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REQUIEM館

第13話:終幕そして新たなる物語へ

戦況は互角であった。
数で圧倒する魔物の群に対して個々の戦力で圧倒しているリン達の激突は凄まじいの一言だった。
転生者としての力を解放されたリンはスナイパー、アルはチェイサー、サクラはパラディンとしての力を全力でふるう。3人はお互いの攻撃範囲を理解し互いに連携しながら魔物を蹴散らしていく。だがそれでも親玉であるダークイリュージョンは次々と魔物を召還し数押し切ろうとする。
一進一退の攻防が続く。
「次から次へと」
アルは舌打ちをしながらも目の前に迫ってきた魔物レイスを一刀の下に切り伏せる。そのまま次の敵に視線を向けた時、敵の頭上から火球が勢いよく叩きつけられた。
「苦戦してるわね、助けは必要?」
声の主はリアだった。これだけの魔物を前に怖気づくどころか前線にまで出てきたのだ。
「いらない」
アルは素っ気無い声で拒否を告げた。この行動にリアは言葉を詰まらせた。
まさか即答で返されるとは思っていなかった。しかもそれが拒絶であるのだ。
「あーそうですかー、3人の中で一番冷静な人だと思ったけどただの残念さんでしたかー」
ピシッ
なにかがひび割れるような音がした。
「誰が残念さんだって」
「聞き返す時点で理解してるよね。それとも頭悪いの?」
お互いに睨み合い威圧しあう。しかし魔物達にとって止める必要も無くリアも敵と認識したのか二人に襲い掛かってきた。
「邪魔を」
「するなーーー」
アルとリアは矛先を再度魔物達に向け怒りという力も上乗せしたたきつけた。
魔物達にとってみれば理不尽このうえないであろう。
「あーあー、派手にやっちまってるなー」
ビットは苦笑いをしながらサクラの方へ向かった。
「あらビットさんどうしました」
サクラはビットが近づいてくるのを気配で察知し、魔物達を切り伏せながら話しかけてきた。
「ここはお互いに共闘したほうが利があるだろ」
ビットは槍を構え笑って見せた。魔物の群れをみても尚戦う意思があるのは大したものだとサクラは思った。
「分かりました、お願いしますね」
サクラの返事に応じるようにビットは魔物の群れに向かって走りこんだ。

「っ!ハッ」
リンは指の間に矢を挟みこむようにし、高速で弦に番え放ち続ける。一度に最大4連続で射撃を行うことで一射一射のタイムロスを潰していく。
魔物に近づかれながらも冷静に距離を保つ為にたえず移動する。
リンが矢を番え放とうとした時に射線上に人が現れた。
「セイッ」
その者は容赦なく手にした短剣を振りぬき魔物を一刀両断した。
(ハイディング・・・あきらか)
リンは瞬時にその者があきらである事を理解し照準を奥にいる魔物に合わせる。
状況が変わったことによりリンは即座に矢を挟み込む持ち方から通常時の持ち方に切り替え目一杯矢を引き絞る。
弦からギリギリっと音がした次の瞬間矢は放たれた。
〈シャープシューティング〉
放たれた矢はあまりの速さに、標的の魔物に直撃すると同時に周囲へ衝撃波を巻き起こした。
直撃した魔物は絶命し周囲にいた魔物達もかなりの被害をうけ後退しようとした。
しかし、そこに問答無用といわんばかりに全力でかけこんできたあきらが魔物達を蹂躙していく。
あきらが突撃したのを確認してリンは矢を番えながら前進した。
「サクラ、アルさん今が好機だ」
「はい!!」
「その言葉待ってたよ」
サクラとアルは返事をするとお互いに最大火力の魔法とスキルを叩き込む。
<シールドチェーン>
<サプライズアタック>
「ビット!リア!」
同じくあきらの声にビットとリアが追撃を掛ける。
「まかせろーーー」
<マグナムブレイク>
「オッケー」
<サンダーストーム>
6人は知らず知らずの内に噛み合った連携をとり魔物が増える速度以上の速度で撃退していく。
「ほー、これほどか」
6人の実力目の当たりにして黒騎士の男はつぶやく。
そしておもむろに男は腰に下げた大剣を引き抜いた。
「だがここであやつを葬らねば計画に支障がでる」
男はそのまま大剣を真横に振りぬいた。
剣の先から衝撃波が生まれリンを襲う。
「!!」
魔物と対峙していたリンにとって完全な不意打ちだった。
「リンさん!」
<ディボーション>
サクラの焦り声と共にリンとの間に光の線が現れる。
「っ」
リンに直撃した衝撃波はリンではなくサクラを傷つけた。
サクラの腕や足から血が噴出した。
「サクラーーー、こんのやろー」
アルが周囲の魔物蹴散らしサクラの元に向かって走ろうとする。
しかし
「周りをみえなくなるとは未熟な」
いきなり目の前に男が現れる。
「しまっ」
男の大剣を短剣で受け止めるが、受け止めきれずそのまま後方に吹き飛ばされ地面に叩きつけられる。
「がはっ」
アルは苦痛に顔をゆがめて立ち上がれない。
<ウィンドウォーク>
風の力を纏いリンが男の前に立ちはだかる。
「フィー」
リンの呼び声にシルフィーゼがリンを襲おうとする魔物達に向かって空から突進する。
全力で弓を引き絞り男に向かって矢を放つ。
「ぬう」
男は剣で矢を受け止めるがかなり威力があるのか後ろに吹き飛ばされ後退する。
「さすがだな、だがお前がここにいていいのか」
男の言葉は今の現状を的確に示していた。
サクラが倒れ、アルも戦えるとはいえかなりのダメージを受けている。
残る3人も善戦してるとはいえ、数の多さに少しずつ押され始めている。
だがリンがここで男を食い止めない事には反撃すらできなくなってしまう。
リンは無言で男に矢を放つ、男の方も無言でこれを打ち落としつつリンに接近しようとする。
しかしリンの素早い動きがそれを許さない。ゆえに膠着した状態が続く。


「だぁぁぁ」
ビットがサクラを庇うように立ち魔物を切り伏せる。
サクラがいることで成り立っていた連携が失われても、ビットは孤軍奮闘していた。
「こんな・・・」
ビットは血まみれになりながらも魔物の群れに向かって一歩踏み込む。
「こんなとこで・・・」
ビットは槍を振り回しながらもさらにまた一歩踏み込む。
「死んでたまるかーーーー」

「ちっ」
あきらは器用に魔物達の振りかざす攻撃を避けながら切り伏せていく。
「くっ」
突如あきらの体がぶらつく。時折避け切れずダメージが蓄積したっているのが厳しくなってきたのだ。
だがあきらは気合だけで耐え、目の前の魔物に向かって走る。
「まだまだーーーーーー」

「邪魔ー」
魔物群れを高速詠唱で生み出した火球で焼き払う。
火系の魔法は不死の魔物達に相性が良い為近づかれる前に焼き払うことができているがそれでも数に押され移動しながらの戦いを強いられている。
リアとしてはビットへの加勢をしたいのだがそれができずもどかしかった。
「もっと、もっと力があれば」
リアは両手を合わせるようにし火球を作り出す。
(もっと、もっと力が欲しい)
突如リアの手から火球が消えた。
「え!!」
この事態にリアは動揺してしまった。
(もしかして詠唱に失敗した!)
目の前には魔物が迫っていた。慌てて再度火球を作り出そうとするが間に合わない。
「くっ」
リアは目の前にせまる魔物の攻撃に恐怖を覚え目を瞑る。
しかしくるであろう衝撃がこない。かわりに
ズドーン
大きな音が聞こえた。恐る恐る目を開くと目の前に強大な隕石が降り注いでいた。
「これは・・・」
目の前の光景に呆然とする。
降り注ぐ隕石に魔物達はなす術もなく蹴散らされていく。
メテオストーム・・・マジシャンであるリアの上位に存在するウィザードが使用できる魔法である。

「ぎりぎり間に合いましたね」
リアが振り向くと先ほどまで誰もいなかった場所から声が聞こえた。
「あなたは?」
「そんなことより今はあちらをどうにかすることが先ですね」
姿が消えたと思うとアルの前に現れる。
「アルさんにしては油断しましたね」
「すまねぇ、小雨助かったわ」
小雨のヒールによって持ち直したアルが立ち上がる。
「リンの援護にいってくる」
アルはそのままリンの元へと駆け出す。
「サクラの元にはあの人がいってますね」
小雨は両手を頭上に掲げ上空を見上げた。
小雨を覆うように光の柱が上空へと伸びていくと、続いてビット、あきら、リンを覆うように光の柱が降り注いだ。
「これは」
突如の出来事にビットは動きを止めた。
『少しの間だけ力を貸してあげましょう』
空から声が聞こえると同時に今までにない力が3人の中からあふれ出してきた。
「これは」
あきらは自分の両手をまじまじと見る。
そこには先ほどまで握っていた短剣ではなくカタールが握られていた。
そのカタールは爆炎のカタールといわれ武器自体に火属性の効果が付随し斬る物全てを焼き尽くすといわれている。
迫り来る魔物に一振りすると驚くくらい簡単に消滅させることができた。
「そういうことか・・・なら」
あきらは状況を理解し今果たすべき事に全力を注ぐ。
迫り来る魔物の群れに突撃し問答無用で斬りかかる。
<ソニックブロー>
カタールから繰り出される高速の8連撃に成す術もなく魔物は蹴散らされていく。

同じくしてリアも理解する。
先ほど発生したメテオストームは偶然にも自分が放ったものであると。
そして今まで以上に充実した魔力、間違いなく彼女は今ウィザードの力を行使できるのだ。
(それなら)
リアはとある魔法を行使する為に詠唱を始める。
自然と頭の中に浮かぶ言葉を紡いだ詠唱は熟練のウィザード顔負けの速度で詠唱が完成する。
<ストームガスト>
強烈な吹雪がリアの正面に発生し、迫り来る魔物達を引き裂く。
あまりにも強烈な吹雪は目の前にいた魔物達全てをズタズタに引き裂いた結果周辺の地形まで変形させていた。

「体が軽い」
ビットは戦場を一気に駆けるける。
魔物はビットを追いかけるように転進する。しかしビットはそれすらも無視し魔物の群れの中央に飛び込む。
ビットを囲む魔物の数はおよそ50。
ビットは中央まで潜りこむと今まで来た方に振り向く。そして
<ボウリングバッシュ>
目の前にきていた魔物を持っている槍を全力でたたきつけた。
魔物は吹き飛ばされ後続を巻き込む。ビットは後続を巻き込んだ事を確認し更に止めといわんばかりに跳躍した。
「はぁぁぁ」
<ブランディッシュスピア>
振りぬかれた槍は衝撃波を巻き起こし魔物を飲み込む。
追いかけてきた全ての魔物を巻き込み強烈な爆発を起こした。
「次ーーー!!」

3人の活躍によって押されかけていた均衡がみてえされた。
「さて、これで形勢逆転だ」
アルは黒騎士を見て宣告する。
「確かに、これ以上は厳いだろうな」
黒騎士は焦る様子はなかった。リンは黒騎士の態度に違和感を感じた。
(こいつの狙いは結局何なんだ)
黒騎士の目的がただの襲撃だけだったのだろうか?
疑問はあるがそれでも今目の前の黒騎士を追い詰めたのも確かだ。
「今回はこの辺で退場するとしよう」
「そんなことが許されると」
黒騎士の言葉にアルが即座に反応し飛び込む。
しかしアルの短剣は黒騎士にあたることなく空を斬る。
「ちっ」
アルは舌打ちをして少しはなれた場所を見る。
「不用意だな」
黒騎士の言葉にリンは気づいた。
(しまった!!!)
リンは手にしていた弓を投げ捨てて一目散に走り出した。
「シルフィーゼ、あいつらを守れー」
リンの声にシルフィーゼが飛び立つ。
「サクラ!ビットを頼む」
ほぼ同時にあきら、ビット、リアの3人の足元に魔方陣が浮かび上がる。
「なっ!これは」
ビットは魔方陣から離れようとするが魔方陣はビットの足元から離れようとしなかった。
「くっ」
魔方陣自体の効果が分からない現状、捕まるわけにはいかない。
ビットの中で焦りが募る。
「ビットさん飛んでください」
突如声が聞こえた。足元に気が向いていたビットからしてみれば不意であった。
しかしビットは素直にその言葉に従い飛び上がる。
「やぁぁぁぁぁ」
やや遅れてビットの足元にある魔方陣に剣が突き刺さる。
魔方陣は剣を突き刺された場所を中心から薄れていきやがて消滅した。
「ビット大丈夫か!!」
ビットの元にあきらが駆け寄る。
「ああ、間一髪サクラさんが助けてくれた。そっちは?」
「こっちは奴の鷹に助けられた」
あきらの頭上を旋回している鷹を見上げた。
「・・・リアはどうした?」
「おいおいおい」
ビットとあきらは顔見合わせた。
「くっ!このままだと間に合わない」
リアの足元の魔方陣が完成しかけているのが見えた。
今から魔方陣を解除するのはほぼ無理だろう。
「手を出せ」
リンは叫ぶ。リアは振り向きながら手を伸ばす。
リンはリアの手を握ると勢いよく引いた。
リアを魔方陣から引きずりだすとリンはリアを抱えながら地面を転がった。
ほぼ同時に魔方陣が完成し地面から火柱が巻き起こった。
あの火柱に巻き込まれれば助かりはしなかっただろう。
もしそうなっていたらと考えるとリアはぞっとした。
「リアーー大丈夫か」
ビットの声にリアは我に返り立ち上がりながら振り向いた。
「ええ、私は大丈夫。この人が助けてくれたか・・・」
リアはリンを見下ろして何かに気づき驚きの表情をしていた。
今のリンは、いつも被っている帽子がなかった。火柱に巻き込まれてしまったのだろう。
そしてその素顔にリアは目を見開いた。
「にい・・・さ・・・ま?」
「え!!」
リアの言葉にビットは理解が追いつかなかった。
「ちがう。俺はお前の兄ではない」
リンは冷たく言い放つと立ち上がった。
「リンさん大丈夫ですか?」
「ああ、ギリギリだったが何とかなった」
駆け寄ってきたサクラにリンは振り返って答えた。
「やつは?」
「すまん、取り逃がした」
アルが申し訳なさそうな顔で歩いてくる。
「あらかじめ仕掛けていたんだろう。やられたな」
「多分そうでしょうね」
声がしたほうを見ると小雨ともう一人神官服の男性が現れた。
「それより、魔物達はどうなりました?」
サクラが周囲を見回すがダークロードはおろか魔物の気配が消えいてた。
「ああ、あれかとりあえず片付けといた」
さらっと答えた内容に小雨を除いた6人はあっけに取られた。
リン、アル、サクラの3人はまたかといった顔をしていた。
あきら、ビット、リアの3人は軽々しく言い放たれた言葉を理解することに時間を要した。
「それでこれからどうするの?」
小雨は6人を見た。ようは残った2チームで試合再開をするのかと聞いているのだ。
「いや、流石にこれ以上は厳しい。こちらはリタイアだな」
同時にリンは地面に仰向けになって倒れた。
「俺も同じく限界だ。これ以上は勘弁願いたい」
あきらもどうやら限界だったらしくリンの横に座り込む。
「ここは引いた方がいいだろう」
アルは周りを一度見渡してから小雨に向かって話しかける。
小雨もその言葉に概ね同意のようで無言で頷いた。
小雨は手をかざし小さく呟くと光の柱浮かび上がった。
「では私たちはここを去りましょう。優勝はお譲りします。あくまで私たちはあの者を追いかけてきただけで目的は達成できませんでした。これ以上ここにいる理由はありません」
サクラが光の柱に入り姿を消す。
「まぁ色々と面倒だろうが後始末は頼むわ」
アルは振り向きざまに、にやっと笑った。あきら達がその笑いの意味に気がつくのはもう少し後の話だった。
リンは起き上がると何も言わず光の柱に入ろうとする。
「まて!」
あきらは起き上がりリンを呼び止める。その言葉にリンは足を止める。
「今は無理だが。絶対においついてやるからな」
あきらの言葉にビットとリアもリンへと視線を向ける。
リンはフッと笑うと手を上げながら光の柱へと入っていった。最後に後から来た小雨達が光の柱に入ると柱は消えていった。

・・・

大会から1ヶ月がたった。決勝は結局正体不明の何者かが参加者を襲ったという事だけが分かりそれ以外の事は一切情報が開示されなかった。
また、混乱の状態の中アカデミーからの参加者であるビット達が何者かを追い払った事は公になっていた。
その結果、アカデミー初の優勝者として扱われることになった。
しかしビット達はそのことについてはあまり納得していなかった。
それは、参加者の名簿で1つのチームだけ名前が分からなくなっている者がいた。リンを筆頭とした3人はあの大会のメンバーに参加はおろか存在すらしていない事になっていた。
その3人がいなかったら全滅していたのは間違いないだろう。ゆえにビット達はいつか彼らに追いつこうと鍛錬に励むのだった。

そして・・・

「それじゃ今日も一日気合をいれていくかー」
ビットは力強く槍を握りしめた。
「結局あなたは卒業しても相変わらずよね」
リアは半分呆れた感じでビットの横につく。
「はやくあいつらに追いつきたいからな。一日たりとも無駄にしたくないんだよ」
「そうね」
ビットの返事にリアも頷いた。
そう今日彼らはアカデミーを卒業する。大会で優勝したことで実力も実績も十分と判断されての特例だった。
ビットとあきらが入学してから約半年だった。
この速さは過去の事例と比較しても最短の卒業者と同レベルとなる。これだけの優秀なアカデミー生に各ギルドや宮廷からのスカウトもあったが彼らは全て断った。
リアも城に戻ってくるように使者が来たがそれを無理矢理断りビットに同行する事を選んだ。
2人がアカデミーの転移門の前までくるとそこにはあきらがいた。
「行くぞ」
あきらの言葉に2人は頷くとほぼ同時に転移門が起動した。
3人が転移門に踏み込むと光の柱が3人を包み込んだ。

彼らの冒険はこれから始まる。
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第12話:更なる戦いへ

「ばっかやろー」
誰かの声が聞こえる。誰だろう・・・ああ、そうだこの声は確か・・・



「皆準備はできてるな」
リンは控え室の椅子から立つと、アルとサクラの二人に振り向いた。
二人が小さく頷くのを見たリンの顔からは普段以上に感情が消えていた。
二人はリンにあえて声をかけず試合が始まるのを待っていた。
『時間になりました決勝戦に出場される方は控え室より順次転送を開始します』

転送のアナウンスが流れ決勝会場にビット達3人が転送が終わった直後、少し離れた場所で爆炎が舞い上がった。
「な!なんだー」
いきなりの出来事にビットは驚きの声を上げた。
「もう戦闘が始まってるというの早すぎる」
リアは瞬時に周囲を警戒する。気配は感じないところを見ると戦闘が始まっているのは一箇所のみ。
「いくぞ」
あきらが走り出しビットとリアも送れて走り始めた。
爆発以外にも落雷や吹雪がまっているのも見えた。

「リン、流石に戦力差が倍だと下手に出れないよ。どうする」
物陰に隠れていたアルの冷静な声にまだ余裕があるのが伺える。
「・・・サクラ」
「ええ、任せて」
サクラは剣を抜くと物陰から飛び出した。リンも同時にサクラの後を追うように飛び出す。
「もう、この子達はいつも無茶するんだから」
アルはぼやきながら二人に続き飛び出した。
敵は6人、どうやら決勝の4チームのうちリンとビット以外のチームはぐるのようだ。
更に性質が悪いのが6人のうち2人がウィザードであった。交互に魔法を連発することでこちらの隙をあたえないようにしているのだ。さらにバードのスキルにブラギの歌で詠唱時間の短縮を図るという徹底振りだ。
残り3人は騎士、クルセイダー、プリーストと完全に防御特化でウィザードを護衛する形で展開している。

ウィザードの詠唱が遠くからでも聞こえきた。
「これは・・・ストームガストよ」
アルは即座に詠唱内容から大魔法であることを察知した。
リンは即座に弓に矢を番え中央にいたクルセイダーに向かって放った。
クルセイダーは避けられないと悟ると盾を前方に構えて耐えようとした。
「ぬっ」
クルセイダーは矢が盾に当たると僅かだが後方に吹き飛ばされた。
アーチャーのスキルチャージアローだ。前衛にいた騎士、クルセイダーとプリーストの間に僅かだが隙間ができた。
サクラはその僅かな隙間に無理矢理体を捻じ込んだ。
そして
<マグナムブレイク!!>
地面が爆発し強烈な爆風が3人を覆う。
「うあああ」
騎士の呻き声があがる。他の2人も声には出さなかったがそれなりにダメージを与えたようで苦悶の表情を浮かべていた。
同時にサクラも自分の放った力の余波で傷だらけになっていた。
「リンくるよ、耐えろ!」
アルの声にリンは姿勢を低くして構えた。
ほぼ同時にウィザードの詠唱が終わった。
<ストームガスト>
「ぐっつ」
「っ」
アルとリンを覆うように強烈な吹雪が荒れ狂う。
まともに直撃した、誰が見ても明らかであった。それ故に2人目のウィザードは油断した。
本来であればここで追撃の魔法を打ち込むべきであった。
しかし、僅かな油断により一瞬だけ詠唱が止まったのだ。
吹雪の中からアルが飛び出してきた。
「なっ!」
これにはその場にいた6人全員が驚きを隠せなかった。
慌てて騎士とクルセイダーの2人が盾になるように正面から迎撃の態勢をとる。
しかしここで、先ほど同じくストームガストに巻き込まれたアルが2人の間に割り込む。
「態勢を整える前に突き崩す!」
アルの素早い連撃に騎士はたたらを踏んだ。
この時点で勝敗は既に決していた。
プリーストは素早く杖を振りヒールを騎士にむかって唱えようとする。
「判断を誤ったな」
リンの冷めた声と共にプリーストの胸に矢が突き刺さった。プリーストは何が起きたか理解できないままその場に倒れそのまま意識を失った。
リンは回復役であるプリーストを最初に叩く事を重視し、サクラを先行で突撃させマグナムブレイクを撃たせた。
事実マグナムブレイクの反動で前衛にいた3人は僅かながら後退する事になりプリーストとの間に隙間ができた。
更に隙間をこじ開ける為にストームガストを全力で凌ぎきったアルが、無理やりその隙間に潜り込みこじ開ける。
これによりプリーストは前衛と後衛の中間に孤立してしまう。これだけの御膳立てがされてリンが外すわけがなく結果6人の要であった回復役を最初に失う事になった。
僅か3人(うち2人は1次職)があろうことか6人を相手に力量で上回っている、悪夢といっていいだろう。
そこから先は一方的な殲滅戦であった。
リンが後方から容赦ない矢の乱射でウィザード2人が孤立しアルが騎士達を牽制している間にサクラがウィザード2人を撃破、残った3人の抵抗も虚しく倒されていった。

ビット達が現場に到着したのはそれから僅かしてだった。
「これはひどいな」
あきらの言葉をビットもリアも否定しなかった。
周囲を見渡すと6人がその場で気絶しており、周囲には争った痕跡が至る所にあった。
地面が抉れクレータみたいに陥没しているとこもあれば土が焦げた匂いを発しながら黒ずんでいた。
他にも岩が凍り付いていたり、破砕されたような後もあった。今大会、最大の攻防戦があったのは間違いないだろう。
そしてその攻防戦の勝者は・・・
「お前達!!にげろ」
突然の声にビット達は声のした方に視線を向けた。
そこには
「なっ」
視線の先には傷だらけになりつつも弓を構えているリンがいた。
そしてその先には今まさに召還され実体化しようとしている魔物の群れがいた。
群れとはいえ数こそ少なかったがその魔物達に問題があった。
ダークイリュージョンを主とした不死の群れであった。
「ふっ、大金を払った割にはいまいちな奴がでてきたな」
魔物の群れの中央に黒い甲冑を纏った男がいた。
「てんめぇ、やはりあの時の黒幕か」
「あの時というのがどの時をさすのか分からないな」
リンの雰囲気が明らかに剣呑な物にかわっていく。
アルとサクラもリン程ではないが今までに無いほど警戒をしていた。
あきら達もどうするべきか思案していると男がサクラを指して口を開いた。
「さて、この場に私が来たことには理由がある。そこの彼女を私達に渡してもらおうか」
びきっ
空気が割れるような音がした。いや、正確にはそんな音はしていないだろう。だがこの場にいた全員がその音を聞いたような気がした。
リンの背中からとてつもない殺気があふれ出してるよう見える。これには近くにいたサクラはおろかアルさえも後ずさりする程であった。
「返事はどうした。言葉も分からない生物にでもなったか」
男は見下すようにリンを見る。
「黒甲冑さんよー。あまり、うちのリンを甘く見ない方がいいとおもうよ」
突如アルが不適な笑みを浮かべながら、リンに向かって叫んだ。
「リン!サクラ!!時間だ。限定解除だ全力でやっちまうよ」
アルの声と同時に空から光の柱が3人に降り注ぐ。
光の柱が3人を包み込み輝きが増したかと思うと光の柱は無数の羽に変わりながら弾けとぶ。
「なるほど、そういうことか。あの姿であの力量おかしいとは思っていたがまさか転生者とはな・・・選ばれし神の子であったか」
男は納得しつつ剣を抜き空に向かって振り上げた。
「第2ラウンドといこうか」
アルがステップを踏みながら構える。
サクラは剣ではなく片手槍に持ち替えペコペコに跨がる。
そしてリンは
「来い!シルフィーゼ」
リンの気合の入った声に呼応し空から白銀の鷹が舞い降りてきた。
「かかれー」
男が剣を振り下ろすと同時に魔物の群れとリン達が激突する。
大会とは別の知られざる戦いが今始まる。




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