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REQUIEM館

ここを見に来られる皆様へ

新年明けましておめでとうございます。

このREQUIEM館の主、フリューベル・シルフィーゼです。
まず、私みたいな若輩者の小説を読んでいただいて本当にありがとうございます。
去年の夏場あたりから更新速度がめっきりおちていますがそれでもコメントを頂く等応援して頂き本当に有難うございます。
今まで以上に頑張っていい作品をお届けしたいと思っています。

それでは2009年度もよろしくお願いします。
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小説 | コメント:2 | トラックバック:0 |

外伝:風と共に

一人の少年が丘の上の草むらで横になっていた。
「今日は夕方から雨かなー」
雲の動きをぼんやりと見ながら少年はつぶやく。
少年の名はフリューベル、現在彼のいるフェンリルという傭兵集団に所属している。
フリューベルは手を空に向けそのまま横に振ると僅かに風が吹いた。
「このまま寝てしまうか」
そのまま目を閉じ眠りに就こうとする。
「こーーらーーー、また稽古さぼって寝てるし」
突如、丘の少し下の方から声が聞こえた。その声を聞きフリューベルは溜息をついた。
「うるさいなー、折角気持よく寝ようとしてたのに」
起き上がると、声の聞こえた方に視線を向けた。視線の先にはこちらに向かって走ってくる少女と少年の姿が見えた。
「セーツー、エルを止めるようにお願いしたのに何でここに来るんだよー」
フリューベルは下から走ってきた少年に向かって抗議の声を上げた。
「フリュ、そりゃ無理だよー。エルは人の言うことは聞かないし止めたら逆に俺が殺される」
「なんですってー。誰が人の言うこときかないですって」
セツの声にエルが睨みながら抗議をしてきた。セツは苦笑いを浮かべてエルとの距離をあけた。
「セツー、年上なんだからここはびしっと言ってやらないとー」
フリューベルはセツが押しに弱いことをいいことに無茶な事を言いだした。
「フリュ・・・お前が言うな。この中で一番年下のお前が一番態度でかいし」
セツは額を抑え呆れた声でフリューベルを非難した。
「それはあれだ・・・俺とセツの仲だし」
既に退路が塞がれ言い訳が苦しくなってきたのか言ってることが支離滅裂になっていた。
「もう、言い訳はいいから団長のとこ行くよ」
エルはフリューベルの手を掴むと無理やり引っ張り引きずるようにして丘を下りて行った。
「セーツーたーーーすーーけーーてーーーーー」
フリューベルの情けない声にセツは思わず笑ってしまった。
「あれで次期隊長候補とか信じられないよなー」
「セツー、あなたも早く来なさいー」
エルの呼ぶ声に従いセツは駆け足で向かった。

傭兵集団フェンリル
現在の傭兵集団の中でも1,2を争う力を持ち。本気になれば国を滅ぼすとまで言われる程恐れられている。年齢構成はばらばらで団長ソルを筆頭に年配のメンバーはフェンリルと名乗られる前から傭兵稼業をしているエリート集団で大体20~30くらいの年齢にあたる。
そこから下の10代は傭兵志願で傭兵になったものがほとんどだ。
そしてフリューベル達10歳未満の子供たちは身寄りがなく運よくソルに拾われた子供たちで構成されている。フリューベル、セツ、エルの3人は物心ついたころには既にフェンリルの大人たちと一緒に旅をしていた。特にこの3人に関してはソルが実の父親といっても過言ではないだろう。
「団長、連れてきましたー」
エルはソルの前にフリューベルを引っ張り出した。
フリューベルは気まずそうな顔をして視線をソルから外していた。
「ベル、本当に稽古嫌いだな。そんなに嫌か」
ソルは優しくフリューベルに問いかける。フリューベルは不貞腐れた顔でうなずいた。
「だって体術ばっかだし、今日も基礎訓練しかやらないしつまらないもん」
フリューベルの言葉にセツとエルはまた始まったと呆れていた。
ソルはフリューベルの頭に手をおいた。
「確かに基礎訓練は飽きるな。だがそれもお前たちが今後厳しい戦場で生き抜いていくために必要なんだ。分かってくれ」
ソルの説得にフリューベルは渋々頷いた。
「よし、いい子だ。それが終わったら久々に相手してやろうか」
ソルの言葉を聞いてフリューベルの顔つきが変わった。
「マジで!」
「おうマジだ!セツとエルも久々に見てやるから後で来なさい」
「やったー、すっごい久々だよ。こりゃフリュのサボリに感謝だな」
セツはフリューベルとハイタッチをしながら喜んだ。
「団長、すみません。この馬鹿2人もっと注意しておきます」
エルは溜息をつきつつソルに頭を下げた。3人の中で一番大人なのは彼女でいつも2人(特にフリューベル)の無茶を止める事ができる唯一の存在でもあった。
「まぁ気にするな。最近お前たちの事ほったらかしだったしいい機会だ。っとそろそろ時間か訓練いってこい」
「はーい」
「行ってきます」
セツとフリューベルはそのままテントを飛び出し、エルは一度おじぎをして後を追うように走って行った。
「まさか、鬼の団長とまで呼ばれたあなたがここまでの子煩悩だとは誰も思わなかったでしょうね」
3人が出ていくのと入れ替わるように8人の男女が中に入ってきた。
「あの子たちを拾ってもう5年がたったのね」
8人はそれぞれ椅子に座りつつも3人が走って行った方を見ていた。
「それでソル、あの子達を推薦するって言ってたけど本当にいいのね」
「既に私の中で決まってる。後はお前立ち次第だ」


「ふっはっ」
セツは岩が飛び出た急な斜面を流れるようなステップを踏みつつ駆け上がっていく。
セツは今山場での足場の悪いところでのバランス感覚を養う訓練を行っていた。
この訓練にはセツと同い年くらいの少年達が行っている。ふと後ろ見ると少し離れた場所にエルの姿が見えた。エルもセツと同じく息を乱すことなくセツの後ろを走っていた。
そこからかなり離れた所に残りの集団と思わしき影が見えた。
「確かに、俺達についてこれる奴いないから張り合いないんだよなー」
セツは愚痴をはきながらも乱れることのないステップで駆け上がる。
「しょうがないでしょ、私たちは物心ついた頃には既にここの訓練をしていたのに対して彼等はまだ3年がいいところ訓練量に差がありすぎるわ」
エルはセツの愚痴に対して客観的に答える。
3人は少し特殊で物心つく前から少しずつ訓練を行ってきていた。
これは団長ソルの意向であり結果として3人は現部隊のメンバーでも相当の使い手にまでなっていた。
「あれだけ死にかければ嫌でも体が反応するようになるさ」
セツはその頃の訓練を思い出したのか冷や汗を流していた。
「んでフリュは?」
思い出したかのようにエルに尋ねる。
「もう片方の組でしっかり訓練してるわ」
エルは麓の方を一度振り返りった。
「気の毒になー。あいつが本気で訓練してたら訓練指導の人まで巻き込まれるぞー」
セツは本日何度目になるかわからない苦笑いを浮かべた。
「フリュの本気を止めれるのって私たちくらいだと思うわ。・・・ハッ」
エルは会話の途中でセツの足を払おうとしてきた。
「うひゃお」
セツは驚きと悲鳴が混じった声をあげつつも冷静に避けきった。
「今日こそは先に頂上に行かせてもらうわよ」
エルはセツの足を執拗に狙っていた。
「その言葉、何度目だっけ。負けると分かってて挑むんだから無謀だよな~」
セツは意地の悪い顔をしてエルを挑発する。
相手がフリューベルなら適当にあしらわれて終わりだが真面目すぎる彼女はおもいっきり反応した。
「絶対にぬかす」
エルは上ってた時の速度よりも速くセツに接近した。
そこから二人の連打の応酬が始まる。


フリューベルは地平線が見える場所に立っていた。
手には自分の身長と同じくらいのライフルを持っていた。傍から見ればそれは滑稽な姿に見えただろう。
しかしフリューベルの周囲にいた人間は真剣にフリューベルの後ろ姿を見ていた。
「制限時間は30秒、それまでに前にある全ての的を砕くことが今日の実習だ」
フリューベルの真横に立っていた筋肉の引き締まった男が大きな声で話していた。
見た目は27,8くらいだろうかこの男が訓練教官なのだろう。
また他の人を見ても15~20くらいの年齢の男女がいた。その中にフリューベルがいるのだがとてつもなく目立っていた。
「それでは呼ばれたものから訓練を始める。8割以上が合格だ。不合格の者はこの後、特別補強演習にでてもらうからな」
特別補強演習、それはフェンリルの訓練以外に実力の足りない者をとことんなまでに鍛え上げる地獄の演習である。これを1度も受けなかった者はいないと言われている。
「ではカールまずはお前からだ」
「ハイッ」
3時間後
「合格者は20人中3人か・・・お前らこのままだと戦場で死ぬぞ」
不合格の者たちは正座させられ足の上に重さ10kgの重しが乗せられていた。正座した状態だと思死の重さを逃がすことができないためとてつもなく辛い。既に数人がノックアウトしておりその場で倒れていた。
「仕方ないやつらだ。・・・で最後はお前かフリューベル」
「はいよ」
やる気のないように取れる声を上げながらフリューベルは定位置についた。
「ん?お前スナイパーライフルであれ狙うのか。時間的にかなり厳しいぞ」
そうこの訓練他のメンバーはアサルトライフルで行っていたのだが、フリューベルだけはスナイパーライフルで挑もうとしているのだ。
「大丈夫だってなんとかなる」
フリューベルはさっさと始めたいらしくまともに話し合う気もないらしい。
「ったく、不合格なっても知らないからな」
男が手を上げると的が一斉に立ち上がった。
「よっし、始め!」
フリューベルの目つきが変わり獲物を狙う目になっていた。
ダーーンダーーンダーーン
アサルトライフルとは違う独特の音が鳴り響く
ガシャンガシャンガシャン
射撃音に遅れて的が次々と壊れていく。
それも割れるときにはスナイパーライフルの破壊力のせいか的が粉々になっていた。
的は全部で25枚、実はフリューベルの使うライフル装填数に問題があり10発が限界であった。
そのためリロードに時間をとられる。これを30秒間に2回行うのは致命的なタイムロスになる。
しかし
9発目の時点でフリューベルはスナイパーライフルを片手で持ち残った片方の手でリロード用のカートリッジを手にしようとしていた。
そして片手で10発目を撃つと即座に空になったカートリッジを投げ捨て新しいカートリッジを装填した。その間僅か0.4秒
ダーンダーン

フリューベルは何事もなかったかのように次々と的を破壊していく。
「3、2、1、そこまで」
ガシャン
終了の合図と共に最後の的が割れた。
「団長直伝の射撃、見事パーフェクトだ」
ざわざわ
周囲の人間はフリューベルと目を合わせようとせず隣の人と話をしていた。
「ガキのくせに生意気なやつだ」
「俺たちの訓練に混ざってるのは見せつけるためか、えげつないやつだ」
聞こえてくる内容はどれもあまりいい内容ではなかった。
そうフリューベルやセツ、エルは今の10代のメンバーと比べるかけ離れた実力があった。
そのせいで他の者達との仲はあまりよくなかった。
「教官、実習ってこれだけ?なら適当に他の訓練混ざってきます」
フリューベルは少しだけ悲しい顔をしたがすぐにいつもの表情に戻っていた。
「ああ、そうだな。行って来い」
男はフリューベルの質問に少し慌てて答えた。フリューベルは一度頷き後ろを向いて走ろうとした。
「フリューベル、ちょっとまてこっちにこい」
いきなり男はフリューベルを止め呼びつけた。
「なんですかー」
面倒そうな顔をしつつもフリューベルは男の横まで来ていた。
「あんま他の奴らの言ってること気にするなよ。お前たちが強い事は俺たちにとっても心強いからな。気になることがあったらいつでも相談乗るぞ」
男はフリューベルにしか聞こえないように耳元で話しかけた。
フリューベルは一度だけ頷き少しだけ笑って見せた。男はそれに満足したのかフリューベルの背中をたたいた。
「いってこい」
「はーい」
少しだけ元気のある声で返事をし、フリューベルは走っていた。
「さーて合格者はこの後は自由だ訓練するなり休むなりしてくれ、不合格者は・・・くっくっく、お楽しみの地獄の特別訓練だー」
男は楽しそうな声で青年たちの前に立った。
『だ、だれも楽しみにしてねーーーーーーーーーーーーー』
青年たちの悲鳴が広い大地を突き抜けたのはいうまでもあるまい。

「あれ!フリュは終わったのー」
フリューベルは声が聞こえたほうを振り向くとエルがスナイパーライフルを肩に抱えている姿が見えた。
「これから残りの隊の演習にいくんだよ」
フリューベルはエルが来た方を指した。そこは先ほどまでエル達がいた部隊が見えた。
「フリュっていつもはやる気ないのに、こういった時は必要以上にがんばるよね」
エルは呆れた口調で笑って見せた。
「いいだろ、ソルが頑張れば相手してくれるんだから」
フリューベルはエルの言葉に頬を膨らませて見せた。
「それよりエル、セツとの勝負どうだったんだよ」
フリューベルはエルの性格を知っている。セツと同じ組になれば間違いなく勝負を仕掛ける。
「聞かないで」
エルはいやそうな顔をして答えた。
(負けたんだ)
フリューベルはやっぱりと顔をした。
「それより、あっちの隊って射撃訓練でしょ。合格者何人だった?」
エルは既にフリューベルの訓練内容を知っていたようで結果だけが気になっていた。
「俺入れて4人だよ」
フリューベルはエルとすれ違う手前で立ち止まった。
「ならこちらの部隊と合計で10人いっていいとこね」
エルもフリューベルと同じく手前で立ち止まった。
「フリュ何点だった」
「25点満点、時間は30秒ちょうど」
フリューベルは点数以外にタイムまで答えた。これはフリューベルからの挑戦であった。
「そう、なら私はそれを超えて見せるわ」
「やってみればいいさ」
二人はニヤッと笑うと手を打ち合わせた。

2時間後
「よっし、3人とも訓練しっかりとしてきたようだな」
ソルの声に3人は黙ってうなずいた。
「ふむ、成績は・・・ふむセツが一番か、次にエル、フリューベルか。ほぉ3人とも僅差か」
ソルは感心していた。どうやら思ってた結果よりもよかったようだ。
「ならば、約束は守らないとな」
ソルは槍を構えて3人を見つめた。その背中からはどこからでも来い言っていた。
「なら俺から」
フリューベルがソルの槍に対抗するように同じ高さで構える。
ザワザワ
4人よりも更に外側に多くの人の声が聞こえた。そう4人の訓練はフェンリルのメンバーが見てる前で行われていた。4人の実力を特にソルの使う流絶を見るために集まっているのだ。
ソルは現在弟子をとっていない。しかし、流絶、流纏の使い手はフェンリルで別に3人存在する。
それがフリューベル、セツ、エルである。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
フリューベルが気合と共に神速の突きを放ってきた。
(更に速度を上げた)
ソルは軽くそれをいなしながら感心した。
「流纏:風牙疾空」
目では絶対に捉えれない6連突がソルを容赦なく襲う。
「流絶:風塵烈火」
ソルは先ほどまでと違う戦いの目をしていた。そして槍を回転させながら地に叩き付けた。
瞬間フリューベルの6連撃ははじき返された。たった一撃の前に神速の突きが押し返されたのだ。
「ぐあっ」
フリューベルは衝撃でその体を後方へ吹き飛ばされ転がった。
「フリュ!」
エルの声にセツは飛び出した。
「絶纏:絶廻纏滅」
フリューベルと同じく6連突を突き出した。しかしこのままではフリューベルの時と同じく押し返される。
「流絶:風塵烈火」
ソルは同じように6連撃を全てはじいた。
「あめーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
砂塵の中を力強く飛び出してきた。
「むっ」
ソルの表情に驚きが見えた。
ガキン
槍と槍が交差する音がした。
「まさかここまで飛び込んでくるとはやるな」
ソルはうれしそうな声で押し込んでくるセツを見た。
しかし力押しで子供のセツが勝てるわけがなく後ろに下がらされてしまう。
「やーーーーーーー」
セツとは入れ替わりにソルの背後からエルが飛び掛った。
「流絶:空破一陣」
エルの小太刀が風を切り裂きソルの背中を狙う。
ソルは即座に背後の気配に気づき槍を振り出す。
「ぐ」
小太刀と槍が衝突した瞬間ソルの顔に余裕が消えた。
「無力化を狙ってきたか」
空破一陣とは相手の武器破壊もしくは持ち手の手を破壊する一撃である。
一撃自体の殺傷能力は極めて低いが相手の得物を無力化することで戦闘を有利に導く。
「後少し遅ければ龍月槍を落としてたな」
ソルは槍を落とさずしっかりと握り何とか一撃を耐えていた。
槍を思いっきり横に振りエルを投げ飛ばした。
「きゃーーーーー」
エルは勢いよくセツの方へと突っ込んでいった。
「ちっ」
ドスッ
セツはエルをしっかり受け止めて勢いを後ろに受け流した。
「大丈夫か」
セツは少し焦り気味に受け止めたエルを見た。
「なんとかね」
エルは歯を食いしばりながら立ち上がった。
「セツ、俺とエルでなんとか抑え込むから全力の一撃を頼む」
フリューベルは2人よりもはやく飛び込んでいた。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
フリューベルの槍には鬼気迫るものがあった。先ほどよりも速く、そして一手前よりも速く動こうと必死なのが伝わってきた。
「むっ」
ソルも先ほどのような押し返しができずカウンターを放ってもフリューベルは怯まずに突っ込んできた。
「フリュ、左を」
エルは右側に回り込みつつ両手に持った小太刀でフリューベルのカバーにまわっていた。
いつもは喧嘩をしているが2人は息の合ったタイミングでソルを押していた。
フリューベルが仕掛ければエルがソルの反撃を受け止め、エルが仕掛ければフリューベルが受けていた。
「絶纏:奥儀の纏」
セツは目を閉じ槍を斜め後ろに構えた。常人でもその一撃にかける力が一撃必殺と分かった。
「セツ、お前それを使えるのか」
ソルは今までになく驚いた顔していた。
セツは目を開きソルを見た。
「だーーーーーーーーーーーーーーー」
セツは一瞬でソルの目の前まで跳躍した。
「くっ」
ソルはフリューベルを蹴り飛ばし、槍の柄でエルをはじき飛ばした。
「深淵裂刃(シンエンレッパ)」
セツの槍が急速にぶれどれが本体認識させなかった。槍に振動を与えることで威力を高める。その威力は通常の武器なら粉砕し、更に武器を貫通し相手自信に直接反動をぶつける危険極まりない一撃である。
「流絶:再纏激塵」
態勢の崩れた状態からソルは真向勝負を選んだ。このまま避けた場合、外で見ているメンバーにどんな被害が及ぶか分からなかったのだ。
二つの槍は激しくぶつかりせめぎあう。
そして対に押し合う力では耐え切れなくなり空へと槍が弾き飛ばされた。
「そこまでだ」
一人の男が静止をかけた。
「これ以上続けたら大怪我の恐れがあります」
男はソルを一度見た。ソルは無言でうなずいた。
「これは認めるしかありませんね」
別の男が静止をかけた男の横に立つ。それに続き男女6人が並んだ。彼らはフェンリルの隊長達であった。
「私もこの子達の実力なら文句はないと思います」
「異議なし。反論のある者はいないようですね」
「ふふ、これから面白くなりそうね」
「俺達もうかうかしてらられないな」
「ま、私達が少しづつ教えてあげればいいわね」
「フェンリルの新たなる牙となりそうね」
団長と隊長達が何を言っているのかこの場にいる者は分からなかった。
「セツ、前へ」
急に呼ばれてセツは慌てて立ち上がった。
「はい」
それでも冷静に前へ一歩出た。
「セツ、貴方にフェンリル10番隊の隊長の任を命じます」
「えっ」
セツの驚きの声があがった。だが驚きはそれだけではなかった。
「続いて、フリューベル、エル前へ」
「は、はい」「はい!!」
フリューベルとエルも急いで一歩前へ出た。
「フリューベル貴方には11番隊のエルには12番隊の隊長の任を命じます」
「・・・」
3人は声が出なかった。
これはフェンリル始まって以来の大事件であった。
まだ10歳にもなっていない少年達が隊長の任を命じられることは普通はありえなかった。
だが3人は例外であった、フェンリルの若手のメンバーと同等かそれ以上の訓練量をこなし、ソルのみが扱っていた流絶、それの元となる流纏、絶纏を彼らは使いこなしつつあったのだ。
誰もが認めざるを得ない状況であった。
「今後は私達隊長の元で合同演習を行う。通常の訓練もこなしてときつくなるかもしれないが一隊を任されるのだ覚悟をしておくように。休んでいいぞ」
男の言葉に3人は凛とした表情をした。
「はい」
「分かりました」
「任されました」
3人は一度礼をするとその場を去った。
この時をもってフェンリルは最強集団へと一歩づつ踏み出していくことになる。


3人は丘の頂上まで全力で走っていた。
「嘘だろ。俺達が隊長だって!」
セツは未だに信じられないと言った顔をしていた。
「何を言ってるの私達は隊長になったのよ」
エルはセツに飛びついて感情を爆発させていた。
「だよな。俺達やったんだよな」
セツも笑顔で背中に飛びついているエルを見る。
「やったのよ、ねぇフリュさっきから静かだけど」
エルとセツを見て言葉を失った。そこには声を押し殺して涙を流しているフリューベルがいた。
「ちょっ、何泣いてるのよ。もしかしてどっか痛めたの」
エルが心配そうにフリューベルを覗き込む。
「ち、ちがう・・・。た・だ・・・俺達が・・・やってきた・・・ことは・・・間違ってなかったんだよね」
フリューベルの言葉に2人は納得した。3人はこれまでその年齢で強かったため周りから疎まれていた。フリューベルが訓練嫌いになった理由も周りの冷たい言葉や八つ当たり(結局返り討ちにはしている)があったのが原因であった。
「そうだ、俺達がやってきたことは間違ってない。そしてこれからも俺達がやっていくことは間違ってないはずだ」
セツはフリューベルの肩に手を置き強く言いきった。
フリューベルも無言でうなずき。涙を拭った。
「ねぇ、折角だし。この丘で誓わない」
エルは名案とばかりに二人をみた。
「ここを始まりの場所とするのかそれはいいな」
セツは即座に同意を示した。
「俺もいいと思う」
フリューベルは槍を取り出して天に向けてかざした。
それに続いてセツも槍を、エルは小太刀を天に向けてかざした。
「俺達、どんなことがあっても3人で力をあわせれば超えれない壁なんてない」
セツは自信に満ちた目で2人を見た。
「そうね、私たちは物心ついたときから一緒にいたわ、私たちの絆は絶対に切れないわ」
エルは穏やかに笑みを浮かべていた。
「俺たちの絆にかなう絆なんてこの世界に存在しない。俺たちは最高の友であり仲間であり強大なんだから」
フリューベルの瞳にはもう涙はなく、晴れやかな笑顔をしていた。

3人は力強く羽ばたく、それはこれから彼らが刻んでゆく道のほんの一歩でありかけがえのない一歩になる。たとえどんなことがあろうと彼らの絆がきれることはないだろう。

丘に一陣の風が吹く
「さぁ行こう、この風と共に」

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