りまわすと右、左と斜め上から振り下ろした。
槍からカマイタチが発生しナナリへと襲いかかる。だがその程度ナナリにとって弾くことも避けることもできた。
だが次にとったセツの行動に驚きを覚えた。
カマイタチよりも前にセツが現れたのだ。このままだとセツはカマイタチをまともにうける。
セツの無謀とも取れる行動にナナリは驚かされ回避のタイミングを失ってしまっていた。
セツはそのままナナリに向かって槍を振り下ろした。
・・・様に見せナナリよりも少し手前の床に突き刺しナナリの頭上を越えていった。
(しまった!!)
この瞬間ナナリはセツの意図に気づいた。
セツはまずカマイタチの後の行動でナナリが怯むことを前提に動いていたのだ。そして次にナナリを攻撃するというブラフで更に動揺を誘いカマイタチと自分でナナリを挟み込もうとしたのだ。
まさかの2重の意外な行動にナナリはまんまと引っ掛かったのだ。
「流絶:風縛」
セツの槍が大きく唸りをあげるとナナリの太刀を絡み取りながら宙に吹き飛ばした。
カマイタチがナナリの目の前まで迫る中での得物を失うことは致命的であった。
「氷陣壁」
ナナリは左手に氷の壁を作り出しカマイタチを受け止めた。
だがこの行動はナナリにとって最悪の選択であった。
「風絶:烈風十破」
セツの槍がナナリに届いた瞬間爆発したかのような衝撃がナナリを襲った。
セツの突きは風の塊を押し出していた。そしてその風をもう一度突くことで風の塊を更に加速させる。
これを連続で9回行ったのだ。加速に加速を重ねた塊は爆発的な力を持ちナナリに激突する瞬間に10度目の突きで力を前方にのみ爆散させたのだ。
ナナリは体をくの字に折りながら地面を数回バウンドし壁に叩きつけられた。
完全に決まった。セツは槍を構え止めとばかりに飛び出した。
「終わりだ、安らかに眠れ」
セツは仰向けに倒れたナナリに向かって容赦なく槍を振り下ろした。
あたればナナリは死にはしなくても大けがをしてこれ以上戦えない体になるだろう。だが槍はナナリに届くことはなかった。
「邪魔をするな、やよい」
セツの槍はやよいのレイピアによって受け止められていた。だが元来レイピアは唾競合いに向いていない。少しずつ押し込まれていた。
「セツ、あんた本気なの?ここでナナリを斬って何があるのよ」
「この後に待つ戦いに比べたら俺に負けるなら行かない方が身のためだ」
ナナリは更に押しこむ力をあげた。
「うぅ」
やよいは押し込まれ苦痛を漏らしていた。
セツは槍を押しこむ力を緩めると小さくステップを踏みやよいの懐に飛び込んだ。
「しまっ」
やよいは膝に力を入れていたためこの動きについていけなかった。
セツの容赦ない蹴りが叩きこまれ。やよいの体が後ろに吹き飛ぶ。
ざざぁぁと音を立てやよいは前屈みになりながら着地した。
やよいはなんとか後ろに跳ぶことでダメージを最小限に抑えた。だがそれでも膝が地についてしまった。
「まだやるのか?」
セツの冷たい声にやよいは背筋が凍った。だが
「当り前よ、あんたなんかあたしで十分よ」
やよいは震える体を強引に抑え立ち上がった。
「やめろ、やよい逃げるんだ」
ナナリは未だ立ち上がれず叫ぶしかできなかった。
やよいは一度ナナリを見ると少しだけほほ笑んだ。だがそれは覚悟を決めた事が窺えた。
「ならばやよい、先にお前から消えてもらうか」
セツは腰から弾丸を取り出すとやよいの頭上に向かって投げる。
やよいはセツの狙いを正確に読み取り床を隆起させて分厚い壁を作り出した。
「降り注げバレットレイン」
弾丸は名の如く雨のようにやよいに向かって降り注いだ。壁に直撃し粉塵をまき散らすがまだ弾丸の雨は止まらない。ナナリはその様をただ見つめることしかできなかった。
そして
粉塵がはれてくるとそこに2人が交差した後の姿が見えた。
「バレットレインを凌ぐとは驚いたぞ。だがそれでもお前は俺に勝てないんだ」
声の主はセツだった。
「うっ」
やよいはふらっとすると床に倒れ、ぴくりとも動かなくなった。
「1人目か」
セツの容赦ない言葉にナナリは頭の中が真っ白になった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
ナナリは絶叫した。そして己の無力さを呪った。セツを恨んだ。
だがこの時ナナリの中で何かが弾けた。
力が欲しい、目の前にいる敵を倒す力。大事な人を奪ったあれは敵だ。
敵は滅ぼす。
ナナリは太刀を床に突き刺し立ち上がった。だがとっくに限界を超えふらついていた。
「さてトドメだ」
セツは立ち上がったナナリに違和感を感じたが気にせず弾丸を投げた。
「殺しはしない。だがナナリの旅は終りだ。降り注げ鉛の雨」
重力の増した空間が弾丸を加速させて降り注ぐ。流絶とは全く違うセツの切り札でもある。
今のナナリに防ぐ程の力は残っていない。
はずだった。
「まじかよ」
セツは目の前の光景に絶句した。
そこにはナナリの前で弾丸が止まっていたのだ。
一体なにがあったのか分からなかった。だがセツは多くの仮定の中から答えを導き出した。
「否定したのか」
弾丸はそのまま加速する力を失い床にちらばった。
「固有結界:空間凍結」
ナナリの低い声と共に雑音が全て消えた。
「極零封結界の真の姿。物理運動を凍結することによって全ての運動を零へと返す」
ナナリの声だけが空間を支配し全てを飲み込もうとする。
セツは弾丸を宙へ投げると弾丸は時が止まったように宙で固定されていた。
「なるほど、これはまた面白いことを」
形成が逆転したのは明らかだがセツは全く動じていなかった。むしろこの状況を楽しんでいた。
セツは軽くステップを踏むと瞬時に固定された弾に向かって槍をたたきつけた。
弾丸は少しだけ進むと勢いを失い砕け散った。
どうやらセツの手から離れたものは全て問答無用でナナリの支配圏にはいるようだ。
それは解き放たれた力も例外にならない。セツは弾丸を弾くと同時に風の刃を飛ばしたつもりだったがそれも途中で霧散してしまった。
「展開」
セツの足元に陣が具現化する。
「流絶:真名の陣。本当の姿を見せろ」
セツの手にある槍が砕け再構成される。
「雪月華」
セツの槍は白く変化し神々しさがあった。
雪月華、この槍にはセツを含む3人の不変の絆が込められたことによって名づけられた槍。
雪、今はもうこの世にいない妹のエルが入団した季節は冬
月、3人の中でフェンリルに最後に入団したフリューベルは秋
華(花)、雪月華の持ち主のセツが入団した季節は春
その名を合わせることによって生み出された槍。エル亡き後、セツはフェンリルを抜ける時にフリューベルにこの槍を彼に託そうとした。だがフリューベルはこれを頑なに拒否をした。
『全てはセツお前の元から始まってるんだ。お前がそれを持っている限り俺達は再び会うことができる』
フリューベルはエルを失ったことにより一時的に力を封じ、槍をもつこともできなかった。
だがフリューベルはセツが雪月華を持っているなら次会う時には立ち上がっていると約束をした。
その約束どおりフリューベルは力を取り戻しセツとであった。この槍は3人がこの世にいたことを残す確かな存在でもありセツとフリューベルの支えでもあった。
純白の槍はどこまで綺麗であった。
「神無水月」
太刀から蒸気が発し凍結する。セツはバレットレインも飛び道具も使えないがナナリは例外であった。
だがナナリもあえて近接戦を選んだ。それだけ自信もあったが、それ以上にセツの得意とする近接戦を制さない気がすまなかった。やよいを斬ったセツを許せなかった。
「はっっ」
先に動いたのはセツだった。縮地を使った飛び込みは今まで以上に鋭くそして振りぬかれたからは強烈な重力がたたきつけられた。ナナリはそれを受け止めた。
ナナリの体が重力に圧迫され押し込まれる。
だがその数秒後ナナリはとんでもない力で押し返してきた。
「うぉぉぉぉぉ」
怒号とも聞こえる声をナナリが発していた。今までのナナリには見ることのできなかった怒りの力が彼を後押ししていた。そしてナナリはセツの槍を弾き返すと上体を捻り回し蹴りを放つ。
足の先は凍結し氷の刃ができていた。ナナリほど器用に部分単位で使う者もそうはいないだろう。
<烈蹴氷砕>
ナナリの蹴りはセツが間一髪の所で身を捻り避けられたが氷の刃が僅かにセツの右腕を掠めた。
セツは僅かにバランスを崩しながらも迎撃の態勢をとろうとした。がナナリは追撃をかけなかった。
セツは一瞬ナナリが余裕を見せて追撃をしなかったのかと考えたが瞬時にそうでないと判断した。
(なるほど空間凍結と組み合わせで最大の効果を発揮するのか)
ナナリはセツの全ての攻撃を受け止めるつもりでいるのだ。
遠距離のない相手は接近戦で勝つしかない。だがそれを全て封じられたらどうなる。
それはセツにとってチェックメイトになるということだ。
そんなことができるのかは分からない。だが目の前にいるナナリならやりかねない迫力があった。
「とんでもないのを呼び起こしてしまったのかな」
セツは笑みを浮かべながら再度飛びこんだ。
ナナリはセツの死角を突く一撃を全て受け押し返しカウンターを叩き込んでいった。
だが完璧には受け止めれてはいなかった。セツの速度と一撃の重さによって少しずつ傷がついていた。
だがセツもそれ以上に傷が広がっていた。セツの方が若干押されているのだ。
だがセツにはまだ秘策があった。
「流絶の極:閃地」
セツが踏み込んだ瞬間床が爆発した。セツはフリューベルに匹敵する速度でナナリに突っ込んだ。
止まる気はない。己の体こそが弾丸となり突撃する。閃地とは迅歩や縮地と違い移動する技術ではない。ただ突撃することに特化したいわば捨て身の技なのだ。だがそこに特化した破壊力は生身で受けることは死を意味していた。
ナナリもこれに反応はしていたが、回避する時間はなかった。
今までにない力をナナリは太刀を横に寝かして両手で完全防御の体制で受け止めた。
「ぐぎぎぎぎ」
ナナリは耐える。ひたすら耐えた。
いつ終わるかも分からないこの一撃をただひたすら受け止め耐えた。
「負けられない」
ナナリの足が一歩前に踏み込んだ。
ナナリの頭に浮かんだのはやよいの姿。その瞬間ナナリの結界が収縮した。
ナナリの体に吸い込まれるように結界はきえていった。そしてナナリの背に獅子の姿が現れた。
「唸れ神無水月、氷解爆砲」
ナナリの太刀から空間全体にあった水分を取り込み解き放った。
まるで絶対零度の電磁砲(レールガン)であった。
セツとナナリの力のぶつかり合いは互角だった。
(負けれない)
ナナリは右手だけで太刀を支えるとこともあろうか打ち合っているにもかかわらず左手を床につけた。
セツはナナリの行動にぎょっとした。
(おいおいマジかよ)
セツはナナリの行動が何を意味しているのか分かった。だがどうすることもできない。
「ゲイ」
ナナリはそのまま前宙するように回転すると太刀を蹴り出した。
「ボルグ」
蹴る瞬間に太刀の刀身をセツに向けていた。一瞬でも間違えれば吹き飛ぶのはナナリであっただろう。
だが正確に素早く動いた結果その一撃は見事に決まった。
右手から飛び出し続ける水流の中心を太刀が真っ直ぐ突き抜けた。
どごん!!
部屋中が振動しナナリは衝撃を受け大きく後退した。
着地し結果を確認するように視線を向けるとそこにはセツが仰向けになって倒れていた。
「トドメをしないのか」
セツは意識があるようで真上を向いて呟いた。
「セツ、私の体質を忘れたとはいわさないですよ。あの時全く音がしなかったのですから。とはいえ気がついたのはつい先ほどですけどね」
ナナリの言葉にセツは「たはは」と笑った。
「なるほど、気づいていたわけだ。やよいもういいぜ」
セツの言葉に部屋の端で倒れていたやよいの体がぴくりと動く。
「まったく、失礼しちゃうわ。女の子に死んだフリをさせるなんて最低よ」
やよいは起き上がると服をはたいてセツを睨んだ。
「悪い悪い、責任はナナリが取ってくれるさ」
「おいおい」
セツの無責任な言葉にナナリはあきれた。
「いや、折角力を引き出してやったんだから感謝してくれよ」
ここまで無責任だと返って清清しいといえる。
ナナリは苦笑いをした。
それから少しして近づいてくるやよいを思いきり抱きしめた。
「ちょっと、ナナリ一体どうしたの」
やよいはぼんっという音と共に顔を真っ赤にしてうろたえた。
だがやよいはナナリの体が震えている事に気づくと優しく抱き返した。
「大丈夫よ、私は何処にも行かない。ナナリを置いて行く訳がないよ」
やよいの優しい言葉にナナリは無言で頷いた。
それを見てやよいは少し安心したようだった。
「そういやフリュはどうなったんだ」
セツは自力で立ち上がりながら振り向いた。
視線の先にはいつからいたのかリオとエリスがいた。リオは膝枕をしているのが見えた。だがフリューベルは全く動こうとしない。エリスととーるもただ視線を床に落して何もいわない。
「まさか」
セツは真っ青な顔をした。
その顔を見たナナリとやよいも表情を暗くした。
セツは重い体をひきずりながらもフリューベルの前に辿り着く。
リオがセツに視線をむけると口に指をあてた。
「すーーーーすーーーーー」
かすかな寝息が聞こえた。
「こいつ寝てやがんのか」
セツは呆然としていた。
「ベルは私達以上に激戦を生き抜いてきたんだ。負担も大きかったんだろう」
やよいに肩をかしてもらいながら近づいてくるナナリが言いながら見下ろした。
体中傷だらけになったフリューベルはあまりにも痛々しい姿だった。
「ナナリさんこれからどうする」
とーるも流石に起こす気はないらしく床に座り込んだ。
「そうだなー、もう突入してから30時間はたっている、流石に疲れも出てるだろうし交代で休もう」
ナナリの言葉に全員が一度うなずいた。
「んじゃ俺が見張りしとくか」
セツはフリューベルの握っている槍と自分の槍を入れ替えて立ち上がった。
「セツさん、貴方も相当無理をされてるのですからここは私が」
エリスがナナリに詰め寄ろうとするするよりもセツが手を伸ばした。
「エリスはリオと一緒に他の奴らの治療を頼む。流石に俺は苦手なんでな」
セツは無邪気そうな顔を一度だけ向けた。
エリスはセツの顔をみて頷いた。
これから7時間後、歴史史上最大の戦争が始まる。
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外伝:出会いそして幕開け

一人の青年がアビッサルを抜けてとある村を訪れたことがこれから出会う彼らの人生を変えたのかもしれない。
その人物はかつてはこの世界の最北端に位置する国の王子であった。
だが、国はクーデターを受け国王は殺害され、その一族もまた彼だけを残して皆この世を去っていた。
青年は愛用の銃と僅かな荷物だけで厳しい世界に放り出された。
だが青年の心は折れることがなかった。
青年は普通とは違い、戦う力を持っていた。まだ国があった時は青年を獅子王と呼んでいた。
青年は旅をする中で自分がこの世界を変えることができないかと考えだした。
だが常人の数倍上の強さを持っても青年一人では無理があった。
しかし一人の限界を感じていた時、青年はある人物と出会う。
青年の物語はここから始まったのかもしれない。

青年の名はナナリ、彼は今とある辺境の村で過ごしていた。
「ナナリさん、おはようございます」
村の人たちは皆ナナリを慕っていた。
現在、ナナリのいる国は隣国との仲が悪く、よく国境線で戦闘がおきていた。
そのため、ナナリがここに訪れるまでの間この村は幾度となく戦火に巻き込まれいたのだ。
ナナリは各国を放浪する中でこの村を訪れたが、当初の彼等はあまりにも生きる気力がなくショックを受けた。そして、ナナリが訪れたその日隣国がこの村に攻め込んできた。
普段のナナリなら直ぐに村を離れるのだが、何故か見過ごすことができなかった。
ナナリはこの隣国の勢力に一人で立ち向かった。結果は彼一人の力で隣国の兵は敗走。村人たちはこの話を聞き歓喜に奮えた。
ナナリは、村人たちの強い願いもあって村にとどまることになった。
実はこの時、ナナリの活躍は国の首都にまで届いておりナナリを軍に引き込もうとしていたがこれを丁寧に断った。このやり取りがさらに村人たちの信頼を得る結果になった。そして現在にいたる。
「あぁ」
ナナリは素っ気ない返事をした。普通なら気分を害すかもしれないが村人は笑みを浮かべその場を去っていった。村人たちもナナリの性格をよく知っており、ナナリが必要以上の事を話さない寡黙な人物と認識していた。
ナナリの奮戦の結果、隣国は国境線の度重なる敗北が原因で滅んでしまった。
結局この国が隣国を合併する形で長きにわたる戦争は終わった。
また合併したため村は国境線の村でなくなり戦火に巻き込まれる恐れもなくなった。
村人たちは多大な恩を返そうとしたがナナリはこれを断った。
ナナリにとって目の前の村が平和になれるのが一番の目的であった。
しかしこの平和も半年ともたなかった。
領土拡大に乗り出していた軍が敗走したのだ。
最初の敗走から連敗が続きついには元の国境線まで押し戻された。
また戦禍に脅かされることになり村中に不安が漂っていた。
そしてついに村に向かって軍が来てるとの情報が入った。
ナナリは無言で部屋に置いてあった各武具を身に着けた。
そした最後にロザリオを身に着ける。このロザリオはナナリの母が身につけていたもので唯一形見として残った物であった。ナナリにとって家族とは手に届かない特別な存在であった。そして自分を受け入れてくれた村の人達は家族と同じくらい特別な存在でもあった。
今のナナリは村のためなら相手が誰であろうと容赦はしないだろう。
ナナリは扉を開けると同時に村の外に向かって走り出した。
村の外に出て坂道を駆け下りる。そこでナナリはあることに気づいた。
(軍隊の進行速度が遅い)
ナナリは情報を元に交戦ポイントを絞っていたがそのポイントよりもかなり前に敵の陣があった。
ナナリは周囲を警戒しつつ敵の本隊の前まで行くことにした。そしてそこで見た光景は異常であった。
それは数えきれない程の死体の中央に血まみれの少年がいた。
見た目は14,5くらいだろうかナナリよりも4つは下になるだろう。
ナナリも感情を表に出さないが、目の前の少年は感情が元からないように見えた。
少年の腰には無数のホルダーケースがつけられていた。
少年がホルダーケースから取り出したのはカートリッジであった。よく見ると右手には短銃、左手には刃物を持っていた。
「で、まだやるの。無駄だと思うよ」
少年は表情を全く変えずに先にいる兵を見ていた。
既に相手は半分以上戦意を失っている。
目の前の少年は人間じゃない、バケモノだ。
そして軍のある人間がナナリに気づいた。
「あ、あ、あ・・・」
声にならないような声でナナリを指でさした。
それに気づいた他の兵達も一斉にひきつった顔をした。
「悪魔が、あの悪魔まで出てきたーーー」
どうやらあちらではナナリの事を悪魔と呼んでいるらしい。ナナリの強さは普通の人から見ればありえない強さであったためそう呼ばれているのだろう。
「悪魔とさらに鬼が出てきた、もう無理だ」
一人の兵の言葉きっかけに兵は逃げ出し始めた。どうやら鬼とは少年のことらしい。
数分としないうちに戦場であった荒野はナナリと少年だけになった。
二人はお互いに視線を相手に向けた。
(まだ幼いな、本当にこの少年がこの状況を作ったのか)
ナナリは半信半疑で周囲を見渡す。
「・・・敵?邪魔するなら消す」
少年は銃をナナリに向けた。ナナリが少しでも動けば引き金を引くであろう。
「敵ではない。だがやるなら死の覚悟をしておくように」
丁寧でな口調ではあるが内容はやるなら殺すと物騒な内容であった。
お互い口数が少なく片方は感情を表に出さないタイプ、片方は既にやり返す気でいる。
ナナリはベレッタを両手に持ちかまえる。
二人の間に緊張が走る、そして
「っ」
最初に仕掛けたのは少年、少年の持つ銃はデザートイーグル。
一瞬で足と手の2ヶ所を狙って撃ってきた。そしてそのまま態勢を低くして突っ込んできた。
ナナリはこれを僅かに半身よこに移動して避ける。
「!!」
少年は表情を変えていなかったが驚いていた。
そしてその驚きは隙を作ることになってしまった。
「まだ甘い」
ナナリは少年の横をすれ違うように回り込み足を狙って4発撃ちこんだ。
どうやらナナリは殺す気はないらしく無力化をするつもりでいるようだ。
完全に裏を取った形のこの構図、この4発のうち一発でも足に命中すればその時点で勝負は終わる。
そう確信していた。しかし事はそう上手くいかなかった。
少年の体が突如加速し弾丸をぎりぎりで回避した。
「強い」
少年はナナリを見てつぶやいた。
「でも、なんとかする」
そして先ほどよりも加速する。弾の牽制と致命傷を狙いつつ撃ってきた。
だがナナリも冷静であった。牽制の弾が当たらないと判断すると本命の弾丸のみに的を絞りこれを撃ち落とした。ナナリは2丁の銃を既に自分の体の一部として扱っているのでこの程度雑作もなかった。
少年は疾走しながらも続けざまにデザートイーグルを撃ち放つ。どうやら少年も同じく銃の扱いに慣れていた。

両者一歩も譲らない銃撃戦はいつしか銃撃+接近格闘戦にかわっていた。
そしてここにきて少年のうごきが更に鋭くなった。
(まだ14、5の子供にここまでの動きができるのか)
ナナリは額に冷や汗を流しながらも少年のラッシュを捌ききる。
「ちっ」
少年の声に苛立ちが混ざっていた。少年の足技に対してナナリは冷静に腕で受け止める。
そしてそのまま受け止めた腕で足をからめとろうとする。少年はその意図に気づき地面と平行に跳び残った足でナナリを蹴り飛ばす。
(なるほど)
ナナリはここにきて少年の弱点に気づいた。
先ほどから少年は足技しかしてこなかった。普通に一般の軍人などが相手ならそれだけでなんとかなったが相手はナナリである。瞬殺できなければいずれ劣勢に立たされるのが分かってたから少年は苛立ちを隠せなかったのだろう。
(若い)
ナナリは自然と笑いがこみあげていた。
ナナリは防戦一辺倒であったこの状況を打破するために少年の蹴りの間にできる僅かな隙をついて前に出た。
それは少年にとって驚くべき事態であり、それが勝敗を決する原因にもなった。
「せいっ」
ナナリは蹴りを前に飛び込みつつ屈みながら避けた。そしてそのまま斜め下から上に向かって全力の拳を振り出した。少年は咄嗟に銃を持つ右手で防ぐが体格の差もあり大きく後ろに吹き飛ばされる。
「くっ」
呻き声にも聞こえる声をあげつつも地面を滑りながら態勢を立て直す。
しかしナナリはこの間に今まで以上の速度で飛び込んできた。完全に防御を捨てた突進だった。
少年はデザートイーグルを撃つために右手を上げようとするが先ほどの蹴りの衝撃で腕が麻痺していた。
「うおぉぉぉぉ」
それでも今までにない気合いと怒号をまじりあわせた声を出しつつ両手でデザートイーグルを持ち上げた。一体どれだけの修羅場を潜り抜けたらこれほどまでの不屈の闘志を持てるのかナナリには理解できなかった。
少年はデザートイーグルに入っている7発の弾を一瞬にして全て撃ってきた。
どれもナナリの全身のどこかを狙っていた。しかしナナリは避けようとせず両手に持つベレッタを突き出し
「なめんなーーーー」
少年程速度はないがそれを補う二丁のベレッタで7発の弾を全て相殺した。
少年はその光景をただ茫然と見るしかできなかった。そして
「終わりだ」
ナナリは少年の頭にベレッタを付きつけた。
少年はため息をつき目を瞑った。
「殺せ」
動揺すらない声、まだ年端もいかぬ少年が簡単に死を受け入れることにナナリは怒りすら覚えた。
「殺す前に幾つか質問だ。君は何者だ」
ナナリの質問に少年は目を開けた。
「俺の名はフリューベル。何者と聞かれても困る。強いて言えば国や企業を憎んでいる一人だ」
ナナリは唖然としていた。どんな幼少期を送ったのか知らないが軍に対してあれほどまでの凶悪さを発揮する時点で相当憎んでいるようだ。
「何故私を狙った」
そう国や企業を憎み軍を狙うならともかくナナリを狙うのはお門違いであった。
「目撃者はできる限り消す。ましてあなたは私を逃がしはしなかったはずだ」
少年の考えの大半に納得がいった。ナナリとてフリューベルの強さは見過ごすわけにはいかなかった。味方ならまだしも敵になられると厄介きわまりない存在である。
「あなたもこの国の兵、俺みたいな異端者は始末するのが必然。なら消す以外に道はない。負けた今、消されるのは俺になるか・・・殺せ」
フリューベルは言い終わると目を閉じた。
「幾つか間違いがあるが先にこれだけ訂正しとく。私はこの国の兵ではない」
ナナリは呆れていた。ナナリの格好は確かに戦闘に備えた服装だが、軍が着るような服ではなく身動きの取りやすい軽武装であった。
「私は、この近辺にある村に住まわしてる者であって元はこの国の人間でもない」
ナナリの言葉にフリューベルは呆然としていた。まさか自分が殺そうとしていた相手が軍はおろかこの国の人間ですらなかったことに衝撃をうけていた。
「まぁそんなことはどうでもいい。とりあえずこれ以上私や付近の村人に危害を加えるなよ。もしそんなことをすれば次こそ殺してしまうからな」
ナナリはベレッタをおさめた。
直後背後から無数の気配がした。
「ちっ、奴ら性懲りもなくまた来たのか」
ナナリの視線の先には先ほどの軍が迫ってきているのが見えた。
(この状態だと厳しいな)
ナナリは残弾数と自分の状態を冷静に分析しどう出るべきか悩んでた。
「俺が正面から切り崩すから、あんたは右側からたたいて」
フリューベルは立ち上がりながら淡々と話してきた。
「あんたには借りができた。このままあんたが殺されても困る」
フリューベルはデザートイーグルの薬莢を抜き捨て新たに詰め替えていた。
「二人でやればあれくらいならどうにかなる」
フリューベルは試すような目でナナリをみた。その姿は年相応の幼さがあった。
(こんな顔できるんだな)
ナナリは感心しながら飛んできた何かを受け止めた。
「それ使え、あんたなら使いこなせる」
ナナリのてにあったのはファイブセブン、しかも改造されているようで30発近くの弾が装てんされていた。
しかもそれ以外に予備の弾のケースを渡された。ざっと見て300発近くある。
一体彼のどこにこれだけの装備が隠れていたのか謎であるがナナリにとってはありがたかった。
「フリューベルといったな。私の名前はナナリだ。あんたとはよばないでほしい」
ナナリの言葉にフリューベルは少しだけ考え頷いた。
「分かったナナリ、俺の事は好きに呼べばいい」
「それではベルと呼ばせてもらう。よろしくな」
ナナリはファイブセブンを握り感触を確かめた。相当に手入れがされていてナナリの手に合っていた。
「よろしく、・・・行く」
勢いよくフリューベルは飛び出した。ナナリもそれに続いて飛び出した。

時間にして僅か2時間、戦場に放たれた2人は圧倒的なまでの力で軍隊を壊滅。
「バ・バケモノ」
既に虫の息になりつつある兵が苦しげに呟いた。
「黙れ」
フリューベルは冷ややかな目で兵を撃ち抜いた。
「お前たちみたいな欲にまみれた奴のせいでどれだけの人が苦しんでるかその身に刻んで死ね」
フリューベルの容赦ない虐殺姿にナナリは危機感すら覚えた。 この少年が人を躊躇なく殺すことが続けば少年はいずれ自我を失うだろう。そうなればいずれ自分はおろか周囲の人間にまで驚異をふりまくだろう。
2人は戦場から引き上げ村まで戻った。
「ベル、これから行くあてがないなら私についてこないか」
ナナリの言葉にフリューベルはきょとんとした。
「私もやらないといけないことがあるためもうすぐここを出ていく。同じ戦場を駆ける仲間が欲しい」
ナナリの視線はフリューベルを突き刺しその先を見ていた。
「既に一度失った命、ナナリが必要とするなら預ける」
フリューベルはナナリを見上げた。
「ならベル、君が新たな目的ができるまでの間よろしく」
ナナリはフリューベルに手をさし出した。
「・・・よろしく」
フリューベルも少しだけ躊躇したがナナリの手を握り返した。

3ヶ月後戦乱の終了と共にナナリ達はこの地を後にする。
それから1年間、各地の戦場を駆け巡り名を馳せた。
しかしある機を境に二人は戦場から姿を消した。そしてそれから更に数年後また戦場に彼等は戻ってくる。
この空白の期間に新たな出会いがあったがそれはまた別の話である。
だがこれだけは言える全ての物語の幕開けはこの2人が出会った事から始まった。
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第28話:白き虎の覚醒

「アイリス右行ったぞー」
アイリスはその言葉に従い右の敵に切り込んだ。
そのまま、DEを取り出し撃ち込んだ。
「どかぬというのなら私が相手してやる。死にたい人から出て来なさい」
アイリスはさらに左手にDEをとりだした。
「すでに本気か。なら俺も負けてられない」
レオンは両手にグロックを取り出し敵の背に一瞬で回りこみ撃ち込んだ。
「僕の名はレオン、レーベルに敵対すべき者は全て敵とみなす。全力でこられよ」
すでに白兵戦となった戦場で若き戦士は踊った。それは力押を否定する戦場の舞踏であった。

そんな激しい戦いとは別にもう一箇所でも少人数同士とはいえ激しい戦いが始まっていた。
「ナナリ、お前は先に進め」
セツの言葉にナナリは少し躊躇した。
「いけ、いって答えを出して来い」
とーるの声が後押しをする。
「そうです。ナナリさん、後悔だけはしてはいけません。行ってください」
エリスは目の前に敵を切り倒しつつ言った。
「分った、皆ありがとう」
ナナリは一度頭を下げた。
「やぁぁぁぁぁぁ」
まだあどけなさの残る声と共にナナリ達の前の敵が吹き飛んだ。
「今よ、ナナリいって」
リオの声が聞こえた。ナナリはそれを合図に真っ直ぐ駆け抜けた。途中抵抗する敵を問答無用で切り倒し奥へと進んだ。
「さて、大掃除と行くか」
セツは銃を投げ捨て槍を取り出した。それを合図に全員が得物を持ち替えた。
「ねぇ、賭けをしない?」
リオが突拍子もないことを言った・
「なんですか?賭けって」
エリスは敵の銃撃を捌きながら返してくる。
「誰が一番敵を倒すか勝負するの。一番倒した人、以下全員に一つだけ命令できるの」
リオは小悪魔っぽい顔をしながら言った。その顔には活の自分という自身があった。
「おもしれー、乗った。んじゃ俺が攻勢に移った時を合図に開始だ」
とーるの言葉に全員がうなずいた。
「それじゃー、おっぱじめるかーーーーーーーーーーーーー」
とーるの気合のこもった声に3人が散り散りに展開した。

既にアイリス達の指揮する外の部隊と基地内部のセツが指揮する遊撃部隊の勝利は確定していた。
フリューベルの作戦は外と内の両面突破の内容は完璧だった。その内容が物語るとおり敵の被害は甚大でこちらの部隊の被害は最小にとどめられていた。
「こちらは終わりましたよ」
アイリスは銃をしまいレオンがいたほうを見た。
「こっちも終わったよ」
レオンは既に他の部隊の援護へ向かっていた。
アイリスはそれを見送った。
「それで何故あなたがここにいるのですか?漆黒さん」
アイリスは視線を岩の方へ向けた。
岩の影から一人の男が姿を現した。
「ほう、中々やるな。お前が疾風の愛弟子か、さすがというべきだな」
漆黒は表情を変えずにアイリスを見ていた。
アイリスは腰に携えたDEに手をかけいつでも撃てる状態であった。
「お前がやる気なら構わんが、今のお前では俺には勝てんぞ。まぁ殺る気はないから安心しろ」
漆黒の表情が変わらないためアイリスもそれが本当か計りかねていた。
「こいつを渡しておく」
アイリスの前に一つの筒を投げた。
「お前達が次にしかける拠点の詳細図だ」
「なっ、そのような事を信じろと言うのですか」
アイリスの声を尻目に漆黒は背を向けた。
「信じるかどうかは疾風に聞け」
そういい終わると漆黒は岩の影に消えていった。
「まてっ」
アイリスは追いかけたが、そこには既に人の姿はなかった。
「フリュさんに後で聞いておくとして、今は援護を」
「終わったよ」
アイリスの言葉を否定するようにレオンが後ろから歩いてきた。
「とりあえず全部隊に待機命令をだしといた。後はセツさん達が戻ってくるのを待つだけだよ」
レオンとアイリスはここから先にある基地のほうをみた。
(皆さん御武運を)

基地内部での激しい戦闘が行われている中ナナリは基地の最深部にたどり着いた。
「ここは?」
最深部には大きな筒のようなものが多数おかれていた。そしてその中を見てナナリは驚愕した。
「子供!」
ナナリは他の筒を見たがそこには年齢こそ違うが子供が入っていた。
「なんて酷いことを」
「酷いとは心外ですな」
部屋の奥から声が聞こえた。ナナリは声がしたほう見ると、3人の老人がいた。
「なっ、3賢者」
ナナリは驚きを隠せなかった。
3賢者、それは現代の国が機能しなくなった世界に秩序をもたらした存在。今ある企業の大半は彼らの手によって作り出されたと言っても過言ではない。
「お前達には分らないかもしれないが、これも世界のためだ」
一番右の賢者が言った。
「だからといって、子供達をこんな扱いすることは許されない」
ナナリは太刀を抜き構えた。
「やれやれ、これだから戦うことしかできない馬鹿は困る」
中央の賢者が小馬鹿にするようにナナリを見た。
「お前達はここで死ねーーーーーーーーーー」
ナナリは激昂し賢者に向かって走った。
しかしナナリの前に邪魔が入った。
「マスターに手を出すことは許しません、よって排除します」
抑揚のない声だが聞き覚えがある声がした。そう忘れるわけがない、どれだけ願ったであろう。
「やよい・・・」
しかし、やよいの目は光を映していなかった。
「きさまーーーーーーーーーー、やよいに何をした」
ナナリが今までに無いほどの怒声を吐いた。
「ほっほ、戦いに感情は不要。ならば消しても問題ないであろう」
左の賢者が愉快そうな声を上げた。
「くっ、やよい俺が分らないのか返事をしろ。お前の憎んでた敵だぞ」
ナナリの呼びかけも虚しくやよいは全く反応しなかった。
「やれ、そいつは我等の敵じゃ」
やよいは聞き取るやナナリに向かって斬りかかった。
ナナリは太刀でそれをはじき返す。
そしてそのまま一気に懐へ飛び込んだ。
「白氷一閃」
それはナナリがやよいが捉えることができなかった剣技ゆえにナナリも自身があった。しかし
「白氷の如く」
ナナリの太刀はやよいの剣によって阻まれた。しかもそれはナナリと同じ技であった。
「驚いたか、だが驚くにはまだ早いぞ」
不愉快な声が聞こえてきたがナナリはそれを無視してやよいを無力化することに全力を費やす。
1合目、2合目、3合目・・・
しかしナナリの太刀はことごとく阻まれてしまう。やよいの剣もナナリは撃ちかえし膠着状態のような攻防が続いた。
しかし、それは罠であった。
どん
「しまった」
ナナリの背中には壁があった。これでは太刀を振ることができない。
無言の剣が振りおろされる。
(一か八か)
ナナリは太刀をやよいの横に投げ右手で剣を挟んだ。
そう無刀取だ。しかしナナリも予想してたとおり完全に無力化はできず刀の起動をずらし受け流した。
そのままやよいの頭に回し蹴りを叩きこんだ。
吹き飛ばされたやよいを確認しつつ太刀を拾った。
(どうするべきだ、やはり斬るしかないのか)
ナナリは決断に悩んでいた。しかし状況は誰もが予想しない方向に動いた。
「ナナ・・リ…タ・スケ…テ」
立ち上がったやよいの目に僅かだが光が見えた。そしてその目から涙が零れていた。
「やよい、正気に戻ったのか」
「ダメ…コロシテ。モウイ…ヤダ、ダレモ…コロシタ…クナ…イノ…ニ」
途切れ途切れだがそれでもやよいの本心が篭っていた。
「ちっ、先の衝撃で洗脳がとけたか。だが」
賢者が何か取り出した。それは石であった。そうリオが今持っている石であった。
石が光を放つとやよいが今よりも更に呻きだした。
「イヤ、ヤメテ。ヤメテー」
やよいは頭を振り必死に何かを耐えていた。
「やよい待ってろ。今すぐ何とかしてやるから」
ナナリは太刀を賢者のほうに向ける。
「無駄だ。ワシ等を殺したとこでその女は元に戻らんぞ」
「何!」
それでもナナリは賢者との距離を詰めた。
「この石には特殊でな。なぜかは分らないが人を洗脳する力を持っている。そして石にはわしらが厳重に暗号化をしてわしら以外の命令を受け付けないようにしているのじゃ」
賢者の言葉にナナリは愕然とした。それでは救いようがない。
そして後ろから気配がした。
「ナナリ…コロシテ。アタシヲ…コロシテ」
悲鳴とも聞こえる声でやよいはナナリに斬りかかった。
ナナリはそれを受け止める。しかし先と違い反撃することができなかった。
「オネガイ…ナナリ…アナタノテ…デラクニシテ」
やよいの悲痛な声がナナリに突き刺さった。
「ふざけんなーーーーーーーーーー、誰が殺してやるか。誰が殺されてやるか。やよいお前は俺のものだ絶対に助けてやる」
ナナリの言葉は今まで以上に強い意志があった。それは奥にいた賢者がたじろぐ程であった。
「女一人助けれないなんて無力あのときだけで十分だ」
ナナリの体に異変が起きた。ナナリの体を冷気が覆っていた。
そうとーるが帯電体質という特異体質と同じくナナリも異常体質であった。ナナリの感情が沸点を超えたときにのみ発せられる。
「あああああああああああああああ」
ナナリは力任せに太刀をふった。
キーン
やよいの持っていた剣が吹き飛ばされた。しかもそのまま剣は氷つき地面に落下し粉々に割れてしまった。
「許さん、絶対に許さんぞー」
ナナリは悪鬼の形相で賢者に向いた。背後からやよいが小刀ナナリに向かって刺そうとした・
「ダメ…ナナリヨケテ」
やよいの声が聞こえたがナナリは振り向かなかった。
そしてナナリを刺すはずだった小刀はナナリの体を貫く前に砕けた。
「まさか貴様、白き虎の一族の末裔か」
賢者達は一歩後ろに下がった。
「おっと逃がさねーよ」
賢者達の後ろから男が現れた。それはナナリがよく知っている男であった。
「なっ、貴様疾風。どうやって中に潜り込んだ」
賢者は驚愕し恐怖に陥っていた。
「さて面倒なことはどうでもいい。よっ」
フリューベルは石を持っていた賢者の首をつかむと持ち上げた。
「がはっ、何をする話せ」
賢者の抵抗もむなしくフリューベルはびくともしなかった。
「お前達は罪を重ねすぎた。裁きの時がきたんだよ」
フリューベルはそのままナナリに向かって賢者を投げた。
ナナリもそれが何を意味するか理解していた。
「白王(ハクオウ)の名の下に・・・今裁きを」
ナナリは太刀を振り下ろした。
賢者は声をあげることもできず真っ二つに斬られ二度と帰らぬ存在になった。
「ナナリ、その石に思いを込めて叩き砕け。暗号はラーズフリード。古代語で永遠の自由だ」
ナナリは目を閉じ石を拾い宙に投げた。そして色々なことが思い浮かんだ。
やよいのこと、記憶なくしても仲間として行動したフリューベル、どんな困難に直面しても諦めないとーる、人々を魅了する笑顔を持つ優しきエリス、そして会ってまだそこまで時が経っていないのに自分を信じてくれたセツ。
(本当にありがとう皆、そしてこれからもよろしくな)
「ラーズフリード」
ナナリの強い言葉と共に石はきれいに砕け粉になり地面に落ちた。
それと共にやよいを蝕んでいた力が霧散した。
「あ、苦しくない・・・」
やよいは自分の体をあちこち確かめるが痛みもなかった。
「やよい、よかった。ほんとによかった」
ナナリはおもいっきりやよいを抱き込んだ。
「痛いよ。痛いってば・・・ナナリ泣いてるの?」
やよいはナナリが声を殺して泣いていることに気づいた。
「ごめんな、迎えにいってやれなくて。苦しかったよな、ごめん」
ナナリは何度も謝った。
「もういいよ。あたしは怒ってないから・・・ね」
やよいの声を聞きナナリは何度もうなずいた。
「ただいまナナリ」
やよいは笑顔でナナリを見た。そしてナナリも笑顔で返した。
「おかえりやよい」
今2人の苦しく長い戦いは2人の最高の笑顔で幕を閉じたのであった。
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第18話:想いと誓い

あの日、大切なものを失ってから時が経った。

時が経ってもその傷は残ったが、それでも少しづつだが癒えてきてもいる。
そんな彼らを絶望から救ったのは彼ら一人一人に残された一枚の手紙であった。

(1年前)
戦場から帰ってきた。とーる達の姿を見たエリスはほっとした。
しかし、その場にフリューベルの姿はなかった。エリスは彼が残した手紙で既に彼が無事に戻ってこれない事は知っていた。
手紙の内容はこうだ
『色々書きたいことはあるが、まずはエリスに伝えておく。今回の戦、多分だが俺は戻ってこれないだろう。そこで頼みがある。彼らの行く末を見届けて欲しい。とーるは相変わらず無茶をするところがあるから時々でいいから釘をさしてやってほしい。リオには女同士だから話もしやすいと思うので悩みとか聞いてやってくれ。そしてナナリ、今回の件で一番ショックを受けるのはあいつかもしれないが今まで通り接してやってくれ。俺からの頼みはこんなところかな。
最後に、とーるとハルとは仲良くやれよ』
この手紙はエリスの希望とあって3人は見ることがなかったが大体予想はできていた。
そしてナナリ達が戻ってきて5日後、戦場跡から一本の槍が彼らの元に届けられた。
それは覚悟はしていたとはいえ多かれ少なかれショックを与えた。
ナナリはじっとその槍から目を離さなかった。
とーるは目を逸らし見ようとはしなかった。
リオは大泣きして槍を抱いていた。
そんな彼らに槍とは別に手紙が届けられた。
発送者はフリューベルであった消印は戦に出る前日だった。
フリューベルは先に手紙を渡されたエリス以外にも別々に3人へ手紙を出していたのだ。
彼らは絶望から新たなる想いを持ち立ち上がった。





「ふう」
白衣を着たナナリは軽く伸びをしていた。
ナナリは前と変わらずに研究室で石の研究をおこなっている。
前とは違い時々休暇をとったりしているためか顔から生気が見える。
「ナーナリ」
部屋に飛び込んできたのはリオだった。見た目は4年前に比べ大人び周囲からの人気は更に増していた。
「相変わらず元気だなー」
ナナリは笑みを浮かべながら紅茶を入れた。机の上に置いた。
「ありがとう。それにしても相変わらず研究室荒れてるね。掃除しようか?」
リオは研究室内を見渡した。
研究室は機材が壁端に積み上げられていた。
「そうだな、今度時間が空いたら頼む」
「それでどうなの、解析はできたの?」
「まだ、解析途中で何とも言えん」
ナナリはモニターを凝視しつつも自分用の机に載せてある答案用紙を採点していた。
「ナナリ、頼まれて調べてたやよいって子なんだけど。分かったことがあるわ」
ナナリは手を止めてリオに視線を向けた。どうやら聞く気があるようだ。
「私だから気付いたのだと思うけど。あの子洗脳というより精神が破壊されてるわ」
この4年でナナリ達は変わらず戦場に立ち続けた。その中で彼らの共通の理由は2つ。

もしかしたらフリューベルが生きているかもしれないということ
アビッサルを完全に叩き潰すこと

いまだ現在フリューベルの死亡を確認できていないのだ。僅かな望みを頼りに戦場まで出て探していたるのだ。
そしてこの原因を作ったアビッサルにはナナリ達4人は許すことができなかった。お互い殺し合いをしているのだから仕方ないのだが。やはり納得できなかった。

結果3人はそのまま戦場で戦い続けてきた。そして3人にエリスも加わり4人は既に戦場では有名になりつつあった。
そんな中頻繁に交戦した相手の中にやよいがいた。
現状1対1ではまだ敵わず最低でも2対1以上で押し込んでいる。

リオはやよいが自分と同じく洗脳されていると思い何度か探りを入れていた。
しかし洗脳された場合自我に矛盾が生じるのに対しやよいは確固たる意志で向かってきた。
結果、やよいの精神が麻痺(この場合破壊)してしまっていると判断したのだ。
「そうか、もしかしたら思っていたがやはりか。わざわざすまんな」
ナナリは少しだけ落ち込んでいる様も見えた。
「気にしたら駄目よ。今の私たちに彼女を押えるだけの力がないんだから。今は強くなる事を考えるべきだわ。っていうかナナリ、彼女作ったら?」
慰めの内容からいきなり変わった。
ナナリはコーヒーを吹きそうになったがなんとかこらえた。
「リオ、俺にはそんな暇はない。そもそもお前はどうなんだ気になる奴でもいるのか」
ナナリは呆れながら切り返した。
「いるわよ」
リオから思いがけない返答が返ってきた。
「ほーう」
ナナリは関心の声が漏れた。
「とはいっても今のままでは一生無理だけどね。その人が見つかってないのだから」
「リオ、お前まだ諦めきれてないのか」
ナナリは少しだけ悲痛な顔をしているリオを見てしまった。見るべきではなかった。
「どっちかっていうと憧れなんだろうけどね」
リオは苦笑いしながら残っていた紅茶を飲み干した。
「さてと、行ってきます」
「あれか?」
ナナリはリオが何処に行くのか分かっていた。
「あれです」
リオは先ほどとは違い笑みを浮かべていた。どちらかというと小悪魔っぽい笑みであった。
リオが研究室から出ていくのを見送った。
ナナリはそのままモニターに視線を戻すと一言つぶやいた。
「絶対に救い出してみせる」
その言葉にこれまで以上の強い意志がこもっていた。



「おっし、これで最後だー」
気合いの入った声がグランドに響いた。
「うおりゃーーーーー」
気合いの入りすぎとも言える声と同じく投げ出された球は高い音と共にキャッチャーのミットに納まった。
「ゲームセット」
審判の声にキャッチャーがピッチャーの元に走っていく。
「とーるさんナイスです」
「ハルこそナイス。ハルがキャッチャーでないと本気で投げれないから本当助かる」
とーるとハルはそれぞれ大学院、大学に進学し休日は地域の野球チームの試合等に参加していた。
とーるの投げる球は150k/hを超えておりハルが来るまでだれも取れなかったのだが、完全復帰し大学活も問題なくなったころから才能を発揮していった。とーるとハルは実質、大学内外問わず今では人気があった。
「とーるさん、ハルお疲れ様です」
とーる達にタオルを渡してきたのはエリスだった。エリスはとーる達が所属するチームのマネージャーであった。
とーるがハルをチームに連れてきたときに他のメンバーから拝み倒されて以来毎週かかさず来ていたのだ。この4年間で一番変わらなかったのはとーるであった。
フリューベルがいなくなっていち早く立ち直ったのも彼であった。

試合も終わり解散となり、3人は他愛のない話をしながら帰り道を歩いていた。
「エリス、そろそろ戦場に立つのやめないか」
とーるから思いもよらない言葉が飛び出た。
ハルは驚き、エリスは普段と変わらずとーるを見ていた。
「どうしてですか?」
「危険すぎるからだ。確かに今まで4人で十分にやってこれた。だが今までが上手くいっても今後上手くいくとは限らない。俺はもうこれ以上大切な人達を失いたくないんだ」
とーるは悲痛な面持ちで語っていた。
エリスはとーるがの言いたいことは理解できた。
「とーるさん、いいたことは分かります。ですが、私はもうあの時のような何もできなかった私に戻りたくありません。」
とーるもショックが受けていた時、エリスはただ待つことしかできなかった自分を責めていたのだ。
「ですから私は私の意志で私の為に戦場に立ちます。それは誰が止めても止まりません」
エリスの強い言葉にとーるは納得せざるを得なかった。
(俺がしっかりしないといけないのにエリスの方がよっぽどしっかりしてるじゃないか。
俺がエリスを守ってやるんだ。しっかりしろとーる)
とーるは自分に激を飛ばした。
「分かったもう止めはしない。その変わり絶対に倒れるなよ」
とーるはこの時エリスを一人の仲間として見た。
エリスは自信を持って頷いた。
ハルはそんな姉が眩しく見えた。

「では、帰りましょう。私たちの家へ」
エリスのさしだされた手をとーるは強く握った。そしてこの温もりを失わないようにすると固く誓うのであった。


それぞれが新たなる想い、誓いを立て新たなる戦場へ立つ。
この後、起きる大きな戦いは世界中の人全ての記憶に刻まれ歴史となる。

物語は新たなる幕を開けた。



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