FC2ブログ

REQUIEM館

46話:全ての終焉

ゴゥン
強烈な雷撃が唸りをあげながら一直線に飛んでいく。
ヒュヒュヒュ
更に無数の光の矢が空中から降り注いだ。
標的はただ一人名も知れない女に向かって容赦なく叩きつけられる。
しかし女の存在はこの世界の創造主。この程度の力で倒せるほどたやすくはない。
全ての攻撃は女の周囲に浮かぶ黒い球体が吸い込み消し去っていた。
とーるとエリスの二人は苦い表情をしながらも攻撃の手を緩めなかった。
二人の狙いは注意を少しでも自分たちに向けさせることにあった。
女の視線が僅かに二人にむいたその瞬間にナナリとやよいが勢いよく切り込んだ。
やよいは素早く刺突を繰り出した。威力よりも手数で圧倒するつもりだ。
そこにナナリがやよいの左側から飛び出し氷を纏った太刀を振り出した。
しかしこれも女へは届く直前で軌道をかえた。女が何かをしていることはわかるがその内容までは理解できなかった。
「そこだ!」
完璧な死角からセツが飛び込み槍を突き出した。
今までなら防がれていたが、セツはあたると確信していた。そしてその確信は現実になった。
ドスッ
鈍い音をたてて女の肩を貫いた。
「アアアアアアアアアアアア」
女の叫び声がこだますると同時にどす黒い球体が膨張を始めた。
「やばい、皆さがれ」
セツは一瞬で状況を悟り勢いよく後ろに跳んだ。
セツが後ろに跳ぶのとほぼ同時に球体がはじけ黒い雨が降り注いだ。
セツの言葉にいちはやく反応したやよいはナナリの手を勢いよく引っぱりながら後方へ跳び込んだ。
とーるとエリスは距離をおいていたため反応が遅れはしたものの範囲の外へはいち早く抜けていた。
ナナリ、やよいも間一髪のタイミングで間に合った。
この黒い雨は触れるだけで生命力を奪うという危険極まりないものだった。
「あぶねえ、間一髪か」
ナナリとやよいがぎりぎり降り注ぐ雨から逃れるのをとーるは確認して安堵のため息を吐いた。
「あれ?リオは?」
やよいの疑問に3人はあたりをみまわした。しかし周囲にはリオの姿はおろか気配すらしなかった。
「おいおい、冗談じゃねーよな」
とーるの焦り声だけが無情にも響き渡った。ナナリ達は無言で雨のほうへと向けられる。
こうなると雨がやむまでただ待つだけになる。
やがて雨がやみ目の前に女の姿が現れた。そして女よりも奥にいたセツは膝を地に着けて肩で息をしていた。
「セツ!」
セツは僅かに雨を浴びてしまった。行動不能といわないが致命傷に近いといってもよい状態だ。
だがセツは気力だけで立ち上がった。
その時上空に1つの気配がした。その気配につられすべての視線が上空へ向かった。
そこには傷だらけのリオが紅蓮を振り上げながら女に向って急降下していた。
先ほどの黒い雨が降る直前にリオはセツが逃げ切れないと即座に判断し助けに走った。
しかし、それでも間に合わないと悟ったリオはセツを蹴り飛ばし雨の範囲から脱出させたのだ。
その結果リオ本人は脱出に間に合わなかった。そこでリオはセツを蹴り飛ばした反動で天井へ逃げることにしたのだ。
リオの行動は結果として誰も行動不能にならない最善の結果となった。
「くらいなさいー」
紅蓮から炎が巻き上がりリオを覆う。
女はよけきれないと瞬時に悟りリオを覆う炎めがけて拳を振り出した。
言葉には表せない音と閃光が部屋を駆けた。
ダンッ
鈍い音と共にリオの体が地面に叩きつけられた。
「リオ!!」
ナナリ達は急いでリオの元にかけよった。リオの右腕があってはならない方を向いていた。
だがそれ以上にリオから生気が失われていた。
エリスは言葉を失いつつもリオの状態を確認し首を横にふった。
「やったわ、あの女の腕を封じてやったわ」
リオは僅かに笑みを浮かべた。
4人の視線が女へ向かった。そこにはリオと同じく右腕が折れた女がいた。
「悔しいけど私はここまでみたい」
リオの声が少しずつ弱くなっていくのがわかった。
「後は私達に任せてゆっくり休め」
ナナリはリオに呟くと太刀を構え女に向かって走った。リオはその言葉を聞いて力を抜いた。
「やよい悪いんだけどベル兄さんの横まで連れて行ってくれないかな」
やよいは無言でリオを担ぎ倒れいているフリューベルの横に寝かせた。
リオはやよいにしか聞こえない声で話しかけるとそのままやよいの手に何かを渡した。
やよいはそれを見て頷き立ち上がった。
「ベル兄さん、私もここまでみたい。今行くね」
リオはフリューベルの手を握りながら静かに目を閉じた。
「うぁぁぁぁぁぁ」
リオの最後を距離は離れていたがとーる達も悟った。理解できない黒い感情が彼らを覆う。
とーるは闇雲に女に向かって雷撃を纏った拳を放つ。怒りによって倍加した拳が女を襲う。
女は黒い稲妻をもってこれを相殺する。勢いあまったとーるには隙が生まれた。それを女が見逃すはずがない。
女の回し蹴りがに空間を歪めながら飛び出す。
「させません!」
エリスがぎりぎりのタイミングで光をまとった剣で受け止める。
しかしそれも僅かな時間稼ぎでしかなく光が霧散する。とーるは体制を建て直しエリスを抱えて後ろに飛んだ。
女の蹴りはそのまま空を切り裂く形になった。
女は追撃しようと足が地に付いたところで眼をしかめた。
「照準固定・・・唸れ氷塊の砲撃」
少し離れた所からナナリが太刀を床に刺していた。今のナナリの脳には戦闘機の射撃のロックオンと同じカーソルが現れている。既にロックオンの状態であった。
「貫け、白氷の名において」
ナナリは勢いよく地に突き刺した太刀を振りぬいた。
絶対なる力、避けることを許さない冷気の奔流が駆け抜ける。1歩間違えればとーる達も巻き込みかねないがそこはとーるの判断が良く巻き込まれることはなかった。
「おのれ、人形の分際で調子に乗るなー」
女は動く左手で白氷の電磁砲を受け止める。だが威力だけでいえばとーるが使うトールハンマーと同クラスの威力を受け止めれるわけがない。
しかも、フリューベルとリオの一撃を受けた後だ最初の時とは条件が違う。
女の左手が徐々に押し込まれはじめる。押し切れるとナナリは悟った。
だがここ予想を覆す事が起きた。
「ぐっ」
ナナリの腕から血が噴出した。
「ナナリーーーーー」
やよいはこの状況を一瞬で察知しナナリに向かってかけよろうとする。
「近寄るな巻き込まれたいのか」
ナナリの怒号とも取れる大声にやよいは足を止めた。
ナナリも気がついた。これは女の受けたダメージをそのままナナリに向かって返しているのだ。
原理など理解していない。だが創造主のことだそれくらい出来て当然なのだろう。
(これはまずいな・・・だがここで諦めたらベルとリオに申し訳がつかない)
ナナリは更に力を強める。
(これが最後の切り札だ)
ナナリは太刀の装飾に付けていた蒼い石を外すと中指と一刺し指にはさんだ。
(ありったけの生命力を奴にぶつける)
石の力の加護を失った太刀にヒビが入る。力の反動に耐えられなくなったのだ。
しかしナナリはそれすらお構いなしに続けた。全身の力が抜けていく石に生命力を持っていかれてるのだ。
「撃ちぬけーーーーーー」
ナナリの言葉と共に石が一際蒼く輝くと放出されていた電磁砲が更に威力を増した。
豪快な音と共に女の全身を覆い爆散した。絶対零度の一撃ナナリにとって奥の手でありそして石の加護による切り札、その威力トールハンマーのゆうに3倍の威力にまでないっていた。
これが普通の都市に撃ち込まれるようならその時点で都市は消し飛んでいただろう。
だがその代償も安くはない。ナナリは膝から地について倒れこんだ。
「ナナリ!」
やよいの声にセツがいち早く反応しナナリの元に一瞬で近づき抱えて離脱する。
「大丈夫だ、傷はひどいが力を使い果たしただけで死にはしないだろう」
セツはナナリを見てホッと息をつきながら説明をした。
「あの時、ベルがいたんだ」
ナナリの言葉に4人が驚いた。
「あいつ、付いてこれるなら付いてこいって言ってた。あげく最後のダメージ反射ベルが受け止めたようにみえた」
4人はナナリが何を言っているのかいまいち理解できなかった。
「セツ、ベルからの伝言だあれを使え。とーるならやれる」
セツは驚愕の顔をした。そして普段では見られない程のきつい目をした。
「本当にいたんだな。あいつが」
セツの言葉にナナリは頷いた。
「すまん・・・意識がも・・う・・・後は頼んだ」
ナナリはそういい残すと目を閉じた。呼吸をしているところを見るとただ眠りについただけのようだ。
セツは少しだけ悩んだがすぐにとーるを見た。
「とーるこれを」
セツの腰につけていた護身用と見られる短銃をとりだした。
「これは」
とーるは僅かに戸惑いながらもそれを受け取った。既に銃など通じない世界にもかかわらずセツはとーるに渡した。
「それを受け取ったら弾倉にフリュ達から渡された石を装填しろ。装填の順番は適当でいい。だが使用者の石は中央にはめるんだ」
ナナリに言われたとおりに弾倉を見ると中央に1つそしてそれを囲うように5つの弾倉がある。
石は全部で6つ、フリューベル、リオ、ナナリ、やよい、とーる、エリス。
「まって、私の石は2つあるわ。この場合どっちを渡せばいいの」
「どちらでもいい。強いてあげるなら闇の方だな」
エリスの疑問にセツは瞬時に答えた。
「とーる最後の判断はお前に任せる。それを使えば使い手本人には死が待っている」
その言葉にやよいとエリスは絶句した。
「更に言うと俺とナナリも傷を負いすぎてる・・・多分衝撃で耐えらないだろう」
誰もが言葉にできなかった。残酷すぎる結果に言葉がでないのだ。
「時間は俺が稼ぐ。決心がついたら俺事撃ちぬけ」
セツは槍を構え一気に突進した。
セツが走り始めるとほぼ同じくらいに女を覆っていた蒸気が晴れた。女の体の見えるとこだけで相当な傷ができていた。
肩で息をし余裕などどこにもない。そして怒りと殺意をセツ達にぶつけている。
セツは悟った。とーるが動けばこの戦い勝てると。セツは槍の封を解き流絶を具現化させる。
既に後のことは考えてない。ここで命つきるのを覚悟で突撃をする。
残された3人はただ黙り床を見つめていた。
だがとーるが開き直った声で上を見上げた。
「いいんじゃね?俺としてはベルさんもリオもいないんだ。ベルさんなんて何回死にかけたんだろう。絶対俺達以上に危険な目にあってきてる。それも俺達を守るために。そんなあの人が命をかけたんだここで逃げたら一生いや死んでからも顔向けできない。だから俺はやる。俺の命1つで戦いが終わるんだ世界が救われるんだ安いもんだ」
とーるの虚勢とも取れる言葉だったが、やよいは少しだけ笑った。
「そうね、ならあたしも乗るわ。セツ1人じゃ重荷でしょう、あたしとセツでチャンスを作る。後は任せるわ」
やよいはレイピアを抜くとセツの元にむかって走り出した。一番最後に仲間になった彼女だが、一番勇敢で一番責任感を持っていた。そんな彼女だからこそ分かってくれたのかもしれない。とーるは心の中で礼をいいつつ銃を構える。
銃の形状はリボルバー。扱いだけなら子供の時から経験があるので造作もない。
だがこのリボルバーだけは違った。重圧が半端じゃなかった。
「エリス、お前は離れてろ。お前にはハルが待っている。こんなとこで死んだらあいつが悲しむ」
とーるの言葉にエリスは暗い表情をする。エリスも迷っているのだ。
とーるとやよいはアイコンタクトでそのことを理解している。
この場でエリスだけ逃げさせても誰も文句を言わないだろう。
「早く下がれ。これ以上は待てないんだ。頼むから俺の言うことを聞いてくれ」
とーるの焦り声が背中越しにエリスに伝わる。ここまでとーるが焦った姿は過去にはなかっただろう。
とーるにかかる重圧と恐怖は尋常ではなかった。自分の手で仲間をそして自分を殺すのだから相当なものであろう。
しかし、とーるは強烈な精神力で押さえ込み視線を前に向けた。
リボルバーをセットすると照準を女にむける。照準の先には女とそれに立ち向かうセツとやよいの姿もうつった。
僅かにだが腕が震えた。だが決心は揺るがない。あとはタイミングを見計らってトリガーを引くだけ。
(重い、指が本当に重い)
とーるは一度瞼を閉じた。
「貴方にだけ背負わせないわ。その重さ私と二人で背負いましょう」
とーるの背中に温もりと、優しき声を感じた。
「馬鹿野郎、ハルのことはどうするんだ」
とーるは離そうとするがエリスは離れようとしない。
「あの子ももう立派になったわ、それにあの子には伝えているの。私が戻ってこないかもしれないってことを」
エリスの言葉にとーるは黙り込む。
「それにね、ほら姉が世界を救った英雄の1人ってのもかっこよくないかな」
いつもでは絶対にみせることのない茶目っ気を言いながら笑って見せた。
それを見たとーるは肩から力が抜けてしまった。
「いつからそんな馬鹿みたいなことをかんがえるようになんだか」
「貴方と出会ったときからもうなっていたわ」
「ちがいねー」
2人は微笑みあった後、決意のこもった顔つきに変わった。
「やるぞ、エリス」
「はい」
・・・
セツとやよいは女に向かって幾度と攻撃を行う。
だがどれも決定的瞬間を生み出すには足りなかった。そして2人の体には攻撃を行うたびに傷が増えていった。
「人形と堕ちた存在が私に歯向かうんじゃないわよ」
女の蹴りがやよいの沸きにきまる。空間歪曲の力までおまけ付きの一撃にやよいは血を吐きながら床を転がる。
だがそれでも立ち上がり女に向かって突撃する。
女も既に両腕が使い物にならず、右目も見えていない状態であった。それでも2人と互角に渡り合っていた。
化け物としか言いようがない。
だがチャンスは突然訪れた。
女の動かない右腕がぼこりと膨らんだ。
「ぐっ、これは」
女は呻きながら一歩だけ後ろに下がった。
勝負はフリューベルの一撃で既に決まっていたのかもしれない。フリューベルの放ったレクイエム。
別名鎮魂歌といわれ死者の魂沈める歌である。フリューベルの放ったこの一撃は女が今まで奪ってきた魂の楔を斬ったのだ。これによって黒き力は急速に失われ始めたのだ。そして今、女が押さえこめる限界を突破したのだ。
リオとナナリの決死の攻撃がなければフリューベルのレクイエムも効果は出なかっただろう。
女を追い込んだ結果がやっと実をなしたのだ。
やよいはこのチャンスを手にするためにレイピアを女の腹に突き刺した。
「「がはっ」」
女の吐血と同時にやよいの口からも血が吐き出された。
よく見るとやよいの背中を貫通して床から突き出した地柱が女を突き刺していた。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
セツも同じく女の横腹から槍を突き刺していた。そして吼えると同時に強烈な重力が自分達3人に降り注いだ。
「今ダーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
「撃ってーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
セツとやよいの叫び声がこだまする。
「おのれ、離せ離すんだーーーーーーーーーー」
女の声は焦りと恐怖ににじんでいた。
「エリスーーーー」
「はい」
その叫び声にとーるとエリスは答えた。
「全ての戦いに終焉を」
「ぶちぬけーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
二人の指がトリガーを引いた。
<<最終章:レクイエム>>
6色の色をまとった弾丸が加速し3人に向かって突進する。
とーるの意識は既に失いかかっていた。
エリスもとーるの体を抱きしめるだけでもう意識が残っていなかった。
そして
弾丸は女に直撃した。・・・・
(さよなら俺達の世界。そして皆に会えてありがとう)
消え行く意識の中でとーるは最後にそう呟いた。
スポンサーサイト
小説 | コメント:2 | トラックバック:0 |
| HOME |