FC2ブログ

REQUIEM館

第4話:始まりは唐突に

ビット、あきらの2人がそれぞれ転職をして2週間がたった。
アカデミーでは2人の報告を元に各職のギルドに調査以来を出していた。
原因は2人も遭遇した妨害ともいえる行為がその後も多発したからだ。
幸い怪我人は出ていなかったが転職できた者はあきらを最後に途絶えてしまっていた。
この事態にアカデミーおよび各ギルドのマスター達で緊急会議を開いていた。
「今回の件、あまりにも不自然すぎる」
がたいの良い剣士の男性が腕を組んで周囲を見渡した。
「確かに、私共のメンバーもこの件で怪我人を出しています」
商人の姿をした若気に見える男性が相槌を打つ。
「だが、一体誰がこのようなことを・・・」
ローブを纏った男の魔道師は報告書に目を通す。
「今回のこの行為については主もお怒りになっています」
司教の女性は首から提げた十字架に両手を添えて祈りを捧げる。
「一番被害があったのは俺たちのところか、幸い候補生が優秀で助けられたが」
シーフギルドのクリフは苦い表情であった事を語った。
「それにしてもこれ程の被害が出ているにもかかわらず犯人の素性が全く分からない事があっていいのでしょうか」
弓手ギルドの長である女性が事件の一番の謎を指摘する。
既に会議は3時間を越えていた。現在に至るまでに色々と対策等も話された。
現在はそれぞれが思ったことを述べる時間になっていた。
「皆さん、此度の件について私から提案があります」
アカデミーの学長の言葉に各ギルドの長の視線が集まる。
「一時的にですが各転職試験をアカデミー内で行ってはどうでしょうか。学園内であれば被害も出ないでしょう」
学長の言葉にどよめきがおきる。
それもそのはず、各ギルドはアカデミーができるよりも前から存在している。
それこそアカデミーよりも権限があるはずなのだ。しかし現状は違った。
アカデミーの保有する生徒は必ずいずれかのギルドへと転職しに来るのだ。
転職後は数に応じて国からの補助も出る。今ここでその案を断ることは結果としてギルド崩壊の一歩をたどることにもなるのだ。
「反対意見の声もないですし、採用ということでよいですね」
学長の言葉に長たちは静かに頷くしかなかった。

それから3ヶ月、あきらとビットはそれぞれ新たな任務をこなし着実に成長をしていった。
転職の事件からは一転して然程大きな事件も起こらず彼等以外の生徒も転職し更なる高みを目指していた。
あきらとビットもあの事件以来顔を合わすことなくお互いの事を忘れていた。だが運命の歯車はそれを許さなかった。

男性の教師が血相を変えて学長室に飛び込んできた。
「学長、大変です。プロンテラから南へ30里のとこで大規模なモンスターの集団を確認しました。進路からして東のフェイヨンに向かっています」
「なんだと!」
教師の言葉に学長は椅子から立ち上がった。
「現在騎士団がフェイヨンから10kmの場所に陣を取り迎撃の態勢を取っていますが、しのぐ事ができるかは・・・」
教師の声からも絶望的な事が伺える。
「戦える教師たちはこれより騎士団の援護に向かえ。私もでる。残った教師は生徒を外へ出させないように見張るように。またこの事については緘口令を敷く。生徒には絶対にはなすな」
学長の指示に従って教師達は慌しく準備を始める。
学生達はそれぞれ自分の部屋から出る事を禁止され一歩も外に出れないようにさせられた。
流石に学生達もただ事ではないと理解し抵抗する者も少なかった。しかしそんな中にも例外というのは存在する。
同時刻あきらは学園の隠し通路を使い部屋から抜け出していた。あきらは自分の部屋の天井から学園の外へと抜け出す独自のルートを作り頻繁にこれを使っている。この事については教師達も未だ気づいていない秘密の抜け道であった。
学園の講堂にある転移門へ直接抜け出すと講堂内には既に教師達の大半が集まり出撃の準備を始めていた。
あきらはどうやってここから教師達に気づかれずに転移門へとたどり着く考え込む。
「おい、ここで何をしてるんだ」
突如あきらは背後から肩をたたかれた。
「!!」
あきらは素早く右腰に納めていた短剣を引き抜き肩を叩いた主に向かって突き出した。
「ちょっ、・・・いきなり何すんだ」
短剣の先にいた声の主をみてあきらは短剣を収めた。
「後ろから声をかけるからだ」
あきらの視線の先にはビットが冷や汗を浮かべていた。
「で、何やってるの」
ビットもあきらと同じように部屋の隅に隠れる。
あきらは黙って何も答えようとしない。
「ふーん、無視するんだ。まぁいいや、俺は転移門の先に用事があるんでまた・・・グェ」
ビットは普段では出さない、出せそうにもない声をあげた。
「お前、今転移門の先に行くっていったよな」
あきらはビットの服を引っ張り詰め寄った。明らかにビットの首を絞める形になっているのだがおかまいなしだ。
「じ、じぬ・・・たずげで」
ビットは既に気絶寸前で痙攣しながらもあきらの腕を叩いていた。


「あーーー、本気で死ぬかと思った」
ビットは床に座り込みながら息を整えた。
「・・・で、お前はどうやって転移門まで抜けるつもりだ。今は生徒は自室待機、許可は出てないだろ」
あきらの言ってることは最もだった、現在全ての生徒が自室待機、自室から出る事は禁じられていた。
これに背く者はあきら自身だけだと思っていた。
「ちっちっちっ、甘いなー。その気になれば方法はあるんだなー」
ビットはにやつきながら懐から何かを取り出した。
それを見たあきらは息を呑んだ。
ビットの手には枝が十数本はあった。
「古木の枝か。お前どこでそれを」
「この間の転職試験の時に枝騒動があってな、その時に折れてなかったのを拾ってきたんだ」
あきらの質問に対しビットは自慢気にこたえた。
古木の枝、枝を折る事によってこの世界に存在するモンスターを召還するアイテムである。
ただこのアイテムは時と場所を選ばずに使うと法で裁かれるくらい危険極まりないものでもある。
今ビットがしようとしていることはそれこそ裁かれて当たり前の行為である。
「それであきらはついてくるのかな、そうなら共犯ってことでよろしく」
あきらにとって断る事が出来ず無言で頷いた。
「そいじゃちょいっと暴れてもらいますか」
ビットは枝を数本あきらに渡すと残った枝を折り教師達の前に投げつけた。
枝から煙が巻き上がるとそこから赤い小さな蝿が現れた。
「ハ、ハンターフライ!!」
蝿の近くにいた教師の顔がひきつった。
更に追い討ちのように枝が投げ込まれる。
さまざまなモンスターが召還され教師達は乱戦状態にもちこまれた。
「く、これでは周りが見えない」
「くそ、一体誰だこんな馬鹿な事をするやつは」
教師達はそれぞれ目の前のモンスターを相手にするのが手一杯で周りがみえてになかった。
「あきら、今だ」
「ああ」
ビットとあきらは乱戦になっている教師達の横を素早くかけぬけた。幸い気づくものもおらずすんなりと転移門を潜り抜ける事に成功した。


同時刻フェイヨン西部
2人の男女が草葉の陰からじっと平原を見つめていた。
年齢は14,5といったところ。
「敵の数は?」
「50から60といったところ」
「よくみえるなーさすが鷲の目※1、見えないものはないって感じだね」
「馬鹿をいってないでマスターに報告しろ」
「はいはい、せっかちさんは女性にもてないよ」
「いいからいけ」
少年の呆れた声に少し不満顔の少女が走り出した。
少女が見えなくなるの確認してから少年はもう一度先ほど同じ方角を見つめた。
「・・・覚悟をきめないとな」
少年の言葉に答えるものはいなかった。

それから20分後フェイヨン西部から強烈轟音と共に爆炎が舞い上がった。
この爆炎が何かの始まりを意味していたことに気づくものはいない。全てはここから始まる。


※1 鷲の目・・・遠くを見通す目、主に弓使い等が射程を伸ばす為に用いられるスキル。これにより遠くの敵を射抜くことができる。

スポンサーサイト
小説 | コメント:0 | トラックバック:0 |

第3話:新たな一歩

「ち、こうもじめじめしてると歩きづらいな」
あきらはダンジョン内を探索しながら周囲を見渡した。
壁には苔が生え見るからにも整備されていない事が分かる。
「後3本だがどこにあるんだ」
あきらは傷だらけな姿で今まで来た道を思い返した。
そもそも何故こんな事をしているのかを説明すると、今から1時間前にさかのぼる。

「これはどういうことだ」
あきらは目の前の光景をみて絶句した。
目の前に数人の男女が倒れていた。
場所はモロクといわれる町の北西に位置するピラミッド。
ピラミッドの地下1Fにシーフギルドが存在し今回あきらは転職する為にここを目指していた。
人気がない場所といえばそうであるが、あきらは地下に降りた時点で気配が全くないことに戸惑いを覚えた。
人というものはどう意識しても気配を僅かに残してしまう。これを完全に消すことができるのは達人クラスでないと無理がある。
「おい、しっかりしろ。おい!!」
あきらは近くに倒れていた男に声をかけると僅かに反応があった。
「てめぇは・・・」
男は虚ろな目をしながらあきらを見た。
「今日転職試験を受けるために来たんだよ」
あきらの言葉に男は少しだけ目を凝らした。
「わりぃ、こんなこと頼めた義理じゃないんだが、ダンジョンの外に池がある。そこの近くの草むらから隠し洞窟に入れる。洞窟に生えているキノコを20本程度もってきてくれないか」
男の言葉にあきらは頷いた。
「それがあれば助かるんだな」
あきらの言葉に男は頷いた。
それを見たあきらはギルドを飛び出していった。

というのが今に至るまでの流れだ。
ダンジョン内にはモンスターが存在しあきらも既に十数戦ほど戦っている。
「あった」
あきらの視線の先には残り3本のキノコがあった。
しかしあきらは踏み込もうにも踏み込めなかった。それには理由があった。
「うっそだろ!」
あきらの視線の先には上半身半裸の男みたいな姿をし下半身は蟻のような姿をした巨大な生物がいた。
その生物の名はマヤパープル。
アリ達の王といった存在でこの世界でも恐れられている存在である。
普段は蟻地獄といわれるマップにしか存在しないのだが何故か今目の前にはそいつがいる。
(流石にこれは厳しいってレベルでないぞ)
あきらはマヤパープルの動きを確認するがどうやら部屋から出て行く気配がない。
(ちっ、動き回るならおびき出して終わりなんだが)
あきらは右手にクリップを握っていた。クリップの側面をよく見るとカードが差し込まれているのが見える。
あきらにとってこのクリップが頼みの綱だった。
「だーーー悩んでても仕方ねー。やってやんよ」
あきらは腹をくくって飛び出そうとした。
飛び出す直前にあきらの顔を僅かにそれて何かが飛び出した。
『ギャーーーーーーーーーーー』
洞窟が崩れるのではないかというほどの声が響き渡った。その声の主はマヤパープルであった。
よく見るとマヤパープルの右目に燃盛る矢が刺さっていた。
「そこのノービス、さっさと目的の物を回収しろ」
あきらの更に背後から声が聞こえてきた。
声の主を確認したかったがそんなことをする余裕はない。あきらは一目散にきのこに向かって滑り込んだ。
滑り込みはマヤパープルの足下を綺麗に抜けて言った。次同じことをやれと言われても無理であろう。
マヤパープルは怒りを露にし矢が放たれたであろう方角に突進していった。
燃盛る矢がそれを阻止しようと幾度も放たれる。がマヤパープルは止まることなく突進する。
あきらは全てのきのこを抜き取ると一目散にマヤパープルの背後に飛び込んだ。
「これでもくらえー」
あきらはクリップを右手にはめながら短剣を振り下ろした。
地面に激突すると同時に地面が爆発した。マヤパープルの取り巻きごと吹き飛ばした。
あきらが使用した技の名はマグナムブレイク自分を中心に爆発を起こし敵を吹き飛ばす技だ。
だがあきらはまだ慣れておらずその反動で自分も吹き飛ばされた。
「ったく無茶しすぎだ」
あきらは横脇に抱えられ持ち上げられたと思うと視界がゆれた。

「んっ、ここは!」
「お、ようやく起きたか」
あきらの意識が戻ると周囲に見知らぬ男や女がいた。
「助かったよ、本当君が来てくれなかったら俺達も危うかったよ」
男が大きな声で笑い飛ばす。
あきらは事情が掴めずにきょろきょろとする。そして気がついた。ここはシーフギルド。
「新たな友よ。シーフギルドは君を歓迎するよ」
あきらは自分の姿を見て気づいた。シーフの正装と同じ服を着ていた。
「試験は・・・するまでもなく合格ですね。私達を助けてくれたのですから」
女性のシーフが微笑みながらあきらを見下ろした。あきらは照れくさかったのか視線を逸らした。
「そういえば、あのアーチャーの子は一体何者だったのかしら」
女性の言葉にあきらはハッとした。あの燃盛る矢を打った相手は一体何者だ。
「そいつは今何処にいる」
あきらは勢いよく飛び起きて周囲を見渡すがアーチャーらしき者は見当たらなかった。
「彼は解毒剤を私らに飲み終わらせると直ぐに出て行ってしまったわ。私らも毒が抜けるまで動けなかったし今何処にいるかまでは・・・」
女性の言葉にあきらは少しだけ考え込んだ。
(やつは何故あんな場所にいたのだろうか・・・)
あきらはあの洞窟を教えられたから分かるのだがアーチャーのやつはどこで知った?
そもそも、やつはあそこに来て何かメリットがあったのか?
あきらは色々な事を考えるが全て憶測でしかない為答えは見つからなかった。
「とりあえず名前を教えてもらおうか、これからはお互い仲間同士だ名前を知らないのは不便だろ」
男はすっと手をさしだしてきた。
「俺の名はクリフ。ギルドのマスターだよろしく」
「・・・あきらだよろしく」
あきらはぶっきらぼうに答えると手を取った。
周囲のシーフ達も次々とあきらに挨拶をしていく。あきらはやはりぶっきらぼうにそれに答えていた。
あきらの長い旅がここから始まる。

小説 | コメント:0 | トラックバック:0 |
| HOME |