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REQUIEM館

第11話:波乱の幕開け

大会は順調に進み、予選の全てが消化され、全部で60のチームが本選に進んだ。
ここから翌日の決勝に進めるのは6試合行われその上位2チームのみ。つまり全部で5チームまで絞られる。
アカデミーで行われる大会だが、各国のスカウトや有名ギルドのスカウト等が注目している為決勝まで進めば色々と恩恵もある。
野心家、戦闘狂、アカデミーのOB、各国の代表等等この大会では多種多様な理由で参加している。
しかし、その中でも異色なチームがあった。過去のどの大会にも記録がなく全くの無名のチームが本選に進んだ事は過去にそう多くはない。

「さて答えを聞こう」
とある一室でビット達はリンとむかいあっていた。
「一つ聞きたい。あんた達はこの大会に参加する理由はなんだ」
その気配の主はビットであった。ビットの表情はリンからは見えないが声からして返答次第では何時で行動を起こすつもりなのだろう。
「この大会に参加してるチームにあの襲撃事件の黒幕がいる。そいつを捕縛する為だ」
リンの返答は、あのフェイヨン襲撃未遂事件の事をさしていた。そしてリンの言葉には怒気が混ざっていた。
ビットは背筋に寒気を覚えながらも根性で奮い立たせた。
「なるほどそういうことか、だがこちらもお前達と協力するほど余裕があるわけではない。精々お前達の戦闘の邪魔をしない程度しかできないぞ」
突如ビットがいる場所とは違うところから声がした。声の主はあきらだった。
「構わないさ、こちらとしては相対する者が減ればそれでいい。僕達は優勝には興味ないから君達にとっても悪い話ではないだろう」
リンの言葉に2人は黙った。確かに悪い提案ではない、更に言えばリンの案にのれば決勝まではこちらに支援をいれてもらえるとまで言っている。
「いいでしょう。その案にのりましょう」
突如ビットの隣にリアが現れ勝手に返答をする。流石のあきらも苦笑いを浮かべる。
「?」
しかしビットはそんなことよりもリンの表情が一瞬だけであるが困惑に変わったのを見逃さなかった。
「交渉成立だな。では開始早々お互いに合流をした方がいいな。君達にはこれを渡しておこう」
ビットの手には何かの牙で作られた笛があった。
「試合がはじまったら即座にそれを吹くんだ。僕はその音であれば君達の場所を割りだする事ができる」
「なるほど、これは特定の人間にしか聞こえない音を発するアイテムだな」
リンの説明を聞きながらもあきらは笛をマジマジと見ていた。そしてその構造を瞬時に理解していた。
「では、次は本選であおう」
リンは後ろを向くと部屋から出て行った。
ほぼ同時にアナウンスが部屋全体に流れた。
『これより本選を開始いたします。出場者の方はそれぞれの部屋で待機をしてください。30秒後に転移を開始します』
ビット達3人は無言で頷きあった。それだけでお互いの考えが伝わったようだ。
空間が歪み視界が暗転する。
時間にして10秒くらいだろう少しずつではあるが視界が開けてきた。

『全チームの転移を確認。これより本選第1試合を始めます』
アナウンスが流れると共にそこら中に散らばっている気配が散会し始めた。
「ビット」
あきらの声にビットは笛を取り出しおもいっきり吹いた。
音自体は聞こえないがこれでリンへは届いたであろう。
「2人とも早速お出ましよ」
リアの言葉に2人も武器を構えた。
視線の先から現れたのは3人の男で、アサシン、忍者、ローグだと分かる格好をしていた。
「なんだ、アカデミーの奴等かこれは運がいいな」
「さっさと倒して次いくぞ」
完全に格下と決め付けた声が聞こえた。その反応にビットとあきらは嫌な予感がした。
「・・よ」
リアが何か呟いた。
しかしあまりにも小さすぎて誰も聞き取れなかった。
「あ?なんていった?降参でもするか?」
アサシンの男の放った言葉はトドメの一言となった。
「ふっざけんじゃないわよ」
リアの怒りが爆発した。彼女の魔力が高まるのを感じた。
空を見上げると雷雲が現れていた。
相対していた、3人も突然の事に我を忘れてしまい行動に移るまでに僅かながら遅れが生じた。
その僅かが結果的に致命的な結果になる。
<サンダーストーム>
広範囲に落雷が落ちる。
「ぐふっ」
アサシンの男にこれでもかというくらい落雷が降り注ぎ命中する。
マジシャンとはいえ彼女の内包する魔力は上位のウィザードにひけをとらない物がある。
そんな彼女の魔法が直撃してしまってはさすがに耐える事は不可能である。
アサシンの男は力なく倒れる。
「ちっ」
「このアマ」
残された二人は一斉にリアに向かって飛び掛った。
これにあきらとビットが応戦しようと前に出ようとした時
「さがれ」
別の場所から声が聞こえた。あきらとビットは咄嗟にその声に従う、ビットはリアを抱えて勢いよく後ろに跳んだ。
タイミングを合わしたかのようにビットが跳んだと同時に何かが勢いよく走り抜けた。
忍者の男はギリギリで避けたが、ローグの男は反応できずに思いっきり後方へ吹き飛ばされた。
僅かに遅れて男にあたった物が地面に落ちた。それは2本の矢だった。
他にも男がよけた場所にも2本の矢が突き刺さっていた。
「なろっ」
忍者はクナイを握り矢が飛んできた方に構える。
だが
「遅い」
今度は忍者の男の背中から聞こえた。
声に反応して振り返ろうとしたが、既遅し。
忍者の男は振り返る前に意識をうばわれその場に倒れた。
「無事なようだね」
ビット達の前に現れたのはリンだった。
どれだけの距離を走ってきたかは分からないが息一つ乱さずにいる。
「これからどうする」
あきらはリンに近づき今後の行動についての質問をする。
「この後は仲間と合流するつもりだが・・・どうやら向こうから来たみたいだね」
リンが振り返るとに3人も同時に視線を向ける。
「リンさんおまたせしました」
「いや丁度いいタイミングだよサクラ」
剣士の格好をした女性を見てあきらは驚いた。
以前、リンと相対した時に光の中から現れリンに連れてかれた女性だったからだ。
「・・・で、あの人は?」
「それが」
サクラは申し訳なさそうに視線を送ると
ドッカーーーーン
視線の先で大爆発が起きていた。それを見てリンは額を押さえた。
「あの人は・・・やりすぎだよ。仕方ない」
リンはあきらの方を向くとバッチを数個投げた。
「付いて来れるなら付いて来い」
あきらはバッチを掴みながら不適な笑みを浮かべた。
「上等」
リンが走り出すと同時にあきらも走り出す。
二人の距離は一定の間隔を保ちつつ爆炎の舞う方へと走っていった。
「あちらはあの方達にお任せしましょう。私達は・・・」
サクラは微笑みながら刀を抜いた。サクラが刀を抜いた意味をリアとビットも気づき構える。
「そこの剣士さんは私の後方を魔術師さんは私と剣士さんの間へ」
2人はサクラの指示に従い位置についた。
リアは直様に詠唱を始めた。
リアを中心にサクラとビットを覆うように火球が円周運動を始める。
ハイディング(隠れた敵)を暴く魔法サイトだ。
サイトが展開されると同時にサクラとビットの正面に何者かが現れる。
「やはり」
「そうくると思ったぜ」
サクラとビットはそれぞれの武器を全力で振り下ろした。
まず、ビットの一撃が何者かの短剣を砕きながら命中する。続いてサクラの一撃が命中、こちらは短剣を絡めとりながら吹き飛ばした。
ハイディングから現れた者の正体はアサシンだった。先程倒したアサシンと比べてこちらはかなりの腕のようだ。
「剣士さん魔術師さん、背後はお任せします。こちらの相手は全て私が引き受けます」
ビットはその言葉に耳を疑った。サクラの先には複数の気配を感じる。
普通に考えて剣士というだけでもこの大会ではかなり不利である。
大会に参加するのは1次職と呼ばれるソードマン(剣士)やマジシャン(魔術師)ではなく、その上位に位置するナイト(騎士)やウィザード(魔導師)といった2次職の者達が参加するからだ。
その為1次職のアカデミーチームは毎年、予選敗退が通例である。
そしてサクラもビット同様に剣士であった。アサシン一人でも厳しいにもかかわらず、サクラは一人で複数を相手にするといったのだ。
ビットがどうするべきか思案しているとリアがビットに話しかけた。
「任せてみましょう。あのリンって人と一緒にいるのですから」
リアは視線を外さず迫り来る気配を探る。この時点でビットにとって選択肢はなくなったと言えるだろう。
ビットは諦めリアの前に出た。
「それでは」
サクラの言葉に合わせたかのように迫り来る気配が急激に接近を始めた。
「やってやるぁーーー」
ビットの雄叫びが響き渡った。


「ぐぁっ」
「がっ」
苦悶の声が聞こえる。
(なんて奴だ)
目の前に現れた敵と思わしきウィザードを蹴散らしながらあきらは目の前で起きている事に目を疑った。
リンと素性の知れない女ローグの二人で複数のパーティーを蹴散らしていくのだ。
「アルさん右側頼みます」
「OKOKこのくらいどうってことないよー」
リンの射撃で追い込みそこにアルとよばれたローグが詰めよりきっちし止めをいれていく。
その速度が尋常ではないのだ、連携の制度をどれだけ高めようと人同士である以上意思の疎通が必要なのだ。
それは相手の考えを読み取る為にコンマ数秒は最低でも必要なのだ。
だが、この二人にはそれが適用されていないのだ。二人はお互いに好き放題動いているように見えて実際は最短のルートで動いていたのだ。しかし傍から見れば行動パターンが読めないくらい変則的な動きをする。
リンが右に動いたらアルは左に動き距離をあけたかと思うと一気に二人が突進をする。
更にアルの使うスキルが目まぐるしく変化する事もおまけしてより一層トリッキ-な動きになっているのだ。
クローキング、ローグの熟練者が身につけるスキルであり相手のスキルを1つだけコピーすることが出切るのだが使いこなせるものはほとんどいないといわれている。
しかし、目の前にいるローグは涼しい顔で複数のスキルを連発しているのだ。明らかに使いこなしているだろう。
既にあきらの目の前で、ボーリングバッシュ、クレイモアトラップ、コールドボルト、三段掌と繰り出されている。
これだけスキルが入れ替われば敵味方どちらも動揺を覚えるだろう、しかしながらリンはそれぞれに的確に対応し最善の行動をおこしている。ありえない世界であった。
「ぼけっとするな。次が来るぞ」
アルから厳しい声があがる。リンに至っては我関せずであった。
そんな態度にあきらはイラついた。
(そうですか。そういうことですか)
あきらの中で完全にスイッチが切り替わった。
リンを全速力で追い越すと敵陣のど真ん中に突撃していった。リンはニヤッと笑うと矢を10本同時に番え一気に撃ち放つ。
矢はあきらをすり抜けるように通過するとその奥にいた敵を貫く。あきらは相手の動きが止まるのを確認をしないで一気に詰め寄り斬りかかる。
「ふっ」
アルは少しだけ笑い、次なる獲物にむかって切り込む。
リンはやや遅れてアルの後ろを追いかけた。

(30分後)

『そこまで。対戦チームが2チームになった為試合終了です』
戦場に響き渡るアナウンスにリン、アル、あきらは足を止めた。
結果発表がされる前に3人の足元が光り始めた。予選の時と同じく空間転移だ。
「お疲れ」
アルが一言発すると同時にあきらは控え室へと移動した。
あきらは控え室を見渡すと遅れてビットとリアが戻ってきた。
「・・・」
「・・・」
ビットとリアは悔しそうに俯いていた。どうやらあちらでも力の差を見せ付けられたようだ。
3人は無言で控え室を後にした。

午後の本選1試合目から波乱の幕開けとなった。
予選、本選でアカデミーのチームが通過したのは異例中の異例。
更に素性、経歴不明のチームとの1、2位通過ともなると大会始まって以来の珍事であった。
しかし、波乱はこれだけに留まらなかった。
本選2試合目でもありえない結果がでていたがビット達が知るのは決勝当日であった。
決勝は確実に荒れるだろう、前代未聞の激闘がこれから巻き起ころうとしていた。
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第10話:思惑

「リア右いったぞ!」
あきらの声に反応し巨大な火球が空中に突如現れ急降下する。
「吹き飛びなさい!!」
リアは杖を真横に振ると同時に火球は地に着弾し爆散した。
タイミングを見計らってビットがまだ煙がたちこめる爆心地に突撃する。
「もらっていくぜ」
ビットの手には大会で使用されているバッチが握られていた。
予選第3試合が始まってから20分経過していた。あきら達は順調に2組目のチームを撃破していた。
実はアカデミーからの推薦チームが過去予選突破をした事は一度しかない。
その為、会場で観戦しているアカデミーの生徒達は異様な盛り上がりを見せていた。
あきら達は間違いなく現在バッチの保有数で上位争いの一角に入っていた。

「今ので合計6個だな」
あきらは地図を広げて現在地を確認する。
「確か、今ここで大半は中央を目指すと考えると」
ビットが地図の端を指しながら中央へのルートをなぞる。
「それだと乱戦に巻き込まれるわね」
リアは地図のルートを確認し中央への道で合流場所が固まっている事を指摘した。
現状、チームの数が減れば自ずと残されたチームは中央へと集まってくる。
理由は簡単であった。中央は市街地となっており、最初に選挙したチームが有利になる。
その為、どのチームも数が減り始めた今中央を目指すのだ、結果合流地点では乱戦になりやすい。
大半はこの乱戦である程度結果が決まる。乱戦に参加しない結果的にバッチの奪い合いに参加しない為、後々無理にでもトップチームとのぶつかり合いになる。
そうなると、市街地を占拠している側が断然有利になる。
あきら達はどうあってもこの乱戦に参加するしか選択肢がないのだ。
「・・・ん?ここはもしかして」
ふと、あきらは地図をみてて気づいた。
合流地点よりやや離れた場所ががけになっているのだ。
「リア、お前の魔法の射程でここから撃つことはできるか?」
あきらの問いにリアは崖の高さから射程の計算にを始めた。
「問題ないわ」
リアの返答にあきらは頷く。
「ビットは、リアの護衛をしてくれ。多分だが2,3発撃ち込めば反撃がくるだろうからそいつからの守りだ」
ビットはあぁっと頷いた。
「俺は第1射と同時に敵陣に切り込む一撃目で倒れた奴らのバッチを奪う。第2射は第1射の5秒後だ」
3人はお互いの手筈を確認した後、中央に向かって移動を開始した。

移動を始めて20分程で目的の崖にたどり着いた。崖の下では予想したとおり既に乱戦が始まっていた。
既にいくつかのチームが崩壊し残るは自分達を除いて6人つまり2チームだけであった。
「手筈どおりいくぞ」
あきらの合図でリアは詠唱を始める。
「穿て雷(イカズチ)よ、我らの前に立ちはだかりし敵を葬れ」
頭上に雷雲が呼び出される。崖下にいた者達も異変に気づき回避行動を起こそうとするが既に遅かった。
<サンダーストーム>
マジシャンが扱う魔法の中で最も広範囲で高度な風属性魔法が発動する。
無数の落雷が崖下にむかって降り注ぐ。爆音と共に砂塵が舞う。
あきらはすかさず崖を疾走する。ほぼ90度にちかい崖を起用に走り砂塵の中に飛び込んだ。
「!やっぱ楽はさせてくれないか」
リアの第3射が放たれると同時に背後から気配が感じた。
ビットはすかさずリアを庇うように飛び出す。その先には先ほどまで崖下にいた騎士の男とウィザードの女がいた。
「奇襲とは、やってくれる」
騎士の男はこれでもかというくらいにビット達をにらみつけた。
「悪いな、こんな場所で止まっておくわけにはいかないんだ・・・よーーーー」
ビットは騎士に向かって疾走する。やや遅れて騎士の男も動き始める。
ウィザードはこちらに聞こえないように詠唱を始めていた。
高位の魔導師は魔法の内容を悟られないように色々と工夫をしている。
例えば、このウィザードのように声をある程度抑えるといった事はよくあることだ。
他にも、上位になれば詠唱時間の短縮、極限の領域でいえば無詠唱にいたるものもいる。
「そうやすやすと大魔法は撃たせないわ」
『大気中に存在する水よ氷柱となりて敵を穿て』
<コールドボルト>
ウィザードの頭上に氷柱が現れ勢いよく降り注ぐ。
ウィザードの詠唱は強制的に解除され、かなりのダメージを与えただろう。
基本の魔法でもあるコールドボルトだが高い魔力を持つリアの場合、威力は普通のマジシャンの比ではない。
「悪いけどこんな場所で足踏みできないわ。このまま舞台から降りてもらうわよ」
リアの容赦なく言い放つとトドメの魔法の詠唱を始める。

「でぇぇぇい」
ビットは槍を振り回し騎士の持つ大剣を弾きながら前進する。
基本的に槍と剣の勝負では槍に軍配があがる。しかし槍を使う騎士が少ない事には理由がある。
扱いの難しさ及び剣に比べて重量がある為相応の腕力が求められる。
しかし、扱いきれるなら確実に槍側が有利になる。
「っく、重い一撃・・・だが」
騎士の男は剣を横に振りぬく。
<ボーリングバッシュ>
ビットを弾き飛ばしつつリアを巻き込む狙いがあった。
しかし
「みえみえなんだよ」
<バッシュ>
ビットは騎士の振りぬきをかわして背後へとまわりこんでいた。
騎士の男は背後からの一撃になす術もなく意識を刈り取られた。
「よし、これでこっちは片付いたな。あきらの援護に・・・」
ビットが振り向きながらリアに言うがリアはビットの横を指差していた。
「もう終わった」
指されたほうに視線をむけるとほぼ無傷なあきらがバッジをたんまりと持って佇んでいた。
『そこまで』
『予選第3試合の勝者はこちらの方です』
突如ビット達の頭上から光が挿し込んだ。
「どうやら俺達が勝者のようだ」
あきらは冷静に状況を把握し2人に伝える。2人とも納得し手にしていた武器を納めた。
ほぼ同時に自分達が立っていた空間が歪んだ。そして、次の瞬間には控え室に3人とも戻っていた。
どうやら部屋自体が空間転移の力をもっているようで大会主催側の判断で試合会場との行き来ができるようになっているようだ。
「なんだかんだ余裕をもって予選突破できたわね」
リアは髪をかきわけつつ控え室の椅子に座る。
「だが、午後の本戦は今回のようにはいかないだろうな」
あきらの言葉にリアもそうねと答える。
あきらとリアは話をしていて違和感を覚えた。
2人は部屋を見渡す。そこにはいないといけないはずの存在がいなかった。
「ビットはどこいったの?」
リアの疑問と同時にあきらは部屋を飛び出した。


「あれ?ここは?」
あきら達が控え室に戻った時を同じくしてビットは見覚えのない場所にいた。
多分、会場のどこかではあるのだが全く見覚えがなかった。
辺りを見渡すとそこには一人の青年がいた。
「こうやって正面きって話をするのは初めてかな」
青年は少しだけ表情を崩した。
ビットはその青年を知っていた。
「お前、リン!」
ビットは驚きを隠せなかった。まさかいきなり今まで探してきた人物が目の前に現れるのは予想外だった。
「そうだ、リアとあきらは」
ビットは辺りを見渡すが2人の姿はどこにもなかった。
「2人は既に控え室に戻っている。ここには君と僕しかいな。ああ、危害を加えるつもりもないよ。実はお願いがあって君をここに呼んだんだ」
ビットはリンの表情を伺う。ビットにとってリンを見るのはこれで3回目、1回目はフェイヨンから少し離れた場所で強大なモンスター達に果敢に挑んでいった姿、2回目はつい先程予選で逃げ回っている姿、そして3回目は今だ。どれもリンであるが本当の姿はどれにあたるのか?もしかしたら今のリンも偽っているのかもしれないと疑っているのだ。
「そう怖い顔をしないでくれ話しにくい」
リンはまいったなーと呟きながら困った顔をした。
「とりあえず話を聞こう」
ビットもこのままだと話が進まないと判断したようだ。
「話は簡単だ、今日の午後の本戦。僕達と手を組まないか」
「どういうことだ」
リンの言葉にすぐさまビットは聞き返した。
「正確にいうとどうしても、明日決勝に僕達は出ないといけないんだ。その為には午後から行われる本戦で最低でも2位以内に入る必要がある」
そう、午後から行われる本戦は予選と違い上位2チームが明日の決勝に出場できる。
「1位通過はそちらに譲る。今の君達だと本戦を勝ち抜くのは厳しいだろうからこの提案はありだと思うんだがどうだろう」
リンの提案にビットは考え込む。何故リンは今このような話を持ちかけてきたのか?普通に考えればアカデミー生よりも現役で活動している冒険者の中で話ができそうな相手を選んだ方がいいだろう。
「俺一人だけでは答えは出せない。他の2人と一度話して決めたい」
ビットは慎重に考えた末、答えを保留した。これについてはリンも予想していたのだろう表情に変化はなかった。
「ああ、答えは本戦始まってからでいいよ。君達が僕達の敵として動かなければこちらは君達のフォローもしよう。いい答えを待っているよ」
リンはそういうと天井を見上げた。ほぼ同時にビットの足元に魔方陣が現れビットは控え室に飛ばされた。
「ビット!!どこいってたんだ」
いつもは冷静なあきらが慌てて部屋に飛び込んできた。
遅れてリアも部屋に飛び込んできた。
「何処行ってたのよ。本気で心配したんだからね」
少しだけ怒り気味なリアにビットはどう弁解しようか悩む。
「それで、実際何かあったんだな」
あきらの言葉にビットは頷いた。
「実は・・・」


会場の屋根裏に転移したリンは空を見上げた。この行為は特に意味があるものではなく彼の癖みたいなものである。
「あれで良かったのですか?」
突如リンの横にフードを被った仲間の声が聞こえた。
「ああ、あれで問題ない。味方になろうが、なるまいがあまり関係ない」
「リンさんがそう仰るのであれば私は信じて動くだけです」
仲間の堅苦しい言葉にリンは少しだけ苦笑いを浮かべた。
「次からは僕だけでは厳しいだろうから君にも頑張ってもらわないとね」
「はい、任せてください」

会場から歓声があがった。残りの予選組みも終わり遂に本戦メンバーが出尽くした。
アカデミー代表は大会初の予選通過を果たし本戦へ、そしてあきら達が警戒するリンと未だ素性不明の2人。
更に決勝戦出場に拘るリンの目的は・・・
激化する本戦でそれぞれの思いが交差しぶつかり合おうとする。
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