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REQUIEM館

第4話:回帰

「リオ、どうだ?」
フリューベルは周りを見渡しながら尋ねた。
「何もないわ・・・どちらかというと、何もないことが異常だわ」
フリューベルとリオはシェルターの最下層までたどり着いた。
しかし、これまでに人に出会う事はなかった。
フリューベルはあたりの壁等に不審な点がないか確認するが壁は傷一つついていない。
フロア全体を確認したが下へ降りるルートもなくこれ以上もなくこれ以上の調査には限界があった。
「兄さん一旦引き上げますか」
「・・・・」
リオの問いにフリューベルは答えない。
「兄さん?」
返事がない事に疑問を抱きリオが振り返る。
「!!」
リオは言葉を失った。フリューベルの前に一組の男女がいた。
それだけなら驚きはしても言葉を失うことはなかった。
「にい・・さ・・・・んと、わ・た・・・し?」
二人の前に現れたのは二人と瓜二つの男女だった。
「ちぃっ」
フリューベルは舌打ちをしながら瞬時に銃を抜き発砲する。
しかし、弾丸は彼に届く前に弾き飛ばされた。
(・・・こいつは)
フリューベルの中にある推測がよぎる。今、自分たちに足りない物を目の前の男は持っている。
「リオ!殺るぞ」
フリューベルの言葉にリオは瞬時に状況を把握し行動に移った。
幸い部屋は広く2人は部屋の入り口に近い場所にいる。
リオは通路に出るだろう。彼女の場合狭い空間の方が得意である。
フリューベルは銃を投げ捨てると間合いを詰めるために縮地で踏み込む。
ほぼ同時にリオも縮地でもう一人のリオに迫りそのまま通路に向かって蹴り飛ばしてながら部屋から飛び出した。
フリューベルの連撃を男は受け止める。
男は僅かな隙を見つけフリューベルの懐に体をねじ込み下から拳を振り上げる。
この動きにフリューベルは無意識に反応する。回避行動は間に合わない。
そこでフリューベルは拳に向かってあえて体毎踏み込んだ。
体当たりとアッパーが激突する。
フリューベルは少しだけ眉をひそめる。大して男は体当たりの衝撃で大きく後退する。
お互いにバランスを崩すが、これはお互いに好機でもあった。
先に動いたのは男の方だった。男の周囲に風が吹き荒れた。
(くるっ!)
フリューベルの直感は正しく大きく右にステップを踏んだ。
遅れてフリューベルがいた床が鋭利な刃物で斬りつけられた。
(やはりか)
フリューベルは目の前の男が自身と瓜二つである事に納得がいった。
「おかしいと思った。何故この世界にきて、力が失われたのか」
フリューベルは正面から向ってきた何かを右手で抑え込んでいた。
「その力と俺は何時も一緒だった。急に消える事は本来ありえない。だがこの世界に来た影響で失ったと皆考えていた」
右手の中で暴れる風を握りつぶす。
「力を失ったのではなく・・・分離してたんだな。・・・悪いが返してもらうぞ」
踏み込む、常人であればフリューベルが動いた事すら認識できなかったであろう。
しかし、男はフリューベルの動きに反応し拳をがぶつかり合う。
「っ」
フリューベルは何かに気づき即在に後ろに飛び下がる。
遅れてフリューベルの居た場所の床に亀裂が走る。
(風刃・・・ならば)
フリューベルは集中する。
目に映らなくても分かることがある。
(!!・・・今)
フリューベルはタイミングを計り一気に男へ詰め寄る。フリューベルの頬が僅かに切れる。
風の刃はフリューベルを襲うも紙一重で避けきる。
続けざまに2発目の風刃もフリューベルは身体を捻りギリギリで避けきる。
目視できないのに何故対応ができるのか、それは音であった。
風刃は放たれると直線上にしか飛ばない特性をもち風刃が発生する際僅かにだが空間に軋む音が発生する。
フリューベルはそれを察知し回避しているのだ。
6人の中ではナナリが得意とする技術でもあり彼のレベルになると常人では聞き取れない音ですら認識することができるがフリューベルやとーるも周囲の音を聞き取る技術には優れているのだ。
(いけるか!!!)
フリューベルが最後の跳躍で男の背後を初めて取ることに成功する。
全力で踏込み男の背後に回りこみつつ拳を打ち込む。
その威力は常人が受けたなら内蔵が破裂する破壊力はある。とーるの扱う技の中でも基本:琥砲の技に近いだろう。
拳を打ち込んだ一点にのみ気を集中し解き放つ。
男は背中を反りながら吹き飛ばされ地面に叩きつけられた。
手応えはあった。だがこれで簡単に終わるとは思われない。
予想通り男はゆっくりと立ち上がってきた。そして、右腕を振り払うとその手には一本の槍が現れた。
その槍を確認したフリューベルの警戒心が増す。
(やはり・・・そこにあったのか)
フリューベルにはその槍に見覚えがあった。
忘れるはずもない、彼が戦場にたってから長年共にしてきた相棒であるのだから。
「返せ、それは俺のだ」
フリューベルは地を蹴り男に向かって正面から突っ込んだ。
その突進は先より更に鋭く早い。
しかし、男は今までとは違いフリューベルの動きに余裕をもって合わせてきた。
フリューベルが銃をすて近接戦を仕掛けるのには理由がある。
それは力を行使できないフリューベルにとって遠距離は風刃を避けるしかできないからだ。
更に槍が顕現したことで周囲を荒れ狂う風が強くなっていた。
中途半端な距離では槍の間合いに入ってしまう。
残された選択肢は槍を振りづらい接近戦が残される。
フリューベルであれば接近戦になろうと足技と歩法で対応できるが、とーるのような必殺はない。
ゆえにこの接近戦は消去法で残された選択肢でしかなかった。
男もその事にはわかっているのであろう。フリューベルが踏み込むであろう距離から僅かに離れる。
無理やり踏み込んだフリューベルの拳を避けながら背後に回り込んだ。
(縮地!)
フリューベルもすぐさま反転して追撃を行おうとするが今の距離は男にとって絶好のフリューベルにとって最悪の距離.。
男は槍を大きく引くと勢いよくなげつけた。
「!!」
ほんの一瞬であった。圧縮された風を推進力に変え爆発的な加速を持った槍がフリューベルの胴体に突き刺さる。
フリューベルは槍に突き刺されながら壁に叩きつけられる。
「ごふぉっ」
口からは大量の血を吐出される。どうみても致命傷であった。
男がフリューベルに近づき槍を手に取り引き抜こうとする。
だが、男が力をいれても槍は引き抜けなかった。
先端に目を向けるとフリューベルは震えながらも槍を握っていた。
「これは俺のものだ。返して貰うぞ」
血を吐出しながらも笑ってみせると槍が呼応しかたのように風が包み込む。
その風は先程まで荒ぶっていた風とは違い全てを包み込むような穏やかな風であった。
そしてフリューベルはその風の中で多くの事を知る。
どうして自分達が力を失ったのか。どうして、自分達にそっくりな二人が現れたか。
そしてこの事態を作り出した人物の存在を。
(そういう事か)
風が止みフリューベルはこれまで負った傷が消えている事を確認する。
「やはりお前も俺だったんだな。俺にこれを届けるために無理してくれたんだな」
男はゆっくりとフリューベルの前に立つと頷いた。
「もう少しやりようはあっただろう。っていっても俺だもんな仕方ないか」
苦笑いしながらフリューベルは手を差し出した。
「ありがとうな、二度と失ったりしないからな」
男は手を握ると、少しだけ安心したような表情を浮かべた。同時に男の体から光の粒子が浮かび上がる。
(後は任せた)
もう一人のフリューベルが光となってフリューベルの中に吸い込まれる。
同時にその想いを受け取った。
「ああ、任された」
フリューベルは小さく呟き踵を返すとリオがいるであろう廊下へ走り出した。
フリューベル達の前に現れたもう一人の自分達。
これが意味することが何なのか。フリューベルは理解していた。
かつてと同じかそれ以上の戦いに身を投じる事になる。
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第3話:出会い

世界の何処かでは今も人が理不尽な死を迎えている。
それは国によっては他人事で実感のわかない話かもしれない、もしかしたら今自分の命を奪おうと目の前に迫っているかもしれない。
だが敢えて言おう。この世界は死の匂いが濃すぎる。

「おい、誰かいないのか。返事をしろ。おいっ」
とある室内に若い男の声が響き渡る。
だが返事はどこからも訪れなかった。
「またなのか、また人が消えたのか」
若い男は室内を飛び出し別の部屋に飛び込む。
せめて誰か一人でもいないのか・・・
幾つ目の部屋だろうか・・・既に数える事は諦めた。
そしてここには誰もいないのだろうと諦めかけていた。
「・・・・っ・・・」
男はハッとした。今わずかだが部屋の中から声が聞こえたような気がした。
「誰かいるのか!!」
男はドア開ける前に一言声をかける。だが返事はない。
仕方なく壁に設置されていた9つのボタンを決まった順に押すとドアがゆっくりと開いた。
部屋の中に男が入るがどこにも人は見当たらなかった。
しかし、男は部屋を隈無く見渡すと一箇所だけ違和感を覚える場所があった。
部屋の隅の床がわずかだが他の床に比べて埃が少なかったのだ。
「そこの床の下にいるんだろ、出てきてくれないか。俺はこのシェルターからの救難信号を察知して駆けつけたんだがここに来てから誰にもあえてないんだ。一体何があったか教えてくれないか」
しかし男の声に反応は帰ってこなかった。
ここまでは男も予想していた。いきなり味方といっても信じてもらえるわけがない。
そこで男は床に座るとじっと動かなくなった。
どれくらい時間が経っただろう。

ゴトッ

男は音がした方へ視線を向けると、そこには隙間からこちらを覗いていた子供の目と合った。
男はニッと笑みを浮かべた。それを見た子供は慌てて床の中に隠れたが直ぐにまた隙間から顔をだした。
「おじちゃん誰?」
子供はおずおずと訪ねてきた。
「おじっ!!まぁいい俺の名はとーる、さっきも言ったがここのシェルターから救難信号が出ている事に気づいてきたんだ」
とーるは、うーんと唸った。
「おじちゃん、お願いがあるんだ。妹を助けてください」
「妹?!!」
子供の言葉にとーるは首をかしげた。今目の前にいるのは一人だけだ。そうなるとその妹は今どこにいる?
少ししてとーるはあることに気がついた。
「そこにもう一人いるのか!!!」
とーるの言葉に子供は頷いた。
とーるは立ち上がると急いで床のもとに近づいた。
「なっ!!」
そこには弱々しい呼吸で倒れている子供がいた。
誰が見ても明らかなくらい衰弱していた。
「いつからここにいた!」
とーるの切羽詰まった声に子供はびくっとした。
「多分3日くらい前」
「ちっ」
とーるは舌打ちをしながら急いで床に飛び込むと倒れている子供を片手で抱き抱えた。
残りの片手でいまだに震えている子供を担ぎ上げる。
「お前の妹はかなりやばい状態だ。頼むから俺と一緒に来てくれ」
子供はこくこくと頷いた。
「名前を聞いてなかったな。教えてくれるか」
「リコ、妹はレン」
「OKリコ、レンは絶対に助けてやるから大人しくしてろよ」
とーるは一呼吸すると勢いよく飛び出した。
リコは目を疑った。とーるが一歩踏み込むとすでにフロアの角が目の前に見えていた。
次の一歩で更に角を曲がった。しかも全くと言っていいほど反動がなかった。
あっという間にシェルターの入口へ向かう1つ目の階段の前にたどり着いた。
ここは地下7階。とーるが本気を出せば1フロア30秒で走破できる。
あっという間に地下3階を突破し地下2階へと差し掛かる。
しかし地下2階に上がったところで足を止めてしまう。シャッターが下りていた。
「誤作動か!面倒だな」
とーるは即座に次の行動について思案した。このままシャッターをぶち破ることは難しくない。とーるにはそれだけの力がある。だがその反動で弱っているレンに負担をかけてしまうことが考えられた。
(どうする)
とーるは決断を迫られる。だが最善の行動がどれか決めかねていた。
「とーるさん、そこにいますか」
シャッターの向こう側から声が聞こえた。
「エリス!!!!いるぞ。いま子供二人抱えていてこちらからはちょっと厳しい。そっちからどうにかできないか」
「分かりました。とーるさんはそこから離れてください」
とーるは直様シャッターから距離をとる。
「やぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
僅かに遅れ気合のこもった声と共にシャッターが横に真っ二つに割れた。
そこからリオとフリューベルが飛び出してきた。
「上へのルートは全て抑えた。とーるとエリスは先にいって。私とベル兄さんで残りの階層の捜索をするわ。エリス任すわよ」
リオそのまま階段を無視して勢いよく飛び降りる。
「シェルター周辺でナナリとやよいがいる。合流してそのまま脱出してくれ。俺とリオのことは気にするな」
フリューベルもそのまま、階段を飛び降りていった。こうなると二人を止める事はできない。
とーるは一瞥だけするとエリスの後を追った。
その後、とーるは無事エリスと共にシェルターから脱出する。
入口には運転席でナナリが待っていた。
「早く乗って。出すよ」
やよいが後部座席から車の天井を明けスナイパーライフルを構えていた。
とーるはエリスを先に乗せリコとレンをナナリに詰め寄った。
「運転は俺がやる、ナナリさん頼むあの子を助けてくれ」
ナナリも状況を瞬時に把握し即座に後部座席へ移動する。
すでにエンジンが入っていることを確認しアクセルを踏み込む。
車体が少し浮いたように感じたがそれでも衝撃も少なくスムーズに発進した。
ナナリはレンの容体を確認しつつ応急処置を始めた。

その後1時間の陸路と1時間の空路を使い軍の医療施設へ飛び込んだ。
幸いナナリの適切な処置によりレンは一命を取り留める事になるのであった。

後に二人の幼子はとーるとエリスの養子として迎えられる事になる。
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第2話「平穏」

「応答せよブレイズ1」
「こちらブレイズ1、戦域を無事離脱。そのまま帰還する」
「了解。次の指示があるまでゆっくり休みたまえ。ああそれとお前達のリーダーにもよろしくと伝えてくれ」
「了解」

「だとさ、フリュよろしくってさ」
片手運転しながらも無線を切ったナナリの口調がいつもと違った。
「だから俺がリーダーとか誰が決めた。そもそもナンバーが1のナナリがリーダーと考えないか?」
フリューベルは疲れた声で答える。ナナリの口調がちがうのはフリューベルを弄っているからであってフリューベルもそれが分かっていた。
「フリュさんそれは無理だよ。今までが今までだから諦めなって」
とーるが笑いながら答える。他の者達も同意のようでうなずいていた。
フリューベルも諦めているのか何もいわず外を眺めることにしたようだ。
それから数時間ほど走らせる、とある一軒家の前で車が止まった。
「着きましたよ、早速お出迎えのようですね」
ナナリが車を止めドアを開けると同時に家の扉が開いた。
「パパーーー」
一人の子供がナナリに飛びついた。
「っと、ただいま。いい子にしていたかい」
ナナリが子供を抱き上げた。
「うん、皆良い子にしていたよ」
子供は笑顔で答えるのをみてナナリも笑みを浮かべた。
「全く、相変わらず元気の塊ねあきらは」
やよいが呆れつつもあきらの頭を撫でる。
「お母さんお帰りーーーー」
「お帰りなのーーー」
とーるとエリスの元に二人の少女が寄ってきた。
「おう、今帰ったぞー」
とーるとエリスは二人の少女を抱き上げた。
「リコ、レンただいま」

フリューベルとリオは車から荷物を降ろそうとしたが気配を察知し瞬時に飛び下がる。
2つの影が同時に2人を追いかけるように飛び掛ってくる。
フリューベルとリオは無手で迎撃にかかる。
リオは着地と同時に影に向かって突進し影と激突する。
フリューベルは逆に身動きをとらず構える。
リオの突進によって影の動きは一瞬鈍くなる。しかしそれでも応戦する。
リオとほぼ同じ速さで連打を繰り出す。しかしながら戦い慣れしてるリオは僅かな隙を見つけ影の後ろに回りこみナイフを突きつけた。
「後もうちょっとね」
リオはくすりと笑った。
フリューベルは影の動きに対し冷静だった。
影は射程圏内に入ると手にしていた得物を突き出してきた。
これをフリューベルは得物の側面を叩いて軌道を逸らす。力はほとんど必要ない、ほんの少しだけ力を入れただけだった。
それで勝負はついていた。結果として大きな隙ができた影はその後のフリューベルの踏み込みに成す術もなく吹き飛ばされた。
「迷いの無い踏み込みはよかった。後は相手の動きに、リン」
フリューベルは影の方に歩み寄り手をのばす。
「ちぇっ今日こそは一撃入れてやれると思ったのになー」
フリューベルの手をとり立ち上がった。見た目は先の4人よりも少し年上の少年のようだ。
「それとエル、挑むなら得物を使え。相手が無手だからといってあわせるな」
「はい!」
リオが手を離すと少女がフリューベルのもとに走りよって元気よく答える。
リンとエルは笑顔で二人を迎えた。
「おかえり父さん、母さん」
「おかえなさい父様、母様」
「ああ、ただいま」
「ええ、ただいま」

つかの間の平穏が訪れる。だがこれは、これから始まるであろう激闘の前の僅かな休息であった。
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第1話:物語は再び始まる

「世界が変わろうと、闇というものは存在してしまうのだから皮肉なものだ」
紅髪の男はライフル越しに呟く。
彼の名はフリューベル。幾つもの戦場を駆け抜けてきた戦の申し子の一人でもある。
『私達がこの世界に流れ着いたのも意味があるのかもしれませんね』
無線越しに男の声が聞こえる。
彼の名はナナリ、メンバーの中でも一番の頭脳派である。極限状態におかれても最善・最適な行動がとれる切れ者である。
『ベルさんも、ナナリさんも深く考えすぎじゃね?』
2人とは別に楽観的な声が聞こえる。
彼の名はとーる、メンバーの中では一番勘が鋭く幾度の危機を乗り越えてきた。
以前は死神と恐れられてもいた。
「とーるの言うとおりだな、リオ達も動き始めてるはずだ。手筈通りいくぞ」
『『了解』』


「お疲れさま」
笑顔で紅髪の男を出迎えたのは、身長が140cmくらいの小柄の女性だった。
彼女の名はリオ、女性メンバーの中では一番の古株である。
「ナナリ、へまして他に迷惑かけてないわよね」
リオよりも少しだけ背が高く、つり目の女性がナナリに近づき挑発的な視線を向ける。
彼女の名はやよい、女性メンバーの中では最後に加わっており、その前はナナリ達と壮絶な死闘を繰り広げてきた過去を持つ。現在でも女性人の中では最も好戦的でもある。
「とーるさん、怪我とかはしてないですよね」
とーるの傍に2人よりも背が高く、綺麗な女性が近づいてきた。
彼女の名はエリス。やよい同様に当初はとーる達と対立していた過去を持つ。
女性メンバーの中では一番年上であり、考え方も大人びてるところがある。
リオとやよいにとっても姉的存在に位置している。

「正直、テロ組織というのは潰しても次が現れるからきっついわー」
とーるは苦笑いをしつつもエリスからタオルを受け取った。
「ナナリ、これで幾つ目だ」
フリュ―ベルがライフルを磨きながらナナリを見る。
ナナリはPCを起動し手早くキーボードをたたき始める。
「これで8つ目ですね」
「一体どれだけあるのよ」
ナナリの返答にやよいが溜息をつく。
「現時点で把握してる拠点は全て潰した訳だが倍以上よ覚悟した方がいいか」
フリューベルの言葉に残りの5人は黙っていたが考えは同じだった。
「とりあえず、引き上げた方がいいわ」
リオは荷物を車に乗せ車に乗り込む。
「確かに、ナナリだしてくれ」
「皆振り落とされないように気をつけてくださいね」
全員が乗ったのを確認してフリューベルが合図を出しナナリはアクセル全開で踏み込む。
車の前身が浮かびあがりながら急発進する。
フリューベルが天井の窓を開けて身を乗り出しつつ背後に向かってスナイパーライフルを構える。
とーるとやよいがドアの窓からハンドガンを突き出す。
リオとエリスはPCを起動し物凄い勢いでキーボードをたたき始める。
「追手の反応検出。兄さん南西1300m上空です」
リオの声にフリューベルは即座に南西方向に照準を合わせる。上空は雲で何も見えなかった。
しかしわずかに雲から光が漏れたのをフリューベルは見逃さなかった。
そして、弾丸は放たれた。弾丸は雲の中に吸い込まれていった。
ドーーーーーーーーン
雲に覆われていても分かるくらい爆発の閃光が見えた。
「とーるさん、やよいさん300m先の地中に熱源・・・地雷です。とーるさん側に4つ、やよいさん側に3つです」
とーるとやよいは地面を睨み付けながら地雷の場所を探る。
そして無言で連射。地雷は車が通過する前にすべて爆散した。
「追手は?」
ナナリが器用にハンドルをきり整備されていない道を全速力でかけぬける。
「追手はなし、・・・無線で別働隊が動き始めました。これでテロリストの拠点は完全に崩壊するわ」
リオの無線機に制圧の報せが入るのとほぼ同時にナナリ達は戦線を離脱した。
「・・・嫌な雲行きだな」
フリューベルは去り際に空を見上げながら呟いた。
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第13話:終幕そして新たなる物語へ

戦況は互角であった。
数で圧倒する魔物の群に対して個々の戦力で圧倒しているリン達の激突は凄まじいの一言だった。
転生者としての力を解放されたリンはスナイパー、アルはチェイサー、サクラはパラディンとしての力を全力でふるう。3人はお互いの攻撃範囲を理解し互いに連携しながら魔物を蹴散らしていく。だがそれでも親玉であるダークイリュージョンは次々と魔物を召還し数押し切ろうとする。
一進一退の攻防が続く。
「次から次へと」
アルは舌打ちをしながらも目の前に迫ってきた魔物レイスを一刀の下に切り伏せる。そのまま次の敵に視線を向けた時、敵の頭上から火球が勢いよく叩きつけられた。
「苦戦してるわね、助けは必要?」
声の主はリアだった。これだけの魔物を前に怖気づくどころか前線にまで出てきたのだ。
「いらない」
アルは素っ気無い声で拒否を告げた。この行動にリアは言葉を詰まらせた。
まさか即答で返されるとは思っていなかった。しかもそれが拒絶であるのだ。
「あーそうですかー、3人の中で一番冷静な人だと思ったけどただの残念さんでしたかー」
ピシッ
なにかがひび割れるような音がした。
「誰が残念さんだって」
「聞き返す時点で理解してるよね。それとも頭悪いの?」
お互いに睨み合い威圧しあう。しかし魔物達にとって止める必要も無くリアも敵と認識したのか二人に襲い掛かってきた。
「邪魔を」
「するなーーー」
アルとリアは矛先を再度魔物達に向け怒りという力も上乗せしたたきつけた。
魔物達にとってみれば理不尽このうえないであろう。
「あーあー、派手にやっちまってるなー」
ビットは苦笑いをしながらサクラの方へ向かった。
「あらビットさんどうしました」
サクラはビットが近づいてくるのを気配で察知し、魔物達を切り伏せながら話しかけてきた。
「ここはお互いに共闘したほうが利があるだろ」
ビットは槍を構え笑って見せた。魔物の群れをみても尚戦う意思があるのは大したものだとサクラは思った。
「分かりました、お願いしますね」
サクラの返事に応じるようにビットは魔物の群れに向かって走りこんだ。

「っ!ハッ」
リンは指の間に矢を挟みこむようにし、高速で弦に番え放ち続ける。一度に最大4連続で射撃を行うことで一射一射のタイムロスを潰していく。
魔物に近づかれながらも冷静に距離を保つ為にたえず移動する。
リンが矢を番え放とうとした時に射線上に人が現れた。
「セイッ」
その者は容赦なく手にした短剣を振りぬき魔物を一刀両断した。
(ハイディング・・・あきらか)
リンは瞬時にその者があきらである事を理解し照準を奥にいる魔物に合わせる。
状況が変わったことによりリンは即座に矢を挟み込む持ち方から通常時の持ち方に切り替え目一杯矢を引き絞る。
弦からギリギリっと音がした次の瞬間矢は放たれた。
〈シャープシューティング〉
放たれた矢はあまりの速さに、標的の魔物に直撃すると同時に周囲へ衝撃波を巻き起こした。
直撃した魔物は絶命し周囲にいた魔物達もかなりの被害をうけ後退しようとした。
しかし、そこに問答無用といわんばかりに全力でかけこんできたあきらが魔物達を蹂躙していく。
あきらが突撃したのを確認してリンは矢を番えながら前進した。
「サクラ、アルさん今が好機だ」
「はい!!」
「その言葉待ってたよ」
サクラとアルは返事をするとお互いに最大火力の魔法とスキルを叩き込む。
<シールドチェーン>
<サプライズアタック>
「ビット!リア!」
同じくあきらの声にビットとリアが追撃を掛ける。
「まかせろーーー」
<マグナムブレイク>
「オッケー」
<サンダーストーム>
6人は知らず知らずの内に噛み合った連携をとり魔物が増える速度以上の速度で撃退していく。
「ほー、これほどか」
6人の実力目の当たりにして黒騎士の男はつぶやく。
そしておもむろに男は腰に下げた大剣を引き抜いた。
「だがここであやつを葬らねば計画に支障がでる」
男はそのまま大剣を真横に振りぬいた。
剣の先から衝撃波が生まれリンを襲う。
「!!」
魔物と対峙していたリンにとって完全な不意打ちだった。
「リンさん!」
<ディボーション>
サクラの焦り声と共にリンとの間に光の線が現れる。
「っ」
リンに直撃した衝撃波はリンではなくサクラを傷つけた。
サクラの腕や足から血が噴出した。
「サクラーーー、こんのやろー」
アルが周囲の魔物蹴散らしサクラの元に向かって走ろうとする。
しかし
「周りをみえなくなるとは未熟な」
いきなり目の前に男が現れる。
「しまっ」
男の大剣を短剣で受け止めるが、受け止めきれずそのまま後方に吹き飛ばされ地面に叩きつけられる。
「がはっ」
アルは苦痛に顔をゆがめて立ち上がれない。
<ウィンドウォーク>
風の力を纏いリンが男の前に立ちはだかる。
「フィー」
リンの呼び声にシルフィーゼがリンを襲おうとする魔物達に向かって空から突進する。
全力で弓を引き絞り男に向かって矢を放つ。
「ぬう」
男は剣で矢を受け止めるがかなり威力があるのか後ろに吹き飛ばされ後退する。
「さすがだな、だがお前がここにいていいのか」
男の言葉は今の現状を的確に示していた。
サクラが倒れ、アルも戦えるとはいえかなりのダメージを受けている。
残る3人も善戦してるとはいえ、数の多さに少しずつ押され始めている。
だがリンがここで男を食い止めない事には反撃すらできなくなってしまう。
リンは無言で男に矢を放つ、男の方も無言でこれを打ち落としつつリンに接近しようとする。
しかしリンの素早い動きがそれを許さない。ゆえに膠着した状態が続く。


「だぁぁぁ」
ビットがサクラを庇うように立ち魔物を切り伏せる。
サクラがいることで成り立っていた連携が失われても、ビットは孤軍奮闘していた。
「こんな・・・」
ビットは血まみれになりながらも魔物の群れに向かって一歩踏み込む。
「こんなとこで・・・」
ビットは槍を振り回しながらもさらにまた一歩踏み込む。
「死んでたまるかーーーー」

「ちっ」
あきらは器用に魔物達の振りかざす攻撃を避けながら切り伏せていく。
「くっ」
突如あきらの体がぶらつく。時折避け切れずダメージが蓄積したっているのが厳しくなってきたのだ。
だがあきらは気合だけで耐え、目の前の魔物に向かって走る。
「まだまだーーーーーー」

「邪魔ー」
魔物群れを高速詠唱で生み出した火球で焼き払う。
火系の魔法は不死の魔物達に相性が良い為近づかれる前に焼き払うことができているがそれでも数に押され移動しながらの戦いを強いられている。
リアとしてはビットへの加勢をしたいのだがそれができずもどかしかった。
「もっと、もっと力があれば」
リアは両手を合わせるようにし火球を作り出す。
(もっと、もっと力が欲しい)
突如リアの手から火球が消えた。
「え!!」
この事態にリアは動揺してしまった。
(もしかして詠唱に失敗した!)
目の前には魔物が迫っていた。慌てて再度火球を作り出そうとするが間に合わない。
「くっ」
リアは目の前にせまる魔物の攻撃に恐怖を覚え目を瞑る。
しかしくるであろう衝撃がこない。かわりに
ズドーン
大きな音が聞こえた。恐る恐る目を開くと目の前に強大な隕石が降り注いでいた。
「これは・・・」
目の前の光景に呆然とする。
降り注ぐ隕石に魔物達はなす術もなく蹴散らされていく。
メテオストーム・・・マジシャンであるリアの上位に存在するウィザードが使用できる魔法である。

「ぎりぎり間に合いましたね」
リアが振り向くと先ほどまで誰もいなかった場所から声が聞こえた。
「あなたは?」
「そんなことより今はあちらをどうにかすることが先ですね」
姿が消えたと思うとアルの前に現れる。
「アルさんにしては油断しましたね」
「すまねぇ、小雨助かったわ」
小雨のヒールによって持ち直したアルが立ち上がる。
「リンの援護にいってくる」
アルはそのままリンの元へと駆け出す。
「サクラの元にはあの人がいってますね」
小雨は両手を頭上に掲げ上空を見上げた。
小雨を覆うように光の柱が上空へと伸びていくと、続いてビット、あきら、リンを覆うように光の柱が降り注いだ。
「これは」
突如の出来事にビットは動きを止めた。
『少しの間だけ力を貸してあげましょう』
空から声が聞こえると同時に今までにない力が3人の中からあふれ出してきた。
「これは」
あきらは自分の両手をまじまじと見る。
そこには先ほどまで握っていた短剣ではなくカタールが握られていた。
そのカタールは爆炎のカタールといわれ武器自体に火属性の効果が付随し斬る物全てを焼き尽くすといわれている。
迫り来る魔物に一振りすると驚くくらい簡単に消滅させることができた。
「そういうことか・・・なら」
あきらは状況を理解し今果たすべき事に全力を注ぐ。
迫り来る魔物の群れに突撃し問答無用で斬りかかる。
<ソニックブロー>
カタールから繰り出される高速の8連撃に成す術もなく魔物は蹴散らされていく。

同じくしてリアも理解する。
先ほど発生したメテオストームは偶然にも自分が放ったものであると。
そして今まで以上に充実した魔力、間違いなく彼女は今ウィザードの力を行使できるのだ。
(それなら)
リアはとある魔法を行使する為に詠唱を始める。
自然と頭の中に浮かぶ言葉を紡いだ詠唱は熟練のウィザード顔負けの速度で詠唱が完成する。
<ストームガスト>
強烈な吹雪がリアの正面に発生し、迫り来る魔物達を引き裂く。
あまりにも強烈な吹雪は目の前にいた魔物達全てをズタズタに引き裂いた結果周辺の地形まで変形させていた。

「体が軽い」
ビットは戦場を一気に駆けるける。
魔物はビットを追いかけるように転進する。しかしビットはそれすらも無視し魔物の群れの中央に飛び込む。
ビットを囲む魔物の数はおよそ50。
ビットは中央まで潜りこむと今まで来た方に振り向く。そして
<ボウリングバッシュ>
目の前にきていた魔物を持っている槍を全力でたたきつけた。
魔物は吹き飛ばされ後続を巻き込む。ビットは後続を巻き込んだ事を確認し更に止めといわんばかりに跳躍した。
「はぁぁぁ」
<ブランディッシュスピア>
振りぬかれた槍は衝撃波を巻き起こし魔物を飲み込む。
追いかけてきた全ての魔物を巻き込み強烈な爆発を起こした。
「次ーーー!!」

3人の活躍によって押されかけていた均衡がみてえされた。
「さて、これで形勢逆転だ」
アルは黒騎士を見て宣告する。
「確かに、これ以上は厳いだろうな」
黒騎士は焦る様子はなかった。リンは黒騎士の態度に違和感を感じた。
(こいつの狙いは結局何なんだ)
黒騎士の目的がただの襲撃だけだったのだろうか?
疑問はあるがそれでも今目の前の黒騎士を追い詰めたのも確かだ。
「今回はこの辺で退場するとしよう」
「そんなことが許されると」
黒騎士の言葉にアルが即座に反応し飛び込む。
しかしアルの短剣は黒騎士にあたることなく空を斬る。
「ちっ」
アルは舌打ちをして少しはなれた場所を見る。
「不用意だな」
黒騎士の言葉にリンは気づいた。
(しまった!!!)
リンは手にしていた弓を投げ捨てて一目散に走り出した。
「シルフィーゼ、あいつらを守れー」
リンの声にシルフィーゼが飛び立つ。
「サクラ!ビットを頼む」
ほぼ同時にあきら、ビット、リアの3人の足元に魔方陣が浮かび上がる。
「なっ!これは」
ビットは魔方陣から離れようとするが魔方陣はビットの足元から離れようとしなかった。
「くっ」
魔方陣自体の効果が分からない現状、捕まるわけにはいかない。
ビットの中で焦りが募る。
「ビットさん飛んでください」
突如声が聞こえた。足元に気が向いていたビットからしてみれば不意であった。
しかしビットは素直にその言葉に従い飛び上がる。
「やぁぁぁぁぁ」
やや遅れてビットの足元にある魔方陣に剣が突き刺さる。
魔方陣は剣を突き刺された場所を中心から薄れていきやがて消滅した。
「ビット大丈夫か!!」
ビットの元にあきらが駆け寄る。
「ああ、間一髪サクラさんが助けてくれた。そっちは?」
「こっちは奴の鷹に助けられた」
あきらの頭上を旋回している鷹を見上げた。
「・・・リアはどうした?」
「おいおいおい」
ビットとあきらは顔見合わせた。
「くっ!このままだと間に合わない」
リアの足元の魔方陣が完成しかけているのが見えた。
今から魔方陣を解除するのはほぼ無理だろう。
「手を出せ」
リンは叫ぶ。リアは振り向きながら手を伸ばす。
リンはリアの手を握ると勢いよく引いた。
リアを魔方陣から引きずりだすとリンはリアを抱えながら地面を転がった。
ほぼ同時に魔方陣が完成し地面から火柱が巻き起こった。
あの火柱に巻き込まれれば助かりはしなかっただろう。
もしそうなっていたらと考えるとリアはぞっとした。
「リアーー大丈夫か」
ビットの声にリアは我に返り立ち上がりながら振り向いた。
「ええ、私は大丈夫。この人が助けてくれたか・・・」
リアはリンを見下ろして何かに気づき驚きの表情をしていた。
今のリンは、いつも被っている帽子がなかった。火柱に巻き込まれてしまったのだろう。
そしてその素顔にリアは目を見開いた。
「にい・・・さ・・・ま?」
「え!!」
リアの言葉にビットは理解が追いつかなかった。
「ちがう。俺はお前の兄ではない」
リンは冷たく言い放つと立ち上がった。
「リンさん大丈夫ですか?」
「ああ、ギリギリだったが何とかなった」
駆け寄ってきたサクラにリンは振り返って答えた。
「やつは?」
「すまん、取り逃がした」
アルが申し訳なさそうな顔で歩いてくる。
「あらかじめ仕掛けていたんだろう。やられたな」
「多分そうでしょうね」
声がしたほうを見ると小雨ともう一人神官服の男性が現れた。
「それより、魔物達はどうなりました?」
サクラが周囲を見回すがダークロードはおろか魔物の気配が消えいてた。
「ああ、あれかとりあえず片付けといた」
さらっと答えた内容に小雨を除いた6人はあっけに取られた。
リン、アル、サクラの3人はまたかといった顔をしていた。
あきら、ビット、リアの3人は軽々しく言い放たれた言葉を理解することに時間を要した。
「それでこれからどうするの?」
小雨は6人を見た。ようは残った2チームで試合再開をするのかと聞いているのだ。
「いや、流石にこれ以上は厳しい。こちらはリタイアだな」
同時にリンは地面に仰向けになって倒れた。
「俺も同じく限界だ。これ以上は勘弁願いたい」
あきらもどうやら限界だったらしくリンの横に座り込む。
「ここは引いた方がいいだろう」
アルは周りを一度見渡してから小雨に向かって話しかける。
小雨もその言葉に概ね同意のようで無言で頷いた。
小雨は手をかざし小さく呟くと光の柱浮かび上がった。
「では私たちはここを去りましょう。優勝はお譲りします。あくまで私たちはあの者を追いかけてきただけで目的は達成できませんでした。これ以上ここにいる理由はありません」
サクラが光の柱に入り姿を消す。
「まぁ色々と面倒だろうが後始末は頼むわ」
アルは振り向きざまに、にやっと笑った。あきら達がその笑いの意味に気がつくのはもう少し後の話だった。
リンは起き上がると何も言わず光の柱に入ろうとする。
「まて!」
あきらは起き上がりリンを呼び止める。その言葉にリンは足を止める。
「今は無理だが。絶対においついてやるからな」
あきらの言葉にビットとリアもリンへと視線を向ける。
リンはフッと笑うと手を上げながら光の柱へと入っていった。最後に後から来た小雨達が光の柱に入ると柱は消えていった。

・・・

大会から1ヶ月がたった。決勝は結局正体不明の何者かが参加者を襲ったという事だけが分かりそれ以外の事は一切情報が開示されなかった。
また、混乱の状態の中アカデミーからの参加者であるビット達が何者かを追い払った事は公になっていた。
その結果、アカデミー初の優勝者として扱われることになった。
しかしビット達はそのことについてはあまり納得していなかった。
それは、参加者の名簿で1つのチームだけ名前が分からなくなっている者がいた。リンを筆頭とした3人はあの大会のメンバーに参加はおろか存在すらしていない事になっていた。
その3人がいなかったら全滅していたのは間違いないだろう。ゆえにビット達はいつか彼らに追いつこうと鍛錬に励むのだった。

そして・・・

「それじゃ今日も一日気合をいれていくかー」
ビットは力強く槍を握りしめた。
「結局あなたは卒業しても相変わらずよね」
リアは半分呆れた感じでビットの横につく。
「はやくあいつらに追いつきたいからな。一日たりとも無駄にしたくないんだよ」
「そうね」
ビットの返事にリアも頷いた。
そう今日彼らはアカデミーを卒業する。大会で優勝したことで実力も実績も十分と判断されての特例だった。
ビットとあきらが入学してから約半年だった。
この速さは過去の事例と比較しても最短の卒業者と同レベルとなる。これだけの優秀なアカデミー生に各ギルドや宮廷からのスカウトもあったが彼らは全て断った。
リアも城に戻ってくるように使者が来たがそれを無理矢理断りビットに同行する事を選んだ。
2人がアカデミーの転移門の前までくるとそこにはあきらがいた。
「行くぞ」
あきらの言葉に2人は頷くとほぼ同時に転移門が起動した。
3人が転移門に踏み込むと光の柱が3人を包み込んだ。

彼らの冒険はこれから始まる。
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