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REQUIEM館

第37話:時を経て(前編)

無人の廊下をエリスは走っていた。
僅かな気配だが各場所で戦いが始まっていることに気づいた。 エリスは速度をあげた。自分だけ遅れる訳にはいかない。
そう考えると自然に速度をあげていた。
(あれ?)
エリスは何かに気づいたらしく足を止めた。視線の先には周りと変わりない壁があった。
だがエリスは視線の先にある壁がただの壁でないことに気づいていた。
壁を押すと僅かに壁がへこみ、人一人が通れる隙間ができた。
エリスは躊躇いもなくそ隙間へ入って行った。
隙間に入って数秒後に壁が閉じ、暗闇の世界へと変わった。
だが彼女は光を操る者、暗闇程度なら何もしなくても前が見えるのは造作でもない。
前へ進みながら数分歩くと目の前に扉が現れた。
途中トラップ等もあったが怪我はなかった。
エリスはゆっくりと扉を開けると大きな部屋が現れた。
エリスは部屋に入って周囲を見渡す。
「つっ」
エリスの視線の先には大きな絵画があった。
そこに描いてあった物に声を失った。
「これ私?」
エリスそっくりの女と別の女が戦いが描かれていた。
「それは今から20年前にあった壮絶な争い」
エリスの背後から声がした。
「今から40年前この世に双子の姉妹が誕生した。姉の名はリーゼ、妹の名がティア」
エリスは声のする方へ振り返り、絶句した。
「その姉妹には普通ではありえない力を宿していた。そのことを知った民衆は女神が降臨したと喜んだ。そして・・・」
エリスの視線の先には今、背後にいるエリスそっくりの女と戦っている女の姿があった。
「姉妹が二十歳になる少し前に一人の青年と出会い惹かれていった。姉妹は祀られる存在、故に青年と結ばれることは許されなかった。姉妹はそれでいいと想いを胸にしまいこんだ」
女は天井をみあげた。
「しかし、時がたつごとに姉妹の想いは増していった。そしてとうとう姉のリーゼはその想いを青年に打ち明けてしまった。だが青年はそれを断った。何故なら青年は妹のティアに惹かれていたのだ」
エリスはなんとなくではあるが話の展開がよめてきた。
「リーゼはその事を知り、ティアが幸せになれるならそれでもいいと思った。しかしティアは青年の想いを拒絶し続けた。そして時が経つにつれリーゼの中にある感情が芽生えてきた」
女は上げた視線をエリスへ向けた。その目は悲しみに満ちていた。
「それは憎悪という負の感情であった。そしてついにその感情が爆発した。リーゼの持つ力は闇を統べる力だった。しかし溜まった負の感情が闇を制御できなくなりのまれてしまった。それから3年に渡る戦いが始まった。リーゼと真っ向から対抗できるのはティア以外におらず両者ともに命をかけた熾烈な戦いが続いた。最後はリーゼ側の勝利で終わった。しかしその勝利は大きな犠牲を伴ってしまった。女神と呼ばれた姉妹は相討ちという壮絶な最期を迎えた」
話し一息ついて間を開けた。
「初めまして私はリーゼ、今は執行者ナンバー4闇の魔女と呼ばれています。光の女神ティアの子エリス貴方に会えたことをうれしく思います」
エリスは執行者という言葉に反応して即座に剣を抜いた。
「どういうことですか、リーゼさんは死んだとさっき仰ってましたよね。何故生きてるのですか」
エリスの警戒した声を聞いてもリーゼの表情は変わらなかった。
「確かに貴方の言うとおり私は死んでいます。これは残留思念の具現化した姿と考えてもらえればいいです」
リーゼはさも当然といったような口調で話すが、それが本当ならとんでもない話であった。残留思念ががこの世に具現化する技術、能力なんて聞いたこともない。人智を超えた力なのだ。
「私は貴方に会うために、この世にとどまっていました。争うつもりはありません」
「どういうこと」
リーゼの言葉にエリスは動揺していた。
「光ある所に闇あり、闇ある所に光あり。元来、光と闇は2つで1つの存在でした。しかし、時がたち気がつけば私たち姉妹のように別々に管理するようになりその影響力は弱まりました。しかし、闇の力のみを制御することは難しく闇の力は生命力を蝕み自我が崩壊する人もいました。そして私が倒れた今その力は行き場を失って負のエネルギーが増加し決壊しかけています」
リーゼは厳しい表情をしてエリスを見た。
エリスはその圧迫感から後ろに下がりそうになったがなんとかこらえた。
「今現在、この力を受け継げる人はエリス貴方だけです。無茶を承知でお願いです。どうか闇の力を受け継いでもらえないでしょうか」
リーゼの言葉にエリスは理解をするまでに少し時間がかかった。
「ちょっと待って下さい、闇の力はリーゼが制御しているのではないですか?そもそも、私がティアの子という根拠がどこにあるのですか」
エリスの疑問はもっともであった。ただ似てるだけで親子と判断する事はできない。
「根拠ですか、エリス貴方は私を見て何か感じませんでしたか?」
リーゼはエリスをじっと見る。何かを探っているようにもとれた。
「会ったこともないのに懐かしいと感じました」
エリスは素直にその時の状況を話した。
「それは勘違いでもありません、貴方の力すなわち光の力は一世一代で受け継がれます。この時、それまでの記憶や経験を全て受け継ぎます。ただし本人の自我を保つため記憶や経験は必要な時のみ引き出され、普段は本人の記憶の奥深くで眠っています。先ほども言いましたように光は一世一代の継承、ゆえにこの世に一人しか存在しません。ここまで言えば分りますね」
エリスは強いショックを受けた。物ごころついた時には親はいなかった。自分の能力に気づいたのはここ数年のことでとーる達と出会った時点では気付いてもいなかった。
フリューベルが消息を断った時、自分の無力を痛感した時に目覚めた。
それ以降、妙な感覚に襲われることがあった。リーゼとの出会いでも感じた懐かしさや見たことないはずの物に見覚えがあったりしたことがあった。多分だがリーゼの言っていることは真実であろう。
しかしエリスは迷っていた。今のままでもかなり強くなった、執行者とも対等に戦えるだけの力量はあった。しかし能力者としてはまだ半人前、フリューベル、セツクラスが相手だとまず勝てないだろう。
力があれば守れる人も増える。だがそれだけのリスクも背負うことになる。失敗すれば死が待っているのだ。ハイリスクハイリターンすぎるのだ。
「迷ってますね。ではこちも時間がありませんし、一つお伝えしておきましょう。継承を受けないとなると、ここから先には進ませることができません。今の貴方ではこの先、生き残ることはまず無理でしょう。貴方は後の世界の為にも生きていただく必要があります。例え未来に絶望が待っていても貴方にはその義務があります」
リーゼの言葉にエリスの中でなにかがはじけとんだ。
「いい加減にしてください。継承しないと先に進ませないですって、貴方が起こした不始末を私が何故変りに始末しないといけないのですか」
「今のあなたでは私にすら及ばないでしょう。貴方は知らなさすぎるのです」
リーゼの言葉は全てを見てきたようであった。エリスも怒りを抑えて冷静につとめようとしていた。
「確かにその通りです。できることなら私がしています。ですが私は片方しか操れず、しかも既に死んだ身です他にどうしようもないのです」
リーゼの手はきつく握りしめ震えていた。エリスもそれに気づき怒りが冷めていくのがわかった。
「それにエリス、あなたは知るべきです。過去にあった悲劇を知ることで己の進む道を見出すことができるはずです」
リーゼは右手を前に出してエリスを見た。
「この手を取れば全てが分かります。ここで引き返すか、それともこの手をとるかそれとも私と争うか決めなさい」
エリスはリーゼの手を見て迷っていた。
そして次に頭に浮かんだのとーるの後姿であった。その背中には多くの悲しみを背負っているのがわかる。そんな彼の支えになりたいとエリスはいつも思っていた。
今目の前に避けられない悪夢が待っていようと彼なら突き進むであろう。
ならば
エリスはリーゼの手を握った。
「あなたの為ではないは、私は私の為に成すべきことをするわ」
エリスの言葉にリーゼは頷いた。
「それでいいです。貴方はエリス、ティアでもリーゼでもない。これはエリス自身の戦いです」
リーゼとエリスを黒い闇が覆った。
エリスの意識が薄れ何かが聞こえたような気がした。
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