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REQUIEM館

第4話:回帰

「リオ、どうだ?」
フリューベルは周りを見渡しながら尋ねた。
「何もないわ・・・どちらかというと、何もないことが異常だわ」
フリューベルとリオはシェルターの最下層までたどり着いた。
しかし、これまでに人に出会う事はなかった。
フリューベルはあたりの壁等に不審な点がないか確認するが壁は傷一つついていない。
フロア全体を確認したが下へ降りるルートもなくこれ以上もなくこれ以上の調査には限界があった。
「兄さん一旦引き上げますか」
「・・・・」
リオの問いにフリューベルは答えない。
「兄さん?」
返事がない事に疑問を抱きリオが振り返る。
「!!」
リオは言葉を失った。フリューベルの前に一組の男女がいた。
それだけなら驚きはしても言葉を失うことはなかった。
「にい・・さ・・・・んと、わ・た・・・し?」
二人の前に現れたのは二人と瓜二つの男女だった。
「ちぃっ」
フリューベルは舌打ちをしながら瞬時に銃を抜き発砲する。
しかし、弾丸は彼に届く前に弾き飛ばされた。
(・・・こいつは)
フリューベルの中にある推測がよぎる。今、自分たちに足りない物を目の前の男は持っている。
「リオ!殺るぞ」
フリューベルの言葉にリオは瞬時に状況を把握し行動に移った。
幸い部屋は広く2人は部屋の入り口に近い場所にいる。
リオは通路に出るだろう。彼女の場合狭い空間の方が得意である。
フリューベルは銃を投げ捨てると間合いを詰めるために縮地で踏み込む。
ほぼ同時にリオも縮地でもう一人のリオに迫りそのまま通路に向かって蹴り飛ばしてながら部屋から飛び出した。
フリューベルの連撃を男は受け止める。
男は僅かな隙を見つけフリューベルの懐に体をねじ込み下から拳を振り上げる。
この動きにフリューベルは無意識に反応する。回避行動は間に合わない。
そこでフリューベルは拳に向かってあえて体毎踏み込んだ。
体当たりとアッパーが激突する。
フリューベルは少しだけ眉をひそめる。大して男は体当たりの衝撃で大きく後退する。
お互いにバランスを崩すが、これはお互いに好機でもあった。
先に動いたのは男の方だった。男の周囲に風が吹き荒れた。
(くるっ!)
フリューベルの直感は正しく大きく右にステップを踏んだ。
遅れてフリューベルがいた床が鋭利な刃物で斬りつけられた。
(やはりか)
フリューベルは目の前の男が自身と瓜二つである事に納得がいった。
「おかしいと思った。何故この世界にきて、力が失われたのか」
フリューベルは正面から向ってきた何かを右手で抑え込んでいた。
「その力と俺は何時も一緒だった。急に消える事は本来ありえない。だがこの世界に来た影響で失ったと皆考えていた」
右手の中で暴れる風を握りつぶす。
「力を失ったのではなく・・・分離してたんだな。・・・悪いが返してもらうぞ」
踏み込む、常人であればフリューベルが動いた事すら認識できなかったであろう。
しかし、男はフリューベルの動きに反応し拳をがぶつかり合う。
「っ」
フリューベルは何かに気づき即在に後ろに飛び下がる。
遅れてフリューベルの居た場所の床に亀裂が走る。
(風刃・・・ならば)
フリューベルは集中する。
目に映らなくても分かることがある。
(!!・・・今)
フリューベルはタイミングを計り一気に男へ詰め寄る。フリューベルの頬が僅かに切れる。
風の刃はフリューベルを襲うも紙一重で避けきる。
続けざまに2発目の風刃もフリューベルは身体を捻りギリギリで避けきる。
目視できないのに何故対応ができるのか、それは音であった。
風刃は放たれると直線上にしか飛ばない特性をもち風刃が発生する際僅かにだが空間に軋む音が発生する。
フリューベルはそれを察知し回避しているのだ。
6人の中ではナナリが得意とする技術でもあり彼のレベルになると常人では聞き取れない音ですら認識することができるがフリューベルやとーるも周囲の音を聞き取る技術には優れているのだ。
(いけるか!!!)
フリューベルが最後の跳躍で男の背後を初めて取ることに成功する。
全力で踏込み男の背後に回りこみつつ拳を打ち込む。
その威力は常人が受けたなら内蔵が破裂する破壊力はある。とーるの扱う技の中でも基本:琥砲の技に近いだろう。
拳を打ち込んだ一点にのみ気を集中し解き放つ。
男は背中を反りながら吹き飛ばされ地面に叩きつけられた。
手応えはあった。だがこれで簡単に終わるとは思われない。
予想通り男はゆっくりと立ち上がってきた。そして、右腕を振り払うとその手には一本の槍が現れた。
その槍を確認したフリューベルの警戒心が増す。
(やはり・・・そこにあったのか)
フリューベルにはその槍に見覚えがあった。
忘れるはずもない、彼が戦場にたってから長年共にしてきた相棒であるのだから。
「返せ、それは俺のだ」
フリューベルは地を蹴り男に向かって正面から突っ込んだ。
その突進は先より更に鋭く早い。
しかし、男は今までとは違いフリューベルの動きに余裕をもって合わせてきた。
フリューベルが銃をすて近接戦を仕掛けるのには理由がある。
それは力を行使できないフリューベルにとって遠距離は風刃を避けるしかできないからだ。
更に槍が顕現したことで周囲を荒れ狂う風が強くなっていた。
中途半端な距離では槍の間合いに入ってしまう。
残された選択肢は槍を振りづらい接近戦が残される。
フリューベルであれば接近戦になろうと足技と歩法で対応できるが、とーるのような必殺はない。
ゆえにこの接近戦は消去法で残された選択肢でしかなかった。
男もその事にはわかっているのであろう。フリューベルが踏み込むであろう距離から僅かに離れる。
無理やり踏み込んだフリューベルの拳を避けながら背後に回り込んだ。
(縮地!)
フリューベルもすぐさま反転して追撃を行おうとするが今の距離は男にとって絶好のフリューベルにとって最悪の距離.。
男は槍を大きく引くと勢いよくなげつけた。
「!!」
ほんの一瞬であった。圧縮された風を推進力に変え爆発的な加速を持った槍がフリューベルの胴体に突き刺さる。
フリューベルは槍に突き刺されながら壁に叩きつけられる。
「ごふぉっ」
口からは大量の血を吐出される。どうみても致命傷であった。
男がフリューベルに近づき槍を手に取り引き抜こうとする。
だが、男が力をいれても槍は引き抜けなかった。
先端に目を向けるとフリューベルは震えながらも槍を握っていた。
「これは俺のものだ。返して貰うぞ」
血を吐出しながらも笑ってみせると槍が呼応しかたのように風が包み込む。
その風は先程まで荒ぶっていた風とは違い全てを包み込むような穏やかな風であった。
そしてフリューベルはその風の中で多くの事を知る。
どうして自分達が力を失ったのか。どうして、自分達にそっくりな二人が現れたか。
そしてこの事態を作り出した人物の存在を。
(そういう事か)
風が止みフリューベルはこれまで負った傷が消えている事を確認する。
「やはりお前も俺だったんだな。俺にこれを届けるために無理してくれたんだな」
男はゆっくりとフリューベルの前に立つと頷いた。
「もう少しやりようはあっただろう。っていっても俺だもんな仕方ないか」
苦笑いしながらフリューベルは手を差し出した。
「ありがとうな、二度と失ったりしないからな」
男は手を握ると、少しだけ安心したような表情を浮かべた。同時に男の体から光の粒子が浮かび上がる。
(後は任せた)
もう一人のフリューベルが光となってフリューベルの中に吸い込まれる。
同時にその想いを受け取った。
「ああ、任された」
フリューベルは小さく呟き踵を返すとリオがいるであろう廊下へ走り出した。
フリューベル達の前に現れたもう一人の自分達。
これが意味することが何なのか。フリューベルは理解していた。
かつてと同じかそれ以上の戦いに身を投じる事になる。
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