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REQUIEM館

第3話:出会い

世界の何処かでは今も人が理不尽な死を迎えている。
それは国によっては他人事で実感のわかない話かもしれない、もしかしたら今自分の命を奪おうと目の前に迫っているかもしれない。
だが敢えて言おう。この世界は死の匂いが濃すぎる。

「おい、誰かいないのか。返事をしろ。おいっ」
とある室内に若い男の声が響き渡る。
だが返事はどこからも訪れなかった。
「またなのか、また人が消えたのか」
若い男は室内を飛び出し別の部屋に飛び込む。
せめて誰か一人でもいないのか・・・
幾つ目の部屋だろうか・・・既に数える事は諦めた。
そしてここには誰もいないのだろうと諦めかけていた。
「・・・・っ・・・」
男はハッとした。今わずかだが部屋の中から声が聞こえたような気がした。
「誰かいるのか!!」
男はドア開ける前に一言声をかける。だが返事はない。
仕方なく壁に設置されていた9つのボタンを決まった順に押すとドアがゆっくりと開いた。
部屋の中に男が入るがどこにも人は見当たらなかった。
しかし、男は部屋を隈無く見渡すと一箇所だけ違和感を覚える場所があった。
部屋の隅の床がわずかだが他の床に比べて埃が少なかったのだ。
「そこの床の下にいるんだろ、出てきてくれないか。俺はこのシェルターからの救難信号を察知して駆けつけたんだがここに来てから誰にもあえてないんだ。一体何があったか教えてくれないか」
しかし男の声に反応は帰ってこなかった。
ここまでは男も予想していた。いきなり味方といっても信じてもらえるわけがない。
そこで男は床に座るとじっと動かなくなった。
どれくらい時間が経っただろう。

ゴトッ

男は音がした方へ視線を向けると、そこには隙間からこちらを覗いていた子供の目と合った。
男はニッと笑みを浮かべた。それを見た子供は慌てて床の中に隠れたが直ぐにまた隙間から顔をだした。
「おじちゃん誰?」
子供はおずおずと訪ねてきた。
「おじっ!!まぁいい俺の名はとーる、さっきも言ったがここのシェルターから救難信号が出ている事に気づいてきたんだ」
とーるは、うーんと唸った。
「おじちゃん、お願いがあるんだ。妹を助けてください」
「妹?!!」
子供の言葉にとーるは首をかしげた。今目の前にいるのは一人だけだ。そうなるとその妹は今どこにいる?
少ししてとーるはあることに気がついた。
「そこにもう一人いるのか!!!」
とーるの言葉に子供は頷いた。
とーるは立ち上がると急いで床のもとに近づいた。
「なっ!!」
そこには弱々しい呼吸で倒れている子供がいた。
誰が見ても明らかなくらい衰弱していた。
「いつからここにいた!」
とーるの切羽詰まった声に子供はびくっとした。
「多分3日くらい前」
「ちっ」
とーるは舌打ちをしながら急いで床に飛び込むと倒れている子供を片手で抱き抱えた。
残りの片手でいまだに震えている子供を担ぎ上げる。
「お前の妹はかなりやばい状態だ。頼むから俺と一緒に来てくれ」
子供はこくこくと頷いた。
「名前を聞いてなかったな。教えてくれるか」
「リコ、妹はレン」
「OKリコ、レンは絶対に助けてやるから大人しくしてろよ」
とーるは一呼吸すると勢いよく飛び出した。
リコは目を疑った。とーるが一歩踏み込むとすでにフロアの角が目の前に見えていた。
次の一歩で更に角を曲がった。しかも全くと言っていいほど反動がなかった。
あっという間にシェルターの入口へ向かう1つ目の階段の前にたどり着いた。
ここは地下7階。とーるが本気を出せば1フロア30秒で走破できる。
あっという間に地下3階を突破し地下2階へと差し掛かる。
しかし地下2階に上がったところで足を止めてしまう。シャッターが下りていた。
「誤作動か!面倒だな」
とーるは即座に次の行動について思案した。このままシャッターをぶち破ることは難しくない。とーるにはそれだけの力がある。だがその反動で弱っているレンに負担をかけてしまうことが考えられた。
(どうする)
とーるは決断を迫られる。だが最善の行動がどれか決めかねていた。
「とーるさん、そこにいますか」
シャッターの向こう側から声が聞こえた。
「エリス!!!!いるぞ。いま子供二人抱えていてこちらからはちょっと厳しい。そっちからどうにかできないか」
「分かりました。とーるさんはそこから離れてください」
とーるは直様シャッターから距離をとる。
「やぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
僅かに遅れ気合のこもった声と共にシャッターが横に真っ二つに割れた。
そこからリオとフリューベルが飛び出してきた。
「上へのルートは全て抑えた。とーるとエリスは先にいって。私とベル兄さんで残りの階層の捜索をするわ。エリス任すわよ」
リオそのまま階段を無視して勢いよく飛び降りる。
「シェルター周辺でナナリとやよいがいる。合流してそのまま脱出してくれ。俺とリオのことは気にするな」
フリューベルもそのまま、階段を飛び降りていった。こうなると二人を止める事はできない。
とーるは一瞥だけするとエリスの後を追った。
その後、とーるは無事エリスと共にシェルターから脱出する。
入口には運転席でナナリが待っていた。
「早く乗って。出すよ」
やよいが後部座席から車の天井を明けスナイパーライフルを構えていた。
とーるはエリスを先に乗せリコとレンをナナリに詰め寄った。
「運転は俺がやる、ナナリさん頼むあの子を助けてくれ」
ナナリも状況を瞬時に把握し即座に後部座席へ移動する。
すでにエンジンが入っていることを確認しアクセルを踏み込む。
車体が少し浮いたように感じたがそれでも衝撃も少なくスムーズに発進した。
ナナリはレンの容体を確認しつつ応急処置を始めた。

その後1時間の陸路と1時間の空路を使い軍の医療施設へ飛び込んだ。
幸いナナリの適切な処置によりレンは一命を取り留める事になるのであった。

後に二人の幼子はとーるとエリスの養子として迎えられる事になる。
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