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REQUIEM館

第27話:揺るぎない決意と絆

とーる達4人は旧繁華街での防衛に成功し一時レーベルへ戻ってきた。
「お、帰ってきたみたいだな」
街の中央に位置する噴水広場を通り過ぎようとしたとこで聞き覚えのある声が聞こえた。
「セツさん、とりあえず防衛はできたみたいです」
とーるが現状の報告をすると、セツはうなずいた。
「こっちにも報告は届いた。まさか執行者が5人も現れるとは予想外だった。がとりあえず全部追い返すもできたしよしとしよう」
セツは少し困惑した表情をした。
「5人?ということはそっちにも出たのか?」
ナナリは今の会話で気になった部分があった。ナナリ達4人が遭遇した執行者は、やよい、イージス、ジンの3人である。残りの2人が誰なのか知らなかった。
「ああ、俺とフリュの所に1人ずつ出た。おかげでフリュはおれたちに比べて傷がひどかったがな」
セツは気まずそうに話した。
「ベル兄さんに何があったの?」
セツの言葉にリオが敏感に反応した。
「ああ、一応既に治りかけだから大丈夫だ。相手は執行者No2漆黒。半年前まではNo1に位置した危険人物がフリュの前に出てきたが何とか撃退したらしい」
「前に聞いたことがある。ベルがアビッサルにいた頃、疾風に唯一対抗できた存在それが漆黒。その強さは不明。その理由が漆黒を前にして生きて帰ったものがいないといわれている」
ナナリは前にフリューベルが話したことを思い出していた。
「その漆黒だ。まぁフリュが一早く気づいて部隊を撤退させたおかげで負傷者がフリュ1人だったのは幸いだし、優秀な部下がフリュについていたからフリュも助かった訳だから最悪の事態は免れたさ」
セツが視線をとーる達から横に逸らしてある人物を見た。そこには茶髪の小柄な青年が街の子供にじゃれつかれてる姿があった。
「彼は?」
エリスが青年を見ながらセツに聞いた。
「あいつは、アイリスと言ってなフリュの部隊の副隊長を務めているんだ。見た目は幼いが腕は一級品だ。何せフリュ直々に鍛えこまれてるからな。流纏の次期継承者とも言われているぐらいだぞ」
4人はセツの言葉が微妙に信じられなかった。
目の前にいる青年は、武装した姿ではあるがその顔のあどけなさから強さといったオーラが全く見えないのだ。
「おーい、アイリスちょっとこっち来てくれんか」
セツがアイリスを呼ぶと子供たちが離れたのでアイリスがセツの前まで走ってきた。
「何かご用でしょうかセツさん」
アイリスは丁寧な動きでセツの前に立った。
「相変わらずまじめだな。まぁいい、アイリスこっちにいる4人の事は知っているよな」
「はい、私の師であるフリュさんの友人ですよね」
アイリスは振り向くと一礼をした。
「初めまして、アイリスと申します。一応これでもフリュさんが指揮する部隊の副隊長をさせて頂いてます」
アイリスの笑顔に4人は戸惑った。どう探っても彼の強さがいまいち掴めないのだ。
(少し試してみるか)
ナナリは袖に備えていた針をアイリスには見えない位置で持つと少しばかし殺気を飛ばした。
とーるとリオも何らかのアクションをとったのか強い視線を送っていた。
「とりあえず今回は顔合わせだけだ。アイリスもう戻っていいぞ」
セツは3人の行動を流してアイリスに話しかけた。
「わかりました。それではまた後で報告を出しに行きますのでお願いしますね」
アイリスはセツ達に背中を向けると子供たちの方に向って歩いて行った。
「あ、そうそう」
アイリスが足を止めて一度こちらに向いた。
「あまり殺気飛ばさないでくださいね。エリスさん以外が殺気だっているので少し気になっちゃいました。物騒なものまで持ってるし今度からはやめてくださいね」
アイリスは先ほどと変わらない笑顔でナナリ達を見たがそこには反論を受け付けぬ雰囲気が出ていた。先ほどの笑顔とは大違いだ。
「悪いな、今度からはしないからよろしくな」
ナナリは努めて冷静に返した。
「こちらこそよろしくお願いします」
アイリスは言い終わると背を向け子供たちがいる場所まで走って行った。
「さすがに面くらっているようだな。俺も最初同じような反応をしたからわかるな」
セツは面白そうにナナリ達を見た。
「いやー参った。背筋がひやりとしたー」
とーるは苦笑いを浮かべていた。
「確かにベル兄さんの後継者に選ばれるわけね」
リオもとーると同じく苦笑いを浮かべていた。
「それよりベルのとこに案内してくれないか」


「ふっ、はあっ」
剣が振り下ろされるぎりぎりでフリューベルは一歩前へ踏み出す。
「甘いぞ、もっと鋭く踏み込め」
フリューベルは目の前の青年を突き飛ばした。
「狙いは悪くない。だが行動に移すまでの迷いがある。自信もって踏み込め」
フリューベルの言葉が室内をこだまする。
「はいっ」
青年は勢いよく立ちあがるとフリューベルに向かって斬りかかった。

「っと、いたいた。おおやってるなー」
セツが室内に入ってくるがフリューベルと青年は一瞥すると変わらず打ち合いを続けた。
「怪我はもう大丈夫みたいですね」
エリスはフリューベルをよく見てから言った。
「だな、というか彼は誰だ」
「うーんベルさんの弟子?」
ナナリととーるは首を傾げながら青年を見た。先ほど見たアイリスと同い年くらいに見える。
「ああ、そうだないい機会だし紹介しとくか」
セツは何だかうれしそうにフリューベルのほうを向いた。
「フリュ、ちと稽古やめてこっち来てくれ」
フリューベルは青年に一声かけると青年はこちらに走ってきた。その後ろをフリューベルはゆっくりと歩いてきた。
「何ですか師匠」
「ん?ああ、紹介しよう。俺の部隊の副隊長のレオンだ。アイリスがフリュの弟子でレオンはおれの弟子だ。2人ともかなりの素質でな、見惚れた俺達がそれぞれ弟子に取ったのさ」
セツは少し照れながらレオンの頭に手を置いた。
「師匠、まだ子供扱いですか。これでも立派に大人と言える年ですよ」
レオンは抗議の声をあげるがまんざらでもない表情をしていた。
「2人とも今のまま行けば十分おれたちを越えれるさ」
フリューベルがセツの横に立つと少しだけ笑顔を浮かべた。
しかし、そんな表情を見て複雑な気分になっている者が2人いた。
「なんだか、怖い顔されてる方がいるのですが・・・」
レオンもそれに気づき一歩後ずさる。
レオンの視線の先にはとーるとリオがいた。
(はっはーん。なーるほどね)
一瞬で理解したセツはナナリの耳元で話しかけた。
「あの2人、前までフリュにべったりだったろ?」
「否定はしない。2人とも相当気になっているようだな」
ナナリもセツの言いたいことにすぐ気付いていた。
とーるは元々フリューベルの弟子であり、縮地を彼から学び集団戦闘の指揮も彼から直に学んでいた。記憶をなくしたとはいえ自分以外に弟子をもたれることはあまり楽しい話ではなかった。
リオも同じであり、更にはその笑みが自分に向けられてないことに苛立ちを覚えていた。
「怪我のほうは大丈夫か?」
セツはナナリから離れつつ視線をフリューベルに移した。
「おかげさまでね。漆黒の方が重傷だろうし、とりあえず完全に治ったら押し切りに入った方がいいと思う」
セツは頷き、ナナリ達をみた。
「聞いた通り、フリュが完全復帰次第アビッサルの拠点を攻撃する。成功すれば当分の間、こちらに手を出せなくなるはずだ」
セツは壁に貼ってある地図の前に立つと旧繁華街の先にある軍事要塞を指した。
「日程はまた後で説明するが各自準備を怠らないようにしてくれ」
「ちょっといいか?」
口を挟むようにナナリが割り込んだ。
「どした?」
「一つ頼みがある。多分そこにはやよいがいる。今度こそ決着をつけたいんだ。それであの子に会ったら私に行かせてくれないか」
ナナリの言葉にフリューベルが反応した。
「もし殺すことになっても、その手でできるのか?」
「それだけは避けたいが、最悪その覚悟はできている。あの子は可哀そうな子だ。だからせめてもう一度だけチャンスがほしい」
ナナリは真直ぐにフリューベルを見た。そこには決意をした確固たる意志が宿っていた。
「わかった、セツ俺からも頼む。それと彼女のからくりが報告から読めた。その説明も後でする。それを聞けばナナリが適任だと思う」
セツが驚きの顔をしていた。
「まさかフリュが人の肩を持つとはな。意外だったぞ」
セツはそう言うとナナリの肩に手を置いた。
「貸し一だ。絶対に後悔はするなよ」
セツはナナリの方から手を離すとそのまま室内をあとにした。

「さて、レオン稽古に戻るか」
「はい、お願いします」
フリューベルとレオンはもといた場所に戻り打ち合いを始めた。
それを見ていたとーるがナナリの横に立った。
「記憶は失っても、どうやらおれたちの絆は変わないな」
とーるとナナリはフリューベルから視線を外し、リオとエリスを見た。
「全てにけりをつけよう、3人とも私に力を貸してくれ」
ナナリの言葉に3人は強くうなずいた。

短期間ではあったが、激しい衝突が続いたこの戦いも終焉を迎えようとしていた。
終焉の先にあるのは希望か、それとも絶望か・・・その先を知る者は誰もいない。
しかし、それを信じてひたすら突き進む者が自ずと答えを導き出すであろう。
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第26話:渦中

瞬時に互いの場所が入れ替わる間に2人の牽制が数度交差する。
ナナリはやよいの、動きを見きっていた。これまでのやよいと何度も激突してきた中でやよい自身もし成長しているが、ナナリはそれを抜く勢いで腕を上げてきた。
(あと数回で決まる)
ナナリはやよいの動きを見極めつつベレッタを撃つ。その弾はやよいを狙うのではなくやよいの持っている武器を吹き飛ばしていた。
どうやらナナリはやよいの武装を剥がすつもりのようだ。
「馬鹿にして」
やよいはナナリの動きが自分を狙っていないことに気づいていた。いながらも抵抗できないもどかしさを感じていた。
「本気で来なさいよ」
やよいはナナリに向かって突進しベレッタを直接撃ちこもうとした。
ナナリは冷静に前へ踏み込みベレッタの軌道から逃れつつやよいの右手をはたいた。
床の上にベレッタが転がる音がした。
「ここまでだ、おとなしく捕まってくれないか」
ナナリはやよいの頭にベレッタを押し付けた。撃つ気はないが牽制の意味で突きつけた。
「やよい、私がした事は許されることではない。今まで何度も悔いてきた」
ナナリはやよいを見ながら話すがやよいはナナリを見ようとはしなかった。
「今からやり直すことはできないか。あの頃の私達の関係に戻れないのか」
ナナリの言葉にやよいがぴくりと反応した。
「戻れるわけないじゃない、私はいろいろな物を捨ててこの場にいるんだから」
やよいの肩が震えていた。
「ナナリ、私がなぜ殲滅の堕天使って呼べれているかわかる?」
やよいの声が変わった今までのような憎しみの声ではない。だが何か心の奥から響く暗い声だった。
ナナリの背筋から冷や汗が流れる。ナナリは警戒しつつも今の状態を維持した。
「ふふっ、久々に出てこれたわ」
やよいの顔は先ほどまでの悲痛なものではなく笑みを浮かべていた。
ナナリは瞬時に危険と察知しやよいから離れた。直後神速の勢いで振り下ろされた刀が空を切った。
「避けられてしまったか」
やよいは残念そうに立ち上がる。
(人格がいれかわった?)
ナナリは冷静にやよいを観察するが何も読み取れなかった。
「ナナリ、いいの?そんな短銃では私は捉えられないよ」
やよいは即座にナナリの前に現れる。
ナナリはやよいの刀の軌道を読み横から襲い来る刀をしゃがみながらかわす。
しかしやよいはそれは予想済みで刀を振った反動を利用して回し蹴り放った。蹴りはナナリの肩に当たりナナリを壁まで吹き飛ばした。
「ストラーイク」
やよいは楽しそうな声をあげてナナリが吹き飛んだ方を見た。
ナナリは壁に打ちつけられる手前でふんばり急停止した。
(まずいな、油断したとはいえまさか飛ばれるとは)
ナナリは立ち上がるとふとある場所に視線を送った。
「どこ見てるのかな。相手はこっちよ」
やよいが周囲の机などを使いジグザグ移動しながら間合いに入り込んできた。
ナナリはベレッタをやよいに向けて数発撃つとそのベレッタもやよいに投げつけた。
「なに!」
さすがにベレッタ自体を投げつけられるとは予想していなかったのだろう。ベレッタを左手で受け止めるとやよいの動きが失速した。
ナナリはベレッタを投げつけると同時にロッカーを乱暴に開けた。そこから一本の野太刀を取り出し鞘から抜いた。
「へぇ、それがナナリの得物ってわけね」
やよいは珍しそうにナナリの持っている野太刀をみた。戦場で野太刀を使っている人は普通いない。
理由は簡単だ小回りがきかない点と、それなりの身長かつ腕力がいるため使える人間が限定されるのだ。
だがそれ故にやよいはナナリの能力を測りかねているようだ。
ナナリは天の構えでやよいを迎え撃つ姿勢をとる。
やよいは先ほどと同じ勢いでナナリの背後をとった。
「見えてないのであれば、得物をもったところで結果として意味がないわよ」
やよいの声にナナリは反応しなかった。まるで元からやよいを見てないようでもあった。
やよいの振り下ろされる剣はナナリを捉えた。その距離は必中の間合いであり必殺の一撃でもあった。
ナナリは左手を振り下ろされる刀に向かって出した。今の状態だと左手が斬り飛ばされることになる。
「えっ」
しかし、その場にいた時間が凍りついた。刀の先にはナナリの指があった。ナナリの指の手前で刀が止まっていた。
否、刀を指で受け止めていたのだ。
「くっ、離せ」
やよいの顔に初めて焦りの表情が浮かぶ。
ナナリは挟んだ刀をやよいの方に向かって押しこんだ。
やよいは態勢崩しながら後ろに下がった。
「今、私が何をしたかわかるか?」
ナナリは態勢を立て直したやよいを見て言った。
「まさか、この目で見ることになるとは思わなかったわ。無刀取り」
無刀取り、それは刀を失った使い手が相手の刀を奪いとる技である。しかし無刀取りは異常なまでの握力と正確性が問われ。現在では使い手はいないと言われていた。
やよいは冷静にナナリの隙を窺う。
ナナリは刀を構えなおしてやよいを見つめた。
痺れをきらしたやよいはナナリに向かって踏み込んだ。
ナナリはその動きを目では捉えず音と気配で読み取った。
キーン
やよいの刀とナナリの刀が交錯し高周波の音が発生する。
今までのナナリならこれだけでも平衡感覚を失っていたが今は耐えた。
「白氷の如く」
ナナリが呟いた瞬間やよいの刀が飛ばされた。
どうといことはないナナリは野太刀を滑らせつつやよいの懐に潜り込んみ押し上げただけであった。
普通ならやよいの刀が飛ばされることはない、しかしナナリには意味があった。
誰も理解できないであろうその一手が勝敗をわけた。
「おわりだ、俺たちの元にきてもらおう」
ナナリはやよいの首に野太刀を向けた。
「くっ」
やよいはナナリを見上げる。その顔には屈辱による憎悪の感情がむき出しになっていた。
「やよい、動くなよ」
天井から声が聞こえた。
「ちぃっ」
ナナリは野太刀をやよいから離して後ろに飛んだ。
直後目の前に刃物らしきものが空を切った。
「あちゃー、外したか」
おどけた声が聞こえてきた。
「なっ、お前」
ナナリは現れた人物を見て驚いた。
「ベル」
そう目の前にいたのは深紅の髪をした男、フリューベルであった。
「・・・違う、あいつの目は髪と同じ紅だ。お前の目は黒いな」
ナナリは冷静に目の前の人物を看破した。
「へー、冷静だね。ベルだっけ?あんたがいった人物は俺の兄だ。ちなみに俺の名はジンだ」
ジンと名乗った男はナナリを真直ぐ見た。その目に偽りはなかった。
(ベルに兄弟だと。聞いたことがないぞ)
「とりあえず姫さん脱出するぞ」
「ちょっと、自分で立てるわ。離しなさい」
ジンは暴れるやよいを無理やり担ぐと一気に天井へ飛んだ。
「待て」
ナナリはジンを掴もうと手を伸ばすが僅かな距離で空を切った。
「すぐに会うさ。俺は執行者No9疾のジンだ」
それだけ言い残すと。足音が遠のいていった。
「くそっ、また逃がしてしまった」
ナナリはロッカーを殴り俯いた。

「でえええええええええええええええやあああああああああああああああああ」
怒号と同時にとーるは拳を振出した。イージスの拳と衝突する。
あれから数十回の拳の衝突を繰り返していた。普通なら骨が砕けていてもよかった。しかし2人の拳に以上は見られなかった。
「素晴らしい。ここまでの実力者とは」
イージスは歓喜の声を上げていた。もし拳以外の場所に当たっていれば骨や内臓が逝ってもおかしくないこの状況を心底喜んでいた。
「だが、まだ甘い」
イージスはとーるを蹴り飛ばすと距離をとった。
「なんだこないのか、ならばこれで終わりだ」
とーるは神速で一気にイージスの正面へ飛びこもうとした。
「悪いね私は本職はこっちなんで」
イージスが腕を振り上げた。
直後とーるの顔や腕を何かがかすめた。
「いっつ」
とーるはイージスから急いで離れた。
そして後ろを見るとそこには壁にナイフが刺さっていた。
「本職はこれなんでね」
イージスの右手にナイフが握られていた。
「この辺で終わりとさせてもらおうか」
イージスはとーるの背後に回りこみナイフを突き出した。
(こんなとこでくたばってたまるかよ)
とーるはナイフを勢いよく掴んだ。
「馬鹿がこれには毒がぬってあるんだ。もう助からん」
「どうかな」
イージスの言葉を即座にとーるは否定した。
「刃が塵になっただと」
イージスはここにきて初めて喜び以外の表情を浮かべた。
「帯電してるのか」
イージスはとーるの腕を見て言葉を失った。
とーるの腕は先ほどまで覆っていた包帯が消え去りそこからときおり光を発していた。
「人に見せるたのはお前で3人目だ。」
とーるは今までと同じ構えでイージスを見る。
「驚いた。本当に人間なのかね君は」
イージスは微笑を浮かべながらとーるを見た。
「生まれつきでね。今となっては人を殺すことも容易いさ」
「なるほど、雷鳴と言われるのはそういうことか」
イージスはナイフを新たに取り出した。
「これを見たからには死んでもらうぞ」
とーるはイージスとの間合いを詰めていく。
「ふっ、気分が変わったな」
イージスは腕を振り下ろすと即座に窓のガラスを割って飛び降りた。
「なっ待て」
とーるは窓から顔をだそうとした。
が目の前にナイフが飛んできた。
「くっ」
とーるは窓から離れざるおえなかった。
「もっと強くなってこい、私は待っているぞ」
イージスは言い終わると繁華街の出口に向かって走っていった。
「できれば相手にしたくねーよ」
とーるは吐き捨てるように言うと来た道を引き返した。
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第25話:悲しき決意

とーるは店の階段を駆け抜けていた。
「こういった小回りは俺の得意分野だ」
とーるは店内に突入してきた強化兵と交戦していた。

アビッサルはセツの予想通り独立都市を認めなかった。

レイドムがアビッサルと交戦をはじめて1ヶ月が過ぎた。
アビッサルはレイドムと交戦しながらもこちらに進軍してきたのだ。毎度のことながらアビッサルの軍事力には脱帽ものだ。
とーるは店内のテーブルを投げバリケードを作る。強化兵の沈黙の射撃はテーブルの壁により阻まれる。
独立都市レーベルの国境線でもう人が住んでいない旧繁華街をアビッサルは狙って攻めてきたのだ。
その他2カ所でも戦闘がはじまっているがそっちにはセツとフリューベルがそちらの指揮に回ったため多分問題はないだろう。

とーるは片手に持ったDE、P90を背負って繁華街を駆ける。繁華街の迎撃線に参加しているのはとーる、ナナリ、エリス、リオと中規模部隊2つであった。普通なら厳しい戦いになるが通常の戦場と違い障害物が多くあるので守りやすいのだ。
西側の建物をとーる、エリス組が守り、中央を中規模部隊が、そして東側をナナリとリオが守る


「おおおおおおおおおおおおおお」
気合いの入った声が普段は人のいない廃ビルで反響する。

西側のビルは飲食店が入っていたビルが多く障害物の量だけは多かった。
とーるはP90を乱射しながらスカルを撃ち抜く。4年前は苦労した敵でも今となっては彼らの敵ではない。
「エリスそっちいったぞ」
とーるは取り逃がした敵を追撃せずとにかく前へと前進する。
スカルがエリスを見るとエリスに向かって発砲する。
しかしエリスは不敵な笑みを浮かべ手にしたグロックをバースト撃ち、その後素早く半歩程右に動いた。弾はエリスに当たることなく壁にめりこんだ。
スカルが回避しようとうするが足に弾が命中しその場に倒れ込んだ。エリスは冷静にそして感情を殺した冷たい目でスカルをみると頭にグロックを撃ちこんだ。
とーるはすでに上階に移動し交戦しているようだ。
「とりあえずこの辺は終わったみたいね」
エリスはグロックをしまうと周りを見渡した。周囲に立っているものはいなかった。
(それにしても数が少なすぎる気がする)
室内に侵入してきた数は20人と全体の250人と比べれば意外と少なかった。
中央突破を仕掛けてくると考えれば納得がいくがはたして力押しだけでくるとは考えづらかった。
(とにかく、とーるさんとの合流を位置に考えた方がいいわね)
エリスは急いでとーるが上がっていった階段に向かった。

「ふーん、あれが光翼の女神エリスねー」
エリスが上階に消えた後、室内から声がした。


「逃げれると思ったかー」
とーるは速度を落とさず敵との距離を詰めるとP90を容赦なく撃った。
スカルも弾をよけながらDEを撃ってくるが、とーるには当たらない。
「そんな逃げ腰の弾なんざ当たるかよー」
とーるはP90がスカルの足を撃ち抜く。
スカルはバランスを崩し床に打ち付けられた。
「さて、とど・・・誰だあんた」
とーるの視線はスカルの先を見ていた。
とーるの視線の先には神父の姿をした男が立っていた。
「ふむ、年上に対しての礼儀がなっていないようだね」
神父の格好をした男はとーるを見て笑った。
「まずは自己紹介をしておこうか。私の名はイージス、君達の敵と認識してもらっていいだろう」
イージスと名乗った神父は一礼した。何気ない動作だったがとーるは感じ取った。
「あんた、何者だ?その姿からは想像できない存在感といい単なる神父ではないだろ」
とーるはP90を投げ捨て構える。P90の残弾薬から仕留めることができないと悟ったのだ。
「雷光の鉄槌とーる。確かに名に劣らず纏うオーラがすごいな」
イージスは不敵な笑みを浮かべてとーるを見る。その目はまるで獲物を見つけたようであった。
「あんた元神父であって今は違うのだろう。狂信者、いや暗殺者といった方が正しいな?」
イージスの顔から笑みが消えた。
「よく気づいたな。そーだ、私の本職は暗殺だ。そして現在は執行者と言った方がいい」
「執行者?」
とーるはイージスの言葉を繰り返した。
「私は執行者ナンバー5絶対なる審判者イージス」
イージスは仁王立ちでとーるを見る。まるで構えなど不要といったその姿にとーるは戦慄を覚えた。
(やばいな、ベルさん以上かもしれんぞ)
とーるは背中から冷汗が止まらなかった。目の前にいる敵は今まで会った相手のなかでもトップクラスの危険度を誇ると感覚的に悟った。
(下手に出ると瞬殺か)
「考えてる時間はないと思った方」
とーるはイージスの声に気を取られた瞬間イージスの姿が消えた。
「がいいぞ」
終わりの言葉は正面からではなく真横から聞こえた。
とーるは声の聞こえたほうの腕を立てた直後腕に異常な重圧が叩き込まれた。
「ぐっ」
とーるは腰に力を入れて踏ん張りなんとか耐えた。しかしこの状態では次の一撃を回避できない。
「うおらー」
とーるは踏ん張った上半身を捻りイージスのいるであろう場所に拳を振り下ろす。
とーるの拳はイージスにあたった。間違いなく手応えがあった。
しかし胴体ではなくとーるの視線には拳が見えた。
「いい拳だ、受けたのが俺でなければ骨が粉砕されていただろうな」
イージスは楽しそうな声をあげた。
(おいおい、どうしろってんだ)
とーるは悪態をつきつつ距離をとった。
「君がどれほどの実力者か見せてもらうぞ」
2人の因縁関係はここから始まることになる。


西側での戦いが始まってから少し遅れて東側でも戦いが始まっていた。
スカルが部屋に侵入してくるとリオは問答無用でM4をフルオートで狙った。
最初に侵入してきた3人はこの時点で即死であった。リオはリロードを手早く行いスカルとの距離を保ちながら後ろの窓ガラスまで後退した。
リオは2回目のリロードに入る瞬間窓の外に飛び出した。ちなみにここは2階ではあるが通常の建物よでいえば3階に匹敵する高さであった。
スカルはリオが消えた窓に向って走った。窓まで最短の一直線で駆ける。
そのため他の気配には気付かなかった。否気配の消し方がうまかったのだろう。
ガコン

窓の隣にあるロッカーから音がした。よく見るとロッカーの上にある通風口から勢いよくナナリが飛び出してきた。ロッカーの上に着地すると同時に手に持った重火器Paraをばらまいた。
「消えろ」
ナナリは冷たくつぶやくと窓に向かってきたスカル達をハチの巣にした。
ナナリの容赦ない射撃で大半のスカルが吹き飛ばされ二度と起き上がることはなかった。
ナナリはParaの弾を使い切るとロッカーを飛び降りた。
しかしその正面に倒れながらもガリルをこちらに向けて撃とうとしているスカルがいた。
今撃たれればナナリは回避するのが困難だ。
しかしナナリは気にもとめず着地した。スカルにとってこれ程のチャンスはなかった。ならば引き金をひいてしまうしかなかった。
しかしスカルが引き金を引くことはなくその場に崩れ落ちた。
「リオ、ナイスだ」
ナナリの言葉にリオが窓から飛び込んできた。ちなみにリオが飛び出た窓とは別の窓で向きだけでいえば90度違っただろう。
「あの足場不安定で動き辛かったわね」
リオはまるで不良品を手にした時のような不満顔で言った。
「あんな狭い足場を移動できるのはリオくらいだけだろうな」
ナナリは感心の声で言った。どうやらリオは窓の外にある狭い足場をつたって先ほどまで飛び出した窓へ移動したようだ。
「それでこれで全部?」
リオは気配を探りながらナナリに聞いた。
「それっぽいなリオは中央の部隊に合流して指揮をとってくれ。俺はここで敵がまだこないか見張ってる」
リオは一度頷き階段を降りて行った。
「気をつけて」
リオは意味深な言葉と視線を天井に向けた後階段をおりて行った。
「出て来い。そこにいるのは分かっている」
ナナリはリオが送った視線と同じ場所を見た。
しかし反応はなかった。ナナリは腰のベレッタを握ると後ろの壁に撃った。
「気配を消しても無駄だ」
ナナリは視線を変えずただ相手が出てくるのを待った。
「無駄と分かっていても、やらないよりはマシなのよ」
女の声が室内に流れた。
ダン
後ろの通風口を撃ち抜いて女性が飛び降りてきた。
「やはりお前かやよい」
ナナリは冷めた目でやよいを見た。まるで、どうでもいい他人を見るようにやよいを見た。
「絶対に許さない。あんただけは絶対に」
やよいの絶叫が室内を覆う。ナナリはそれを正面から受け止めた。
「許してくれとは言わない。俺を恨んでくれて構わない。だが俺の行く道を阻むのであれば俺はやよい、お前を倒してでも進むことになる」
ナナリの声には揺るがない決意があった。
「そんなことどうでもいいわ、私はあんたを殺せればそれでいいのだから」
やよいの吐き捨てられる言葉をナナリは全て受け止めた。
(やよい、お前の辛さはわからない。もし全てが終わっているならこの場で殺されてもいいと思っただろう)
ナナリは後ろめたさをすべて押しのけベレッタをやよいに向ける。
「もう、私もお前も前の関係には戻れない。ならば決めよう答えは結果でしか出せない」
ナナリはすべてを払拭するように今まで以上に強くいった。
それを見たやよいは、歯を食いしばりながらナナリをにらんだ。
「そうね、私の過去の過ちをここで清算させてもらうわ」
2人は互いを見ていた。この時だけは室内が静かだった。
まるで波うたぬ水面を表すような静けさだった。
そして水面に波紋が生じる時2人は生と死を天秤にかける戦いが始まる。
(後悔はある。だが俺は進み続ける)
ナナリが一歩踏み込むと同時に悲しき死闘が始まった。


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